では、最近はあまり行われていない「そもそも総研」が番組内で
急遽行われたのです。玉川徹氏が、東京財団政策研究所/小林慶
一郎研究主幹に、新型コロナウイルス感染拡大阻止対策について
インタビューしています。ご覧になっていない人も多いと思われ
るので、そのエッセンスをご紹介することにします。
小林慶一郎氏はこういっています。新型コロナウイルスの感染
拡大は、日本においては、緊急事態宣言による休業要請によって
現在のところは低く抑えられています。しかし、これは「人と人
が極力会わないようにする」という、経済を犠牲にする「消極戦
略」による成果なのです。
これから第2波が来るといわれますが、それまで数ヶ月の時間
が稼げると思うので、今こそ、これまでの「閉じこもり戦略」か
ら「新たな戦略」へ転換するチャンスであると思います。
あくまで理想論ですが、もし、感染者かどうかを100%判定
できる検査方法があるとするならば、1回だけ全国民にその検査
を受けてもらって、その結果、陽性になった人は、隔離をして、
2週間だけ社会から外れてもらうと、その他の人は感染者ではな
いので、経済も社会も回していけることになります。それで問題
は解決するというのです。
ノーベル経済学賞を受賞したポール・ローマーという米国の経
済学者がいますが、彼は、米国民全体が2週間に1回、全員検査
を受けられるようにすれば、陽性者を隔離して、他の人は普通に
経済を再開しても構わないという提言をしています。似たような
提言がハーバード大学の倫理学センターの学者グループからも出
ています。イギリスにある公衆衛生学の専門家グループも、イギ
リスで、1日1000万件の検査をやれば、経済は再開できると
いう提言を出しています。
もちろんこれは、あくまで理想論でありますが、考え方の基本
は、非常に筋がいい考え方だと思います。感染者と非感染者が接
触しなければ、新たな感染は生まれないからです。症状がない人
を検査することは意味があるのかという人もいますが、私は医療
にとっても意味があると思います。それは、大量に無症状の人を
大量に隔離できれば、無症状の人たちが、さらに感染を広げる可
能性を減らすことができます。それは、結局、医療の現場にやっ
てくる重症者の数を将来的に減らすことになるので、医療の役に
立つと思います。
1日の検査数としては、現在が2万件であるとすると、10倍
以上必要です。数兆円規模の資金を使えば、検査機器の大量購入
大量生産、検査人員1万人を他業種から集めて訓練するならば、
1日数10万件のPCR検査は可能です。また、民間ホテルを借
り上げて、50万人分の隔離施設を確保できると考えています。
本当は、1日10万件ではなく、100万件とか、1000万
件というところまでいった方が良いというのが、理論モデルでは
出てきます。なぜなら、1日1000万件の検査が可能となれば
2週間で国民全員の検査が可能になるからです。
ここからは、小林慶一郎氏と玉川徹氏の対談になります。
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玉川:今PCR検査だと、1万8000円ぐらいのコストが掛っ
ているみたいなんですね。コストと簡便さでいうと、「抗原検
査キット」というのが日本でも承認されまして、これが、大体
6000円くらいだというふうにいわれているんですね。仮に
1万円で計算すると、日本人全員に抗原検査をやった場合、1
兆3000億円になりますよね。これぐらいのオーダーだった
ら、どうなんでしょうね。
小林:全員というのは物理的に難しいと思うんですけれど、理想
論としては、1兆円とか、2兆円のお金で済むのであれば、私
は安いと思っている。IMFの予想によると、経済成長率が、
マイナス3%とか、マイナス5%に今年はなってしまうわけで
すよね。自粛と休業を1年間続けたら、マイナス5%だとする
と、25兆円くらい。日本のGDPが500兆円なので、経済
損失が25兆円出てしまうわけです。
玉川:そうですね。
小林:1回全国民が検査を受けてもらってそれで経済再開すれば
その25兆円の経済損失がなくなって、その代りに検査コスト
2兆円とか3兆円ぐらいかかるということだったら、極めて安
いですよね。
玉川:ああ、そうですね。要するに、今まで検査というものは、
医療だったわけですよね。そういう発想ではない、というわけ
ですか。
小林:医療のためでもあり、かつ社会の不安をなくすためでもあ
るという発想だと思うんですね。例えば、自分が消費者として
レストランに食事に行くとか、あるいは買い物に行く時に感染
してしまうかもしれないという不安を感じるわけですよね。
玉川:それは絶対ありますよ。
小林:感染の不安があることが経済や社会をものすごく痛めつけ
る、委縮させてしまうというものがある。これを逆にいうと、
検査することによって、感染者が社会の中からいなくなれば、
私たちは感染の不安を感じなくて、経済ももっとV字回復する
可能性がある。何度も緊急事態を繰り返して、そしてそのつど
現金給付で財政を出していくというのは、ある意味で感染の拡
大という状況に受動的に対応する受け身戦略だと思うんです。
それに対して検査を大量に行って、無症状の感染者を社会の中
から捕捉して、そして一時的に隔離してもらうというやり方が
ある種、感染の拡大を積極的に閉じ込めようという感染コント
ロールの積極戦略だと思うんです。そういう積極戦略に切り換
えるタイミングがちょうど今だと思うんです。
──「羽鳥慎一モーニングショー」/5月19日
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──[消費税は廃止できるか/094]
≪画像および関連情報≫
●いまこそ、国民全員にPCR検査を!なぜ日本は検査数を絞
るのか
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政府は4月16日に、「緊急事態宣言」の対象地域を全国
に拡大することを決め、安倍晋三首相は、「特にゴールデン
ウィークにおける人の移動を最小化する観点から」、「最低
7割、極力8割の接触削減を何としても実現しなければなら
ない」と訴えた。
だが、連休前の段階でも「8割接触削減」を達成できてい
るかは疑わしい。422日、国の専門家会議は「オンライン
帰省」「オンライン飲み会」「遠隔診療」など、具体的な行
動を「10のポイント」として示し、大型連休中も自宅で過
ごすよう提言した。
4月24日時点で、国内の感染者数はクルーズ船の乗客・
乗員を合わせて、1万3575人となった。公表される日々
の感染者数は爆発的な増加傾向とは言えず、安倍首相の言う
「ギリギリ持ちこたえている」という印象も与えるが、一方
で、死者数の増加が続いている。国内の死者数は24日時点
で358人に上っている。
感染者数が急増していない背景には、検査数の抑制がある
と言われている。オーバーシュートを起こして医療現場が崩
壊せぬよう、「軽症者は様子をみる」「重症化してからPC
R検査」というフローが一般化しているからだ。だが、発熱
しながら自宅待機をしている間に容体が急変し亡くなった女
優・岡江久美子さんのケースがきっかけの1つとなり、国内
ではその方針に対して、大きな疑念が湧き上がっている。
https://bit.ly/2A4unks
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小林慶一郎氏/日本財団