2020年07月27日

●「どこからも同情されない国になる」(EJ第5295号)

 沖縄県・尖閣諸島周辺での中国海警局の武装公船などの侵入が
続いており、22日で「100日」連続です。世界中が中国発の
新型コロナウイルス対策で必死になっているスキを見て、中国は
尖閣諸島に毎日堂々と公船を乗り入れているのです。
 5日のことですが、中国公船が30時間以上領海侵犯し、外交
ルートを通じて「釣魚島(尖閣諸島の中国名)周辺の中国領海で
日本漁船を操業させないよう管理すべきだ」と主張してきていま
す。つまり、日本の実効支配を弱めようとしてきているのです。
安倍政権に支配されている日本のメディアは、ニュースを積極的
に伝えませんが、このままいくととんでもないことになります。
 これに対して、21日、エスパー米国防長官は、英・国際戦略
研究所で講演し、このことを次のように批判しています。
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 中国は、東シナ海と南シナ海で攻撃的な行動を続けている。日
本の施政下にある尖閣諸島周辺海域で、侵入の回数と時間を増や
している。             ──エスパー米国防長官
             2020年7月22日付、朝日新聞
─────────────────────────────
 中国を止めるには、尖閣海域を封鎖する必要があります。その
ためには、米軍の射撃練習場になっている尖閣諸島・大正島など
に、日本が自衛隊の軍事拠点を作り、米軍とともに軍事演習を行
えばいいのです。そうすると、中国は太平洋に出る手段を失うこ
とになります。もはや習近平国家主席の日本国賓招待などは、も
し決行すれば、日本中で超大デモが起き、日本は大恥をかくこと
になります。
 どのように考えても、現在の中国にとって、現在の時点で武力
にものをいわせて尖閣諸島を占拠すれば、中国は完全に世界から
孤立します。コロナ災禍で、中国は世界中から信頼を失っていま
す。米軍も日米安全保障条約上、日米両軍が総力を挙げて、島の
奪還に動かざるを得なくなります。
 しかし、中国にも人物がいるようです。中国軍部の代表的なタ
カ派である中国攻防大学戦略研究所の戴旭教授です。この人は、
10年前に「2010年インターネット9大風雲児」と呼ばれ、
故郷の河南省では「河南の三傑」の1人ともいわれています。
 戴旭教授は、「中国が米国について思いもよらなかった4つの
こと」というタイトルで講演を行っていますが、中央日報のサイ
トから、その4つとは何かについて、要約・整理してお伝えする
ことにします。
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 戴氏が話す最初の「中国が米国について思いもよらなかったこ
と」は、中国に対する米国の怨恨がこれほどまでに大きかったと
いうことだ。これによると、トランプ米大統領は、中国に対して
少しの好感さえ持っていない。トランプ氏は中国を「貿易テロリ
スト」「グローバル経済侵略者」「詐欺師」「こそ泥」「ルール
破壊者」などと呼んでいるが、これは中国が、夢にも思っていな
かったことだ。
 中国の第二の「思いもよらなかったこと」は、米国のやり方が
情け容赦のない非常に手厳しいものだったということだ。米国政
府の中国バッシングが少しの談判の余裕も与えず、そして電撃的
に行われるとは、中国官僚や専門家のほとんどが予測できなかっ
た。米中貿易が密接に絡み合い、長い歳月をかけて形成されたも
ので、中国は米国の気が触れない限り、中国産製品に対する関税
を2000億ドル(約21兆4000億円)も追加で課すわけが
ないと考えたが、米国は中国に対して相次いで強硬姿勢を取り、
中国の予想をはるかに超えた。
 第三のことは、中国がこのように米国から不利益を被っている
にも関わらず、中国に同情や支持を示す国が一つもないという点
だ。多くの国々が米国の貿易政策に反対しながらも、これによる
最大被害者である中国の味方になって反米戦線を構築しようとい
う国はない。中国は今まで世界各国に援助を惜しんでこなかった
し、援助を受けた国々もまた中国から多くの利益を持っていった
が、いざ重要な時期には中国と共に行動する国がない。
 第四のことは、中国バッシングのために米国国内が一糸乱れず
統一戦線を構築した点だ。米国の共和党と民主党は事あるごとに
対立しながらも、中国に対する政策だけは完全に統一された立場
を見せている。特に驚くのは、米議会で中国のために話をしよう
という政治家がたった一人もいないということだ。
            ──中央日報/中央日報日本語版より
                  https://bit.ly/2E4eFb7 ─────────────────────────────
 この戴旭教授の講演は、本当の意味での中国の反省であるかど
うかわかりませんが、そのように考えている有名人がいるという
ことは、わるいことではないと思います。要するに、中国は米国
という国を間違ってとらえていたということになります。戴旭教
授は、この講演で、「米国に対する新しい認識」についても触れ
ていますが、これについては、次のサイトを参照してください。
─────────────────────────────
  ◎米国にやられてもわれわれに同情する国はない(2)
   米国に対する新しい認識  https://bit.ly/2ZOxd7P
─────────────────────────────
 上記の「米国に対する新しい認識」でも述べられていることで
すが、戴旭教授は、中国政府に対して、「米国は戦略のプロであ
り、一度米国から『敵』という烙印を押されると、反テロ戦争で
見せたように、米国は、すべての手段を動員して最後まで追いか
けてくる恐さがある」と、米国という国に対して、警戒心をあら
わにしています。さらに、たとえトランプ大統領が選挙で交代し
ても、「米国を偉大にする」という核心戦略は不変であるとも述
べています。本当に中国は、そうあって欲しいし、尖閣において
も、いまのようなことはやめて欲しいものです。
         ──[『コロナ』後の世界の変貌/039]

≪画像および関連情報≫
 ●徹底的な隔離はなぜ実行できたのか/中国の「大衆を動かす
  仕組み」の底力
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   中国に「居民委員会(居委会)」と呼ばれる組織がある。
  日本で言えば町内会とか、町の自治会みたいな位置づけの組
  織だが、もちろん社会主義体制なので、その性格は大いに異
  なる。いわば中国という国の政策を実行するための、住民の
  代表で組織された実働部隊である。今回の新型コロナウイル
  スに感染症の蔓延で、事実上の「全国民自宅軟禁」の政策を
  実行し、感染の拡大阻止を実現するうえで最も大きな役割を
  担ったのが、この「居委会」だと思う。
   居委会は、中国という国の「いざ」という時の底力、権力
  体制のすさまじさを、まざまざと見せつけた。表舞台ではあ
  まり目立たないが、この居委会を手がかりに、中国社会の仕
  組みについて今回は考えてみたい。
   中国国内の感染拡大が落ち着きを見せ、経済活動が動き始
  めたのとは逆に、日本では感染爆発の危機が叫ばれるように
  なって、日本にいたビジネスパーソン、大学が休みになった
  留学生などが中国に戻る例が私の周囲にも増えてきた。空港
  によって扱いは多少違うが、例えば上海の場合、それらの人
  たちは国籍を問わず、中国入国後は14日間の自宅もしくは
  指定ホテルでの隔離の対象となる(注:その後、上海では日
  本からの渡航者は14日間の隔離対象から除外された。他の
  主要感染国からの渡航者は、3月26日現在、同措置が継続
  中)。             https://bit.ly/2CE8NVA
   ──────────────────────────

エスパー米国防長官.jpg
エスパー米国防長官
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 『コロナ』後の世界の変貌 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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