を再現します。島田洋一福井県立大学教授のレポートを参照して
解説しています。
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第3回:2020年7月16日/フォード大統領博物館
ウイリアム・バー司法長官
第4回:2020年7月23日/ニクソン大統領記念図書館
ポンペオ国務長官
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演説の3番手と4番手は、ウイリアム・バー司法長官とポンペ
オ国務長官です。演説場所は、バー司法長官はフォード大統領博
物館、ポンペオ国務長官はニクソン大統領記念図書館ですが、こ
れにもちゃんとした意味があります。
フォード政権とニクソン政権の外交を担った国務大臣は、ヘン
リー・キッシンジャー氏です。彼は、共和党ですが、米中和解、
対ソ連デタント政策の象徴的人物です。デタントというのは、戦
争の危機にある2国間の対立関係を緊張緩和する政策です。つま
り、ソ連の人権抑圧を事実上黙認した上で、交流を拡大する政策
です。これに反対し、厳しく批判したのは、大統領になる前の同
じ共和党のドナルド・レーガン氏です。デタントは、自由の闘士
を見捨てる政策であり、自分の政権では、キッシンジャー氏を絶
対に国務長官はしないことを公約にして大統領選を戦ったといわ
れています。
島田洋一教授によると、ウイリアム・バー司法長官とポンペオ
国務長官の演説場所の選択には、対中強硬路線で共和党が一枚岩
であることを示すために、トランプ政権が進めるレーガン的政策
に対して、ニクソン、フォード派の人々もそれに同意する「仕切
り」という配慮が込められているといいます。
さて、3番手のバー司法長官は、中国がらみの犯罪の起訴件数
を上げ、次のように訴えています。
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連邦における経済スパイ起訴事案のうち、約80%が中国国家
を利するであろう行為に関する。企業秘密の窃取事案のうち、約
60%が中国につながりを有している。中国の支配層らの究極的
野望はアメリカとの貿易(トレードtrade) することではなく、
アメリカを乗っ取る(レイドraid)ことだ。
──島田洋一福井県立大学教授
『月刊Haneda』 /10月秋桜号
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つまり、中国の目的は、トレードではなく、レイドすること、
乗っ取ることだというのです。tradeとraidの韻を踏んだ表現を
使っています。また、バー司法長官は、次のようなことも述べて
います。
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米国は、中国の商品やサービスに過度に依存しており、特に今
回の新型コロナウイルス感染症の流行から、米国がマスクや防護
服、医療設備などの面で、中国に依存しすぎていたことが分かっ
た。中国政府とつながるハッカーが米国の大学や企業を標的とし
ワクチンに関する研究資料を盗んでいる。中国共産党に取り入る
企業は、短期間では利点を得るかもしれないが、中国共産党の最
終目的はこれらの会社に取って代ることだ。
https://bit.ly/31YBAOv ─────────────────────────────
トランプ政権高官による掉尾の演説はポンペオ国務長官です。
これについては、日本語字幕付きの動画があります。詳しくは、
こちらをご覧ください。時間は25分です。
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◎ポンペオ長官:リチャード・ニクソン大統領図書館での演説
収録時間:25分10秒/ https://bit.ly/2Z8kzj0
翻訳:樺島万里子
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ポンペオ国務長官は、習近平氏を中国のトップである習近平国
家主席とは呼ばず、あえて「習近平総書記」と呼称し、中国の国
家主席ではなく、中国共産党のトップととらえています。ポンペ
オ国務長官は、中国共産党の野望をくじくため、インド太平洋地
域の民主国家の新たな同盟が必要であると力説しています。
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習近平総書記は、破綻した全体主義のイデオロギーの真の信奉
者だ。われわれは両国間の根本的な政治的、イデオロギーの違い
をもはや無視することはできない。アメリカの歴代政権が続けて
きた、一定の関係を保ちながら経済発展を支援し、ひいては中国
の民主化を促す「関与政策」は「失敗」だった。
中国は覇権を狙っている。ウィンウィンというが米国の利益は
甚だしく損なわれている。毒気を含んだ中国共産党は中国国内で
はますます独裁的になり、対外的には、ますます自由に敵対的に
なっている。かつて旧ソ連についてレーガン大統領は「信用する
しかし検証する」と言ったが、中国共産党については「信用せず
検証しなければならない」
我々が中国に求めているのは公平性、相互性、透明性、アカウ
ンタビリティである。中国人は共産党とは全く別であり、ダイナ
ミックな自由を愛する人たちである。我々は中国人を助け、エン
パワーしなければならない。
我々が今行動しなければ、中国共産党は我々の自由を侵害し、
ルールに基づいた秩序を覆すだろう。自由世界が中国共産党を変
えなければ、彼らは我々を変えるだろう。中国について同じ考え
の国々が、新しいグループを、新しい民主主義の同盟を形成すべ
き時が来ている。 ──ポンペオ米国務長官
https://bit.ly/3gZgqnW ─────────────────────────────
──[『コロナ』後の世界の変貌/069]
≪画像および関連情報≫
●ポンペオ演説ににじむ「対中政策」後悔の端緒
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米中の“新冷戦”が新たな局面に入った。アメリカのマイ
ク・ポンペオ国務長官は7月23日の演説で、中国との対立
姿勢を強烈に打ち出した。「習近平総書記は、破綻した全体
主義のイデオロギーの真の信奉者だ」と断言。「われわれは
両国間の根本的な政治的、イデオロギーの違いをもはや無視
することはできない」と、中国の共産主義に批判の矛先を向
けた。さらに、アメリカの歴代政権が続けてきた、一定の関
係を保ちながら経済発展を支援し、ひいては中国の民主化を
促す「関与政策」を「失敗」と断じた。
演説の場所が、カリフォルニア州にあるリチャード・ニク
ソン大統領図書館・博物館であったことも、その意義を強調
している。中国への電撃訪問で国交を開き、「関与政策」を
始めたのも、ニクソン大統領だったからだ。
この演説の前に、アメリカ政府はテキサス州ヒューストン
にある中国総領事館を閉鎖させている。これについて、ポン
ペオ国務長官は「スパイ活動と知的財産窃盗の拠点」だった
ことを理由とした。中国はこの報復として、四川省成都のア
メリカ総領事館を閉鎖させた。ポンペオ国務長官はこうも発
言している。「自由世界が共産主義の中国を変えなければ、
中国がわれわれを変えるだろう」この意味するところは大き
い。言い換えれば、このままだと中国の共産主義が世界をの
み込んでしまう、ということであり、もはや中国共産党によ
る国家体制を破壊することすら意味している。
https://bit.ly/2Z6HZoY
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連続演説の掉尾を飾るポンペオ演説