2020年11月13日

●「トランプ再選の可能性はまだある」(第5370号)

 今朝は日本の増税論議はひとまず置いて、バイデン氏に決まっ
たかに見える米国次期大統領について書くことにします。トラン
プかバイデンかによって、日本への影響力が大きく異なるからで
す。しかし、11月12日現在、米大統領選はまだ完全に決着が
ついていません。トランプ大統領が依然として、負けを受け入れ
ないからです。今後どうなるのでしょうか。トランプ氏本人は何
を考えているのでしょうか。
 バイデン氏は、前回トランプ氏に敗北したペンシルベニア、ミ
シガン、ウィスコンシンの3州を奪還し、得票数でも450万票
の差をつけているのに、トランプ大統領は、まだ敗北を認めよう
としないのです。
 しかし、今回の選挙は、事前のメディアの世論調査では、「バ
イデン圧勝」だったはずです。しかし、トランプ大統領が予想外
の追い上げを見せ、互いに7000万票を超える票を得る大接戦
になったのです。
 問題は、12月8日まで現在の異常事態が解消されるかどうか
です。もう少し正確にいうと、12月8日までに全米各州で勝敗
の決着がつき、選挙人が確定されるかどうかです。これについて
『週刊新潮』11月19日号では、次のように書いています。
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 だが、選挙人を確定するための州ごとの選挙は混迷を極め、大
接戦を繰り広げているジョージア州では、3日の投票日から1週
間が過ぎた現在(11月10日時点)も勝敗が決していない。
 現地特派員によれば、「ジョージア州ではバイデン優位ながら
トランプとの得票差はわずかに0・2%。双方が約245万票を
獲得したものの、その差は1600票ほどしかないと報じられま
した。州法では得票差が0・5%以下の場合、再集計の申し立て
を認めており、州務長官も再集計する方針を示唆しています。他
の激戦州を見渡しても『バイデン勝利』とされたペンシルベニア
やアリゾナは得票差が1%以下で、再集計になる可能性を否定で
きません」        ──『週刊新潮』/11月19日号
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 12月8日までに全米手各州の勝敗が確定すると、選挙人の数
が決まり、14日に選挙人による投票が行なわれます。この投票
を「選挙人投票」といいます。既に勝敗は決まっていますが、あ
くまで形式的な手続きとして、選挙人による投票が行なわれ、来
年1月6日に開票されます。そこで選出された候補者が第46代
アメリカ合衆国大統領として、1月20日の就任式に臨むことに
なるのです。
 選挙人の総数は538票です。「選挙人選挙」では、その州で
最多票を集めた候補者を支持することを誓約しています。選挙人
団の中で、1選挙人が有するのは1票。選挙人団は建国の父らの
妥協が生み出したものです。彼らは大統領を議会が決めるべきか
一般投票を通じて国民が直接決めるべきかで激論を闘わせた経緯
もあります。つまり、選挙人選挙はあくまで儀式です。
 しかし、これら各州の再集計に加えて、トランプ陣営は郵便投
票の有効性や不正投票があったとして、訴訟を連発しています。
多くの場合、訴訟は門前払いを食っていますが、トランプ陣営に
とっては、これは明らかに時間稼ぎです。何としても12月8日
までに、各州の勝敗が決しないようにしたいのです。
 それでは、12月8日までに勝敗が決しないときはどうなるの
でしょうか。その答えは、2000年のジョージ・W・ブッシュ
氏とアル・ゴア氏のケースが参考になります。これについて『週
刊新潮』は次のように紹介しています。
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 ゴア側は接戦となった最後のフロリダ州で手作業による再集計
を求め、州の最高裁もこれを認めました。ただ、プッシュ陣営は
差し止めを求めて連邦最高裁に上告。判事9人のうち、共和党寄
りの保守派5人が再集計は適切でない≠ニ判断しました。まも
なく、ゴアが「国民の結束と民主主義のために敗北を認める」と
表明したことで、ノーサイドとなり、ブッシュ政権が誕生したの
です。          ──『週刊新潮』/11月19日号
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 トランプ陣営はこれを狙っています。複数の州で再集計が必要
になると、12月8日までに決着がつかない事態が生じます。そ
うなったとき、トランプ陣営は、勝敗の行方を連邦最高裁の手に
委ねようとしているのです。最高裁は、保守派6人、リベラル派
3人だからです。トランプ大統領は、こういう事態を想定して、
リベラル派判事の死去を受けて、保守派のエイミー・バレット氏
を最高裁判事に指名したのです。
 それでは、1月6日の時点で、決着がつかない場合、合衆国憲
法は、下院が大統領を選出することを定めています。これについ
て、『週刊新潮』は次のように書いています。
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 1月6日の時点で、いずれの候補も過半数の選挙人を獲得でき
なかった場合、合衆国憲法では、下院が大統領を選出すると定め
ています。しかも、この選出方法では50州に1票ずつ割り当て
る。つまり、下院議員は選出された州ごとに投票する候補を1人
選ぶわけです。下院全体の議員数は民主党の方が多いものの、現
地の報道を見る限り、州単位では共和党優勢が26州にのぼりま
す。可能性は低いと思いますが、下院で選出することになれば、
トランプ大統領が有利になります。
             ──『週刊新潮』/11月19日号
─────────────────────────────
 可能性は低いとは思いますが、このように、トランプ大統領が
再選される可能性は、わずかながら残っています。しかし、日本
を含む世界は、バイデン氏が次期大統領と決めて動いています。
もし、これによって、トランプ大統領の再選が決まると、米国で
はさらなる分断と一層の混乱が起きることは確かです。
         ──[『コロナ』後の世界の変貌/114]

≪画像および関連情報≫
 ●保守系メディアがトランプ氏を説得か
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   米大統領選挙は、窮地に追い込まれたトランプ大統領が徹
  底抗戦の構えを見せる中、トランプ氏に近い保守系メディア
  が、それぞれの媒体を使って、トランプ氏に対し潔く敗北を
  認めるよう説得工作に乗り出したとの見方が広がり始めてい
  る。前代未聞の大統領選は、新たな展開に突入した。
   説得工作に乗り出したと見られる保守系メディアは、ケー
  ブルテレビ・ネットワークのFOXテレビ、大衆紙のニュー
  ヨーク・ポスト、そして経済紙ウォール・ストリート・ジャ
  ーナルの3媒体。いずれも、メディア王と呼ばれるルパート
  ・マードック氏の会社が所有している。
   米国の情勢に詳しい英紙ガーディアンは7日付の紙面(電
  子版)で、3媒体は、大統領選に関する報道内容のトーンが
  突然、明らかに変わったと指摘。その上で、トーンは事前に
  「綿密に調整したように見え」、かつ、いずれも、「自身の
  “レガシー”を守るために潔く敗北を認めるよう、トランプ
  氏に訴えるメッセージを含んでいる」と報じている。
   具体例として、FOXテレビニュースのキャスター、ロー
  ラ・イングラハム氏の直近の発言を、記事にツイッターの動
  画を貼り付けて紹介。その動画を見ると、イングラハム氏は
  次のように述べている。「この選挙で自分に不利な結果を受
  け入れる時がもし来たら、そして現実に来た時、もちろん私
  たちはそうならないことを願っているが、もしそうなったら
  トランプ大統領は、タウンホール・ミーティングで(司会者
  のNBCキャスター)サバンナ・ガスリー氏に対して見せた
  ように、優雅にそして冷静沈着に振る舞うべきだ」
                  https://bit.ly/36sHsRh
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エイミー・バレット最高裁判事
エイミー・バレット最高裁判事
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 『コロナ』後の世界の変貌 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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