2020年09月09日

●「米軍による限定軍事衝突はあるか」(EJ第5326号)

 米国の中国への圧力がエスカレートしつつあります。2018
年と2019年のペンス副大統領の対中国演説と、2020年の
4人のトランプ政権高官による連続演説は、まさにそれを表して
いるといえます。さらにこれは、11月に実施される大統領選と
も関係があるのです。
 「トランプ大統領の大統領選挙向けのパフォーマンス」という
意見もありますが、そのような低レベルのものではないのです。
トランプ政権としては、大統領選敗北も視野に入れて、「現政権
のうちに、対中国封じ込めを政権交代でも後戻りできない段階ま
で進めるべき」という考え方に立って動いているようです。
 7月26日付、米紙ウォールストリート・ジャーナルは、社説
において、このポンペオ演説を評価し、その解釈について、次の
ように中国に警告しています。
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 社説は「懸念されるのは中国が米政権の新たな対中姿勢を「大
統領選対策だ」と切り捨ててしまうことだ」とし、それは中国に
とって「過ちとなる」と警告する。中国の問題行動に対処すべき
だという認識は、米国内の超党派で共有されているからだ。米有
識者の間では、11月の大統領選で民主党のバイデン前副大統領
が勝利したとしても、現政権の対中強硬姿勢をおおむね継承する
との見方も少なくない。       https://bit.ly/3jP5MBZ
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 中国という国は、自前の国際法の勝手な解釈に基づいて、他国
が実効支配している領土を軍事力にものをいわせてで平然と強奪
しようとします。日本の尖閣諸島もその危険に晒されています。
 米国のオバマ政権は、中国が領有権を主張する南シナ海の複数
の岩礁の軍事基地化が進むのを座視し、何の手も打たず、それを
許した重大な責任があります。いくら口では批判しても、行動が
伴わなければ何もならないからです。中国は、力によって現状を
変えることを躊躇わないのです。
 ところで、現在南イシナ海の岩礁がどうなっているのかについ
て、われわれはどのくらい理解しているでしょうか。これについ
て、正確な知識を持つ必要があります。そうすることによって、
尖閣諸島をどう守るべきかわかります。
 南シナ海には、無数の岩礁がありますが、その岩礁を中国が埋
め立てて、人工島にしたのは、次の7つの礁です。
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      ◎ 1.ファアリークロス礁/3125メートル
        2.ジョンソンサウス礁
        3.   クアテロン礁
        4.    ヒューズ礁
        5.     ガベン礁
      ◎ 6.     スービ礁/3000メートル
      ◎ 7.   ミスチーフ礁/3125メートル
             ──◎印=3000級の滑走路装備
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 これら7つの人工島のうち、島の大きさは、ズービ礁、ミスチ
ーフ礁、ファイアリークロス礁の順で、ビッグ3といわれていま
す。これら3つの人工島には、ミサイル発射台、3000メート
ル級滑走路、広大な格納庫、人工衛星や外国の軍事活動・通信を
追跡できる設備などを備えています。
 最大の問題は、「国際的に違法だ」と口では激しく中国を批判
するものの、中国にそれらの岩礁を埋め立てし、ここにいたるま
で軍事化させた米民主党の責任です。これに関して、ポンペオ米
国務長官は、中国に対して次のように述べています。
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 中国の南シナ海における権益主張は完全に違法なものであり、
世界は南シナ海を中国の“海洋帝国”とは決して認めない。
                  ──ポンペオ米国務長官
─────────────────────────────
 ここで重要なことは、これらの人工島には、民間人がいないこ
とです。なぜ、それが重要なのかについて、軍事社会学者の北村
淳氏は、次のように述べています。
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 もともとは暗礁とも言える無人の環礁を埋め立てて造り出され
た7つの人工島には、当然のことながら住民は存在せず、軍事施
設をはじめとする人工島基地群建設関係者や施設運用者だけが滞
在している。したがって軍事拠点として本格稼働すると、7つの
人工島には原則、軍関係者だけが滞在していることになる。
 そうした状況は、中国人民解放軍にとっては都合が悪く、中国
の人工島に異を唱える米軍には都合が良い。というのは、軍関係
者だけがいる純然たる軍事施設としての人工島ならば、長射程ミ
サイルや精密誘導爆弾、それに強力な地中貫通爆弾などを撃ち込
むことで完全に破壊してしまうことが可能だからだ。
                  https://bit.ly/2EWc8kk ─────────────────────────────
 この「民間人がいないこと」は、重要な意味をもっています。
実際に米軍は、トマホークを3、4発命中させれば、例えば、ミ
スチーフ礁の軍事機能などは完全に破壊できると考えています。
何しろ砂を積んで固めただけの人工島ですから、待避壕などの地
下組織をつくることができないからです。トマホークミサイルの
攻撃と、B52戦闘による爆弾の集中投下で、人工島は一瞬で破
壊できるのは確かです。
 問題は、中国がどこまで反撃してくるかの米国の見極めです。
中国も、この段階での全面戦争は望まないし、それは米国も同様
です。今の段階なら中国は米国には勝てないからです。中国が7
つの人工島建設に投じた費用と、米国の空母「ロナルド・レーガ
ン」の建造費は、ともに200億ドル(約1兆1億円)といわれ
ます。軍事衝突は起きるかもしれませんが、全面戦争にはならな
いと考えます。  ──[『コロナ』後の世界の変貌/070]

≪画像および関連情報≫
 ●人工島の軍事拠点化ほぼ完成──-南シナ海、米中衝突のシ
  ナリオ/小原凡司氏
  ───────────────────────────
   米国が中国を信用しないのと同様に、中国も米国を信用し
  ていない。同年10月に実施された「航行の自由」作戦は、
  中国にやはり米国は信用できないと思わせるものであった。
  中国は、自らが南沙諸島を軍事拠点化するのは、米国が軍事
  挑発を繰り返し地域の平和を脅かすからだと言う。
   中国は、2016年1月に、ファイアリー・クロス礁に建
  設した滑走路に、借り上げた民間機を用いて離発着試験を行
  い、続く4月には急患輸送を理由に軍用機を着陸させた。中
  国は、南シナ海における人工島に建設した施設を軍事的に利
  用する意図をこの時点で明確にしたのだ。
   中国は、南シナ海の人工島に軍事施設を建設するのは「必
  要な防衛施設の建設」であって「軍事化だと非難するのは間
  違っている」と主張する。中国のこのような理屈は、日米に
  は意味不明である。国際法に従わず、国家間の約束も守らな
  い中国は、単なる無法者に思える。しかし、全ての国家が国
  際法や条約その他の国際的な約束を守ることを前提とするの
  は、ユートピアニズムに陥っている証拠である。現実には、
  自己の生存が国際的な約束に優先される。
   特に、権威主義的な国家における「国家の生存」は「統治
  体制の生存」を意味し、レジーム・チェンジ(統治体制の転
  換)に関わると考える安全保障の問題に敏感に反応する
                  https://bit.ly/2ZcTYl4
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南シナ海の岩礁群.jpg
南シナ海の岩礁群
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 『コロナ』後の世界の変貌 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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