2020年06月02日

●「中国は消防士のふりをする放火犯」(EJ第5258号)

 中国がまず狙いを定めたのはイタリアです。感染の爆発に医療
品不足で悩むイタリアに対して、中国は支援物資として大量のマ
スクを送り込んだのです。この中国のイタリア支援に関するダイ
ヤモンド・オンラインの記事があります。
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 3月12日、イタリア北部のロンバルディア州の空港に、中国
の医療チームが30トンの医療物資とともに到着した。この様子
は中国のテレビでも大々的に取り上げられて、「人類共通の枠組
み」で取り組んできた外交の成果だと自画自賛した。
 すでに2月以降、イタリアでは北部を中心に新型コロナウイル
ス感染が拡大して、深刻さを増していた。時を経るごとに死者が
激増。特に人工呼吸器などの医療機器が大幅に不足し、医療崩壊
が始まっていた。
 イタリア政府はすぐにEUに医療物資支援を求めたが、3月に
なってもそれに応える国はなかった。それどころかドイツが4日
にマスクなどの輸出を禁止。フランスも3日にマスクの政府管理
を始めて国境を閉鎖。イタリアはEUへの失望を隠さなかった。
 そんなときに、救いの手を差し伸べたのが中国だったわけであ
る。ロンバルディア州政府は中国の配慮に感謝の言葉を述べた。
 EU各国が中国への警戒感を強める中、EUの主要国でありな
がら、中国の国際投資政策「一帯一路」を受け入れたイタリアは
恩人でもある。最近はそのイタリアですら中国に警戒を見せ始め
ていたが、今回の速やかな対応はイタリア世論にも微妙な影響を
与えた。              https://bit.ly/2XFUiHz
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 イタリアにはこんな話もあるのです。中国の支援に対し、ルイ
ジ・ディマイオ外相は、李軍華イタリア大使に会って、感謝を伝
えたのですが、それだけでは収まらなかったのです。全国会議員
のもとに、イタリア語版の中国の宣伝誌が郵送され、議会として
中国への「感謝表明」を迫られたといいます。
 フランスに関してこんな情報もあります。2020年4月4日
に、米国のマーク・グリーン下院議員(共和党)が、FOXニュ
ースの番組で暴露したといわれています。既出の長谷川幸洋氏の
情報です。
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 中国の習近平国家主席は、フランスのエマニュエル・マクロン
大統領との電話会談で、中国がマスクを10億枚寄贈する見返り
に、華為技術(ファーウェイ)社製の第5世代移動通信システム
(5G)をフランスに導入するよう持ちかけた。FOXニュース
         ──月刊『Haneda』/2020年7月青葉号
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 この報道によって、中国への非難が殺到したといいます。中仏
の両政府ともに、その事実を否定したものの、誰もがファーウェ
イの真の意図を見抜いていたのです。中国にとって5G敷設は世
界のIT覇権を握るための中核ですが、マスク外交はそれを進め
るため手段でもあったのです。『選択』/2020年5月号にも
次の記事が掲載されています。
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 米ウィスコンシン州上院のロジャー・ロス議長は2月末、中国
の在シカゴ総領事館から、突然、メールを受け取った。「中国の
ウイルスとの闘いを支持し、称える決議を、州議会で採択してほ
しい」という内容だ。無視したところ、13日後にまたメール。
議長は「バカ野郎」と返事を送った。同州議会は結局、「中国の
隠蔽」を糾弾する決議を採択した。
              ──『選択』/2020年5月号
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 2月の下旬のことですが、中国の王毅外相は、イタリアのディ
マイオ外相と電話会談をし、イタリアに対して、次のように呼び
かけています。
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    イタリアと健康シルクロードをともに築きたい
                 ──王毅中国外相
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 中国はEUの一角が崩せると考えて、膨大な量の医療物資の提
供と3次にわたる医療チームを送り込んでいます。ちなみに、中
国が医療チームを送り込んだ国は、次の12ヶ国です。
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      イラン        ロシア
      イラク        カザフスタン
      イタリア       ミャンマー
      セルビア       フィリピン
      カンボジア      ベネズエラ
      パキスタン      ラオス
               ──2020年4月13日現在
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 ここまでの中国の一連の行動を見ると、中国は「消防士のふり
をする放火犯」以外の何者でもないといえます。こういう中国の
振る舞いについて、EUの外相に当るボレル外交安全保障上級代
表は、次のように警告をしています。
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 中国は、自分たちが、米国と違って責任感があり、信頼できる
パートナーであるとしているが、我々は、情報戦や「気前のいい
政治」を使って、影響力を高めようとする地政学的な要素がある
ことに注意しなければならない。     ──ボレルEU外相
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 このような中国の動きに関して、世界中が非難の目を向けつつ
あります。とくに米国との関係は、今回のコロナ禍について中国
が責任を回避するメッセージを出すに及んで、抜き差しならない
状況に陥りつつあります。中国と米国は、一触即発の状況に陥り
つつあります。  ──[『コロナ』後の世界の変貌/002]

≪画像および関連情報≫
 ●イタリア支援でEUにくさびを打ち込んだ中国/マスク外交
  は中国の本領「トロイの木馬作戦」/みずほ銀行/唐鎌大輔氏
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   欧州全域が新型コロナウィルス対応に苦慮する中、その隙
  を突くような中国の鋭い外交が展開されている。中長期的に
  欧州が抱える地政学リスクを考察するうえで、大変に重要な
  意味を持つ動きと見られるので簡単に整理しておきたい。
   過去、中国はギリシャの財政的困窮につけ込んで同国の港
  を買収し、近年はこれを足がかりにしてEU(欧州連合)域
  内に複数の戦略投資を行ってきた。中国は「一帯一路」構想
  の下、欧州各国の要衝で多くの投資を展開しており、一部で
  はEUの内側からの崩壊を狙う「トロイの木馬」作戦とまで
  呼ばれている。相手の弱みを見つけるや否や、機敏に攻め込
  む外交姿勢は中国の本領である。こうした文脈で、中国から
  イタリアへの人道支援は注目される。
   感染者の爆発的拡大に対応が追いつかず、いわゆる医療崩
  壊の状態に陥っているイタリアでは、マスクを筆頭とする医
  療物資支援をEUに求めてきた。しかし、イタリア当局者か
  ら「EUのどの国も応じてくれなかった(マッサーリ駐EU
  大使)」との不満が漏れるように、混乱のさなかでEUは連
  帯感を示すには至っていない。逆にフランスやドイツが国外
  へのマスク輸出を抑止する政策を行って、これをフォンデア
  ライエン欧州委員長が「一方的な行動は良くない」といさめ
  る体たらくである。       https://bit.ly/36L3qyt
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dhimaio/itariagaishou/oukichuugokugaishou.jpg
ディマイオ・イタリア外相/王毅中国外相
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 『コロナ』後の世界の変貌 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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