2020年11月10日

●「経済成長は安全保障そのものなり」(第5367号)

 昨日のEJでも述べたように、日本がデフレに突入したのは、
諸説はあるものの、1997年4月からといわれています。橋本
政権が、消費税率を3%から5%に上げたときからです。タイミ
ングがきわめて悪かったのです。それから23年、日本はずっと
デフレのままです。23年間というと、生まれたばかりの赤ん坊
が成人するまでの期間です。その間に生まれた日本人は、経済成
長の果実を一回も味わっていないことになります。これは、政治
家の重大な責任です。日本の政治家は、どうしてかくもだらしが
ないのでしようか。
 これについて、産経新聞特別記者の田村秀男氏は、次のように
述べています。
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 良くも悪くも、日本の政治は官僚機構によって支えられていま
す。官僚は学力に秀でたエリートたちですから、政治が彼らをう
まくコントロールできれば、さまざまな分野で良い結果を出せる
はずです。それが有権者に選ばれた政治家の役目なのですが、実
体は有権者に選ばれていない官僚に主導権を握られ、反対に政治
家のほうがコントロールされてしまっています。とくに財政に関
しては、財務省がまだ大蔵省だった時代から政治家たちは官僚に
翻弄されっばなしです。   ──田村秀男著/ワニブックス刊
 『景気回復こそが国の守り脱中国、消費税減税で/日本再興』
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 デフレから脱却できないと、何が起きるのでしょうか。景気が
悪くなり、経済が成長しなくなります。それが20年以上続いて
いるのです。普通デフレというと、物価が持続的に下がることと
説明しますが、この説明は不十分です。なぜなら、物価が下がる
のは良いことと考える人がいるからです。デフレが続くと、物価
は下がりますが、それが長期化すると、企業の利益が減るので、
従業員の所得が下がってしまうのです。
 20年以上もデフレが続く──こんなことは、米国の大恐慌ぐ
らいしかない現象です。しかし、大恐慌は、1930年から19
41年にかけてのことですから、約10年しか続いていないので
す。したがって、20年以上もデフレというのは、世界唯一のこ
とであり、ギネスブック入りの珍事といえます。
 経済成長ができない状態があまり長く続くと、政府はそのこと
に慣れてしまい、政権の最重要事項として真剣に取り組まなくな
ります。ミック・マルバニー氏という人がいます。2018年か
ら2020年3月までトランプ大統領の補佐官を務めた人物です
が、米国の経済成長について、次のように述べています。
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 トランプ政権にとって経済成長は安全保障そのものであり、実
質ベースで経済成長3%を達成しなければならない。だから、経
済成長重視の政策をとっている。  ──ミック・マルバニー氏
        ──田村秀男著/ワニブックス刊の前掲書より
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 「経済成長は安全保障そのもの」──こういう発想は日本には
ないものです。実質成長率で3%とは、非常に高い成長率です。
その達成状況はどうでしょうか。これについては、添付ファイル
の上の折れ線グラフをご覧ください。田村秀男著の著書に出てい
たものです。
 塗り潰してある部分は、先進国の平均をあらわしています。こ
れを上回っているのは米国のみで、リーマンショックでマイナス
に落ち込んで以降、一貫して平均値を上回っています。しかし、
3%に達したのは2015年と2018年2回であり、その達成
がいかに困難であるかがわかると思います。トランプ大統領就任
以降、米国の経済が大きく伸びています。トランプ政権は過激で
ザツな政権運営をしているように見えますが、経済はきちんと伸
ばしているのです。
 日本はどうでしょうか。日本は、安倍政権の2012年〜13
年の2年は平均値を上回る伸びを示したものの、消費税を一挙に
3%アップして、税率を8%にしたため、それ以降は、平均値の
底に沈んで浮上していません。これを見ると、消費増税がいかに
経済の成長を弱めるかがよくわかると思います。
 経済を見る指標として、「国民1人当たりGDP」というもの
があります。添付ファイルの下の棒グラフをご覧ください。19
95年と2019年を比較しています。1995年当時は、この
指標では、日本は世界のトップランクにありました。2019年
になると、米国とシンガポールが突出して大きく伸びていますが
日本は、1995年より下回っています。順位でいうと、日本は
世界26位まで転落しているのです。2019年に日本は、4万
0293ドル、アジアの中でも、6万5233ドルのシンガポー
ル、4万8718ドルの香港に完全に抜かれてしまっているので
す。日本では、こういうことを報道しませんが、これは、日本が
それだけ貧しくなっていることを意味しているのです。
 日本がデフレ不況から脱出できないことによって国内の消費が
落ち込み、国内で使われない金融機関のお金が、どんどん海外に
投資され、運用されています。1990年代後半からは、グロー
バル化が一挙に進んだため、お金は儲かりそうな投資先にどんど
ん流れていきます。日本のお金もどんどん海外に流れ、そして日
本には戻ってこないのです。田村秀男氏は、このことについて、
次のように述べています。
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 中国は金融のグローバル化の恩恵を最大限に受けた“勝者”で
あり、日本は中国の経済成長にカネを貢いだ“敗者”だったわけ
です。本来なら日本の経済成長の源泉となるべき国民の預貯金が
よりにもよって中国の経済成長に使われ、結果的に日本国民の安
全を脅かすようになったというのは、皮肉としか言いようがあり
ません。    ──田村秀男著/ワニブックス刊の前掲書より
─────────────────────────────
         ──[『コロナ』後の世界の変貌/111]

≪画像および関連情報≫
 ●なぜ、日本だけが経済成長できないか/森永卓郎氏
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   多くの方は日本経済が低迷しているとは思っていますが、
  大転落しているとはあまり実感していないと思います。とこ
  ろが、実はとてつもない大転落をしているのです。世界のな
  かで、日本経済が占めるGDPのシェア、1995年に18
  %あったものが、直近の2016年では6%まで下がってい
  ます。3分の1に落ちた。これは裏返すと世界並の普通の国
  と同じような経済成長をしていたら、今頃我々の所得は3倍
  になっていたということです。
   なぜそんなことが起こったのか、歴史を振り返って行くと
  最初のきっかけは1985年ニューヨークのプラザホテルと
  いうところに先進国の大蔵大臣、いまの財務大臣と中央銀行
  総裁が集まって「プラザ合意」というものをやりました。
   このプラザ合意を決める前の為替レートは1ドル240円
                  https://bit.ly/2U6AGek
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経済成長しないと何が起きるか
経済成長しないと何が起きるか
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 『コロナ』後の世界の変貌 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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