2020年10月21日

●「スービック米軍事基地の復活が鍵」(EJ第5354号)

 米国とフィリピンの関係がギクシャクしています。2014年
4月、当時のオバマ大統領とフィリピンのベニグノ・アキノ3世
大統領(当時)の間で、フィリピンに米国施設を建設することで
合意しています。さらに両国は、防衛協力強化協定(EDCA)
を締結し、スービック基地の復活を狙ったのです。
 しかし、ドゥテルテ政権になると、大統領はその合意に反対を
示し、ペンディングになってしまったのです。ドゥテルテ大統領
は、きわめて親日ですが、かなり反米です。米国とはどういうわ
けか、相性が合わないようです。
 ドゥテルテ政権は、中国から34億ドル(約3800億円)と
いう巨額の援助を受けています。その代りというか、EUからの
2億5000万ユーロ(約300億円)の無償援助を断っていま
すが、これは中国の顔を立てたかたちです。しかし、中国には心
を許していないしたたかさがこの大統領にはあります。
 そのフィリピンにとって最大の援助国は日本です。そして、日
本はフィリピンにとって最大の輸出相手国であり、中国に次ぐ2
番目の輸入相手国でもあります。防衛面でもその協力関係は強化
されており、ODAの一環として、海上自衛隊の練習機の貸与や
新造大型巡視船などがフィリピンに供与されています。
 2020年8月29日、ドゥテルテ大統領は、安倍首相の辞任
を受け、次の声明を出しています。マニラ発のレポートです。
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【マニラ=遠藤淳】フィリピンのドゥテルテ大統領は29日、安
倍晋三首相の辞任表明を受けて声明を出し、「彼の任期中にフィ
リピンと日本の2国間関係は戦略的なパートナーシップへと大き
く発展した」と述べた。日本の支援によるインフラ整備が進むな
ど、2国間関係が緊密になったことを評価した。
 ドゥテルテ氏は「ともに取り組み、なし遂げたことは、2国間
のより緊密な友好、協力関係の礎となった」と指摘。2017年
1月に安倍首相と昭恵夫人を南部ミンダナオ島ダバオ市の自宅に
招いたことに触れ、「彼は私とフィリピン人にとって、兄弟より
近い真の友人だ」と話した。安倍首相は17年、フィリピンに対
し、1兆円規模の経済支援を行う意向を表明。日本の支援の下、
フィリピンで初めてとなる地下鉄の整備が首都マニラで始まった
ほか、マニラと周辺都市を結ぶ南北通勤鉄道の建設が動き出すな
どしており、2国間の経済協力が進んでいる。
                  https://bit.ly/3o5up0i
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 2019年5月27日に、トランプ米大統領が国賓来日したと
き、これに連動するかたちで、米国議会の上院軍事委員会の一行
も来日していたのです。そして、5月末に来日したドゥテルテ大
統領と軍事的話し合いを持っています。その交渉の内容は長く途
絶えていた南シナ海での大規模合同演習の再開についての話だっ
たといわれます。
 しかし、その返事は、2020年2月11日、ドゥテルテ大統
領は、米国との合同演習を可能にする訪問軍地位協定(VFA)
を破棄すると通告してきたのです。ドゥテルテ大統領は、米国に
は、まだ頑ななのです。フィリピンの大統領は「1期6年で再選
なし」です。しかし、2022年6月の大統領退任まで待つわけ
にはいかない事情もあります。
 とくに重要なのは、かつてのスービック海軍基地を復活させる
ことです。現在でもスービック湾には、日本や米国の艦船の寄港
地にもなっており、2018年9月には、海上自衛隊護衛艦「か
が」が初の海外寄港として、スービック湾に入港し、ドゥテルテ
大統領は、「かが」に乗艦・視察しています。そのとき、大統領
は「日本との防衛協力を一層強化していきたい」と発言している
のです。これは、米国も中国も嫌だが、日本となら連携したいと
いっているのです。
 実際に2020年1月9日、茂木敏充外相がフィリピンを訪問
し、ロクシン外相と会談しています。マニラ発の日本経済新聞の
記事を示します。
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【マニラ=加藤晶也】茂木敏充外相は9日、訪問先のフィリピン
でロクシン外相と会談した。同国が中国と領有権を争う南シナ海
問題を巡り、法の支配の重要性を確認した。フィリピンによる日
本の防衛装備品購入でも意見交換し、両国の安全保障協力の推進
を申し合わせた。
 茂木氏は会談後の共同記者発表で「海上法執行や安全保障など
で幅広い分野で協力を深める」と述べた。ロクシン氏は「地域の
平和、安定、法の支配の維持のためにあらゆる場を通じて様々な
協力をする」と強調した。
 会談では北朝鮮の完全な非核化や北朝鮮による日本人拉致問題
の解決に向けた連携も確かめた。緊迫する中東情勢を巡っても議
論した。茂木氏はドゥテルテ政権が重視するインフラ開発を後押
しする考えを伝えた。両外相はマニラの主要な橋の耐震性を向上
させる事業への約44億円の追加の円借款に関する署名を交わし
た。この後、ドゥテルテ大統領とも会談し、南シナ海での航行の
自由と法の支配が重要だとの認識で一致した。
               https://s.nikkei.com/2Hgoi86
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 2019年2月のことだが、スービック湾にある造船所を運営
してきた韓国の中堅造船会社の現地法人が、現地の裁判所に会社
更生法の適用を申請したのです。フィリピンと韓国それぞれの金
融機関からの同社の負債総額は約13億ドル(約1430億円)
──フィリピン史上最大の経営破綻です。これに真っ先に動いた
のが中国企業。もし、ここを中国企業に取られると、大変なこと
になります。この件は何とかしのいだようですが、フィリピンに
は、今後日本がいろいろな面で、深く関わっていくことになるこ
とは確かなことです。
         ──[『コロナ』後の世界の変貌/098]

≪画像および関連情報≫
 ●ドゥテルテ大統領、コロナ禍で就任以来5回目のSONA
  (施策方針演説)(フィリピン)
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   2016年にロドリゴ・ドゥテルテ氏が大統領に就任して
  から4年が経過した。憲法規定上、フィリピンの大統領任期
  は1期6年で再選は認められていないため、2022年5月
  の任期満了まで残り2年を切っている。ドゥテルテ政権は大
  規模なインフラ整備を推進する「ビルド・ビルド・ビルド」
  プログラムをはじめとする「主要社会経済政策10項目」を
  掲げ、歴代の政権には見られなかったスピード感と強固な姿
  勢で様々な政策を実行している。また、日本から見ると少し
  強権的・独善的に映るかもしれないが、麻薬・犯罪・汚職の
  撲滅といった目に見える形での改革も相まって、フィリピン
  国民からの高支持率を維持してきた。歴代政権は任期後半に
  入ると支持率が下がり、レイムダック(死に体)と揶揄され
  てきたが、ドゥテルテ政権はこの状態を維持したまま任期満
  了を迎えるであろうとの見方が強い。経済については閣僚に
  一任するスタンスをとり、自身は専ら治安改善・貧困対策に
  注力している印象のドゥテルテ大統領だが、任期後半の総仕
  上げに向けたこの重要なタイミングで思わぬ難敵が現れた。
  新型コロナウイルスである。フィリピンにおいては依然とし
  て感染拡大の勢いは止まることを知らず、特に足元では急速
  に状況が悪化しており、8月10日には1日当たりの感染者
  増加数は6958人と過去最多を記録し、累計感染者数は同
  日現在で136638人に上っている。
                  https://bit.ly/35aFPHm
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フィリピン・ドゥテルテ大統領.jpg
 
フィリピン・ドゥテルテ大統領
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 『コロナ』後の世界の変貌 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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