2020年07月06日

●「マスクの効果を見直す必要がある」(EJ第5282号)

 なぜ、マスクをするのか。なぜ、人と社会的距離をとるのか。
それは、自分を含めて、誰も自分が新型コロナウイルスの感染者
である可能性を否定できないからです。実は、このことは、案外
理解されていないと思います。以下、このウイルスについて、わ
かってきたことについて書きます。
 ある人が新型コロナウイルスに感染したとします。感染当初は
ウイルスの量が少ないので、症状は出ませんが、ウイルス量があ
る一定の量に達すると、咳や発熱などの症状が出てきます。問題
は、その症状が出る何日か前から、このウイルスは人に対する感
染力を持つことです。感染できるだけのウイルスの量に達したか
らです。このことは当の感染者はもとより、他人がそれを知る由
もありません。だから、このウイルスは防御しにくいし、きわめ
て厄介なのです。
 この無症状感染者のほとんどは、その後のウイルスの量が症状
を起こす一定のレベルに達することなく、そのまま治ってしまう
人が多いのです。ウイルスの量と発症や感染との関係については
ウイルスの量を計測できる「リアルタイムPCR」という測定法
によるいくつもの論文が出ているようです。
 さて、症状が出た感染者について述べます。感染者の年齢、健
康状態による違いはありますが、重症化する人と軽症の人に分か
れます。重症化する人は、ウイルス量が継続的に増加しているの
で、感染力はきわめて高いのです。したがって、重傷者を診る医
師は、感染しないよう厳重に防護する必要があります。
 しかし、軽症の患者はどうかというと、1週間も経てば、ウイ
ルスの量が減り、他の人に感染させる恐れはなくなります。これ
は台湾やドイツからの報告によって確認されています。かつて日
本では、軽症患者は、病院以外のホテルなどに隔離し、PCR検
査で、2回連続して陰性にならなければ隔離を解かない方針でし
たが、この必要はまったくなかったことになります。
 以上のことを前提とすると、マスクをつけて人と社会的距離を
とるのは、人に自分の飛沫を浴びせたり、人から飛沫を浴びない
ためです。しかし、マスクをしている人のほとんどは、人からの
感染を防ぐためにやっており、自分が他の人に移さないためと考
えている人は少ないと思います。まさか自分が既に感染者である
と考えている人は少ないからです。
 米国のトランプ大統領がマスクをしないことに非難が集まって
います。マスクの有効性はわかっているのに、国のリーダーがマ
スクをしないのは問題があると、クオモニューヨーク州知事が批
判していますが、トランプ氏は馬耳東風です。
 こんな話があります。トランプ氏の対抗馬になる可能性の高い
バイデン氏は、5月下旬のメモリアルデーに黒いマスクをして姿
を現しています。トランプ氏は、このバイデン氏に「天気のいい
屋外でマスクを着用するのはかなり異常」と、その写真を添付し
てツイートしたところ、バイデン氏は、トランプ大統領が公のイ
ベントにもマスクを着用しないことについて「本当のバカ」と批
判したのです。
 もっとも、欧米人がマスクをしないのは、文化の違いもありま
す。コラムニストのサンドラ・ヘフェリン氏は、日本と欧米人の
違いについて次のように述べています。
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 欧米人は主に「口」で表情を作るので、顔の下半分が見えない
と、相手の表情が分からず怖い、不気味だと感じる傾向があるよ
うです。そのため、「顔の下半分」を隠すのは、相手に対して失
礼であり、礼儀に欠けている、というとらえ方をする欧米人が多
かったのです。
 逆に日本では「サングラスは失礼」だと考える人が多いです。
筆者が日本に来たばかりの頃、プールサイドにあるカフェでアル
バイトをしていたのですが、屋外であったためにまぶしくてサン
グラスをしていたら、「サングラスで接客をするのは失礼」と怒
られました。ただし、サングラスを外すと、まぶしくて目を開け
ていられなかったため、「目が弱いんです」と説明をし、サング
ラスをしてもよいことになりました。この時に、「日本ではサン
グラスをするのは『失礼』に当たるんだ」と知って、目からうろ
こが落ちる思いでした。       https://bit.ly/3gb4Xl9
─────────────────────────────
 確かに、欧米では鼻と口を隠すのは、不審者、悪漢、ドロボー
と相場が決まっており、目を隠しても、鼻や口元を隠さないもの
です。しかし、日本では、サングラスをしている人を怪しい人、
不審者とする傾向が、かつてはあったと思います。アメリカン・
コミックスに登場するスーパーヒーロー「バットマン」は、目と
鼻は隠していますが、口元は出しています。文化の違いであるこ
とは明らかです。
 問題は、無症状感染者──本人は感染しているとは考えていな
い無症状感染者──からの感染をいかにして防ぐかです。はっき
りしていることは、そういう感染者を発見するのは不可能である
ということです。そうであるとすると、方法は、家に閉じこもる
か、外に出掛けるときはマスクをするか、どちらかしかないので
す。そういう意味において、マスクは最小必要限度不可欠です。
どこにそういう感染者がいるか、だれもわからないからです。
 日本人の外出のさいのマスク装着率はほぼ100%です。こん
な国は、日本しかないと思います。今や外出に際してマスクを装
着することは、エチケットになっているからです。日本の感染者
数が、欧米諸国に比して明らかに少ないのは、案外マスク装着に
あるのではないかと思います。
 意外ですが、WHOはマスクをあまり重視しているように見え
ないことです。発熱や咳のある人は、マスクをするべきであると
いっています。これは不可解な話です。現在のWHOは、無症状
感染者による無自覚感染というものを重視していないのでしょう
か。どうやら、現在のWHOはあまり頼りにならないようです。
         ──[『コロナ』後の世界の変貌/026]

≪画像および関連情報≫
 ●「マスクは無意味」の議論にもう意味がない理由
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   4月1日、安倍晋三首相が国内の約5000万の世帯に、
  ガーゼマスクを2枚ずつ配布することを発表した。この対策
  に対して異論を唱える人たちが多い中、「このタイミングで
  配るのはどうかとか、1世帯2枚でいいのかといった議論は
  あるかと思いますが、洗って使い回せるマスクでしょ。すご
  くいいと思います」。
   こう持論を展開するのが、独立行政法人国立病院機構東京
  病院呼吸器センターの永井英明医師。日本感染症学会指導医
  日本結核・非結核性抗酸菌症学会指導医などを持つ、呼吸器
  感染症治療のプロフェッショナルだ。永井医師は、現在の新
  型コロナウイルス感染症に対するマスクの扱いについて、疑
  問に思うことが多いという。
   「例えば、WHO(世界保健機関)は、新型コロナウイル
  ス感染症の症状、とくに咳がある人やその人の世話をする人
  だけマスクを使うように呼びかけています。しかし、本当は
  すべての人がマスクを使ったほうがいいはずです」
   厚生労働省は、新型コロナウイルスに関するQ&Aのなか
  でマスクについて「自身の予防用にマスクを着用することは
  混み合った場所、特に屋内や乗り物など換気が不十分な場所
  では一つの感染予防策と考えられます」としている。
                  https://bit.ly/31B7gK7
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バットマン.jpg
バットマン
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 『コロナ』後の世界の変貌 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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