2020年07月15日

●「コロナ禍で何が起こりつつあるか」(EJ第5289号)

 今回のコロナ禍で、何が起こりつつあるか考えてみます。コロ
ナ禍による大変化の筆頭は、中国に対する印象の悪化です。少し
オーバーにいえば、全世界が中国を敵視しはじめるという変貌が
国際環境で起きているのです。国際外交におけるかつての中国へ
の注目、期待は薄れ、中国熱は雲散霧消しつつあります。
 2020年4月22日に発表された米国人を対象とするビュー
リサーチ調査は、次のような結果になっています。
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 ◎あなたは中国が好きですか、嫌いですか
  ・嫌いです ・・・・・・・・ 66%
  ・好きです ・・・・・・・・ 26%
 ◎あなたは習近平が正しい方向の政治をしていると思いますか
  ・正しいとは思わない ・・・ 71%
  ・正しいと思う    ・・・ 22%
                      ──宮崎正弘著
        『──次に何が起きるか/WHAT NEXT
             /コロナ以後全予測』/ハート出版
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 中国の未来に、これまで大きな期待をかけてきたのは、ほかな
らぬ米国なのです。米国がサポートを続ければ、中国は必ず民主
化するし、米国と中国による「G2関係」が築けると本気で考え
ていた中国びいき──パンダハガーがたくさんいたのです。いわ
ゆる親中派です。
 クリントン元大統領をはじめ、ゼーリック元国務副長官、ニク
ソンの忍者外交を主導したキッシンジャー元国務長官、カーター
政権でのブレジンスキー安全保障担当補佐官など、親中派の政治
家はたくさんいたのです。なかでも、ゼーリック元国務副長官に
いたっては、大の反日家で、中国を「競合相手」ではなく、「責
任あるステークホルダー」としても持ち上げるほどの親中派だっ
たといいます。
 しかし、このコロナ禍によって、親中派は激減し、様変わりを
きたしています。5月27日、上院本会議では「ウイグル人権法
案」を全会一致で可決しています。下院では、昨年師走に同法案
を407対1の賛成多数で可決しています。そして、6月17日
トランプ大統領は、この法案に署名しています。
 このように、中国を排除するための米国の法制度が多くなって
おり、それは中国を一歩一歩追い詰めています。このまま行くと
中国はあらゆる面で追い詰められ、将棋でいうところの詰んだ状
態になってしまいます。グローバリズムは、ヒト、モノ、カネの
移動の自由化であるので、中国を市場から排除するためには、こ
こに壁をつくればよいことになります。
 中国共産党の幹部が一番怖がっているのは自国民です。恐いか
ら弾圧するのです。彼らは、共産党の体制が崩壊することも予測
し、外国、とくに米国に資金や財産を移しています。習近平主席
の親族も米国にいるといわれます。もちろん米国はそれらをすべ
て把握しており、香港のようなことが起きると、そうした中国人
の財産を凍結したりします。
 中国排除の米国の法制度の概況について、経済評論家の渡邊哲
也氏は次のように述べています。
─────────────────────────────
 まずヒトですが、大統領令によるIEEPA法で米国国内での
経済活動を制限できます。モノは商務省の輸出管理であるEAR
(輸出管理税別)とECRA(輸出管理現代化法)があり、制裁
はエンティティリスト、カネは財務省のOFAC(外国資産管理
宅)規制によるSDNリストで、資金調達や融資を含む金融取引
が即時に停止されます。
 たとえば、SDNリストでカネの制限を掛ければドルを必要と
する海外展開をしている企業は即死します。ファーウェイを例に
とると、TSMCからのSOCの輸入、日本からの基幹部品の輸
入が停止した時点で、製品の生産ができなくなり、取引先との契
約も切れ、従業員の雇用も継続できなくなる。(中略)
 基本的に最先端の半導体やプログラムの基本部分は米国企業が
特許を保有しており、米国原産技術が含まれています。そして、
それを利用した再輸出も規制対象ですから、台湾だけでなく、日
本企業もその影響を受けることになります。違反すればドル決済
ができなくなり、輸出企業は破綻することになります。どちらに
しても、SOCが手に入らなくなれば、製品は作れません。世界
各国ファーウェイを採用しても、製品の生産が停止するので、い
つまで待ってもネットワークが完成しないことになりそうです。
                ──宮崎正弘/渡邊哲也共著
    『コロナ大恐慌/中国を世界が排除する』/ビジネス社
─────────────────────────────
 博成玉という中国人がいます。中国海洋石油(CNOOC)と
シノペックのCEOを務めた人物です。ティラーソン前国務長官
とは親しい関係といわれます。その博成玉氏が『財訊』という雑
誌の最新号で、アフター・コロナについて、次のように述べてい
ます。米国をよく知る、なかなか冷静な分析です。
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 コロナ以後の国際環境は中国にとって冷風、そのうえに米国が
繰り出した悪玉論の蔓延で地政学的環境はさらに中国の立場を悪
化するだろう。コロナはブラックスワンだったのだ。中国への冷
視は、向こう1、2年はおさまらない匂いがする。
   ──博成玉氏/──宮崎正弘・渡邊哲也共著の前掲書より
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 ここで「ブラックスワン」とは、あってはならないことが起き
ることを意味しています。マーケットにおいて、予想ができず、
起きたときの衝撃が大きい事象のことを「ブラックスワン」とい
うのです。今回の新型コロナウイルス禍は、まさにブラックスワ
ンそのものだったといえます。
         ──[『コロナ』後の世界の変貌/033]

≪画像および関連情報≫
 ●新型肺炎で「反中感情」が世界に広がる根本理由
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   日本ではツイッターのハッシュタグで「#中国人は日本に
  来るな」がトレンド入りした。シンガポールでは、何万人も
  の住民が中国人の入国を禁止するよう政府に求める請願書に
  署名した。
   香港、韓国、ベトナムではレストランなどが中国本土から
  の客を歓迎しないという張り紙を出し、フランスの地方紙は
  トップページに「黄色警報」という見出しを掲載。カナダの
  トロント郊外では、保護者らが最近中国から帰国した家庭の
  子どもについて17日間学校を休ませるよう求めた。
   中国を中心に新型コロナウイルスの感染が急速に拡大して
  いることで、世界各地でパニックが広がり、一部であからさ
  まな反中感情が生じている。
   世界保健機関(WHO)は1月30日に「国際的に懸念さ
  れる公衆衛生上の緊急事態」を宣言し、アメリカ国務省は中
  国への渡航自粛を勧告するなど、当局は危機の封じ込めを急
  いでいる。しかし、感染拡大に対する不安が、ゼノフォビア
  (外国人嫌悪)を助長している。パニック拡大の波は時に実
  際的な懸念をはるかに上回っている。中国の経済力と軍事力
  の増大がアジアの隣国や西側のライバル国を不安にさせる中
  コロナウイルスは中国本土の人々に対する潜在的な偏見をあ
  おっている。          https://bit.ly/2We66k6
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ゼーリック元国務副長官.jpg
ゼーリック元国務副長官

posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 『コロナ』後の世界の変貌 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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