2020年09月03日

●「中国のフェイクニュースの作り方」(EJ第5322号)

 中国の情報拡散のプロパガンダについて知っておく必要があり
ます。その概要は、8月27日のEJ第5317号でも伝えまし
たが、今日はそれをさらに掘り下げます。
 8月30日のことです。チェコのミロシュ・ビストルチル上院
議長ら90人が台湾を公式訪問しました。これは、中国にとって
は大問題です。早速中国の王毅国務委員兼外相は、これについて
「高い代償を払う」ことになると恫喝しています。こういう場合
中国の報道局のこわもての報道官が定例記者会見で、メッセージ
を発信することになっています。ほとんどは、副報道官が出てく
るのですが、どういう序列であるのかご存知でしょうか。
 この定例会見(月曜〜金曜)に出てくる報道官は、次の3人で
あり、あの女性の華春瑩氏が局長で一番エライのです。
─────────────────────────────
        華春瑩局長(2019年〜)
        耿爽副局長(2016年〜)
       趙立堅副局長(2020年〜)
                  https://bit.ly/31QULdk ─────────────────────────────
 「武漢ウイルス感染症を中国に持ち込んだのはアメリカ軍かも
しれない」──この発言をしたのは趙立堅副報道官です。発信し
たメディアはツイッターです。趙副報道官のツイッターのフォロ
ワーは50万人以上いるので、彼のツイートは相当大きな影響力
があるといえます。
 実は「武漢ウイルスを中国に持ち込んだのはアメリカ軍」とい
う主張は、趙副報道官自身の主張ではなく、ローレンス・デルビ
ン・ロマノフというカナダ人のインターネット上のエッセイでの
主張なのです。
 このローレンス・デルビン・ロマノフという人が何者かについ
て藤井厳喜氏は自著で次のように説明しています。
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 このローレンス・デルビン・ロマノフなる人は、いかなる人物
なのであろうか。彼は70代後半のカナダ人で、同氏自身がイン
ターネットに投稿した略歴によれば、2000年代半ばに上海に
移住し、チャイナ製の葉巻を販売すると共に自身のエッセイを自
費出版したという。また、上海の復旦大学の客員教授を2006
年から務めているとも自己紹介している。ロマノフ氏のエッセイ
は、様々な問題でアメリカを批判し、チャイナを擁護する類のも
のである。
 ロマノフ氏は1989年の天安門事件についても、「軍の発砲
は学生の民主化デモに向けられたものではなく、暴漢や無政府主
義者が兵士を攻撃したことに対する自衛行為に過ぎない」と主張
している。同氏はラリー・ロングという別名ももっており、復旦
大学の客員教授を自称しているが、復旦大学関係者はそのことを
否定している。          ──藤井厳喜著/徳間書店
    『米中最終決戦/アメリカは中国を世界から追放する』
─────────────────────────────
 関連情報がすべて消去されているので、正確なことはよくわか
らないのですが、藤井厳喜氏によると、このロマノフ氏のエッセ
イの引用元は、「人民日報」の英語版であることが判明したので
す。これによってわかることがあります。
 まず、中国のことを好意的に発信しているサイトを収集してお
きます。ローレンス・デルビン・ロマノフ氏のサイトもそのひと
つです。おそらく中国はそういうサイトを多く確保しているはず
です。続いて、「人民日報」が引用されることを念頭において、
ある情報を発信します。それが「ウイルスは2019年の世界軍
人運動会のときに米国から中国に持ち込まれた」という情報だっ
たとします。
 しかし、「人民日報」は中国共産党の機関紙です。そういう機
関誌で、米国に都合の悪い情報をいくら流してもだれも信用しな
いはずです。しかし、その情報を第3者の立場(と思っている)
ローレンス・デルビン・ロマノフ氏のサイトが取り上げて流すと
それは「本当かもしれない」と思ってしまうものです。誰もその
情報の発信元までは注目しないからです。
 そして、この情報を中国の趙立堅副報道官がツイッターで拡散
するのです。フォロワーは50万人以上おり、この情報に興味の
ある人がさらにリツィートするので、このツィートは世界中に拡
散されることになります。これが彼らのデマ情報の拡散の手法で
あるといえます。
 中国は、新型コロナウイルスに関する真実が暴露されることを
極端に恐れています。これについて、既出の藤井厳喜氏は、次の
ように解説しています。
─────────────────────────────
 中国共産党が武漢ウイルスに関する真実を隠蔽し、それゆえに
世界に向けての真実の報道をどれほど恐れているかを物語る2つ
の状況証拠が存在する。第1は米国人記者の追放であり、第2は
チャイナ国内の市民記者の身柄拘束である。
 3月17日、チャイナ外務省は、アメリカを代表する「ニュー
ヨークタイムズ」「ウォールストリート・ジャーナル」「ワシン
トンポスト」という3紙のアメリカ国籍の記者に対して、202
0年度のビザ更新を行なわず、事実上国外追放の措置をとった。
事実を報道する外国特派員はチャイナには無用であるという宣言
である。これで3紙の記者は、チャイナ本土のみならず、マカオ
や香港でも取材活動が出来なくなった。
 言論の自由を徹底して抹殺しようとする中国共産党の動きは、
いわゆる「市民記者の身柄拘束」にも表れている。チャイナでは
武漢ウイルス事件の実態を報道してきた公民記者(フリーランス
の記者)が相次いで行方不明となっている。
           ──藤井厳喜著/徳間書店の前掲書より
─────────────────────────────
         ──[『コロナ』後の世界の変貌/066]

≪画像および関連情報≫
 ●新型コロナ巡る2つの陰謀説を徹底検証する
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   新型コロナウイルスが世界中で猛威を振るっている。3月
  24日までに米国やイタリアなど少なくとも20の国・地域
  の政府が非常事態や緊急事態を宣言している。
   各国当局の発表に基づきAFP通信がまとめた統計による
  と、日本時間24日午前4時現在での世界の新型コロナウイ
  ルス感染者数は174の国・地域で36万1510人に達し
  うち1万6146人が亡くなっている。
   感染症が流行すると、必ず流れるのが、陰謀説である。陰
  謀説とは、社会の構造上の問題を、背後にひそむ個人ないし
  は、集団の陰謀のせいにすることである(ブリタニカ百科事
  典)。陰謀説が真実であることは稀である。
   SARSの時は、中国の急成長やアジアの人口増加を恐れ
  た米国が起こしたバイオテロだとする陰謀説や新型インフル
  エンザのワクチンであるタミフルの売り上げを伸ばすため、
  米政府と製薬会社が共謀して感染症を広めたとする陰謀説が
  流布された。
   また、エボラ出血熱を発症させるエボラウイルスは、CI
  A(米中央情報局)が開発した生物兵器ではないかとする陰
  謀説が流布された。さて、今回の新型コロナを巡っては、こ
  れまでのところ2つの陰謀説が流布されている。一つは、新
  型コロナウイルスは、中国の生物兵器である、とするもので
  ある。もう一つは、新型コロナウイルスは、米軍が武漢に持
  ち込んだものである、とするものである。
                  https://bit.ly/3lzsT54
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チェコの高官/台湾への公式訪問.jpg
チェコの高官/台湾への公式訪問
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 『コロナ』後の世界の変貌 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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