2020年04月23日

●「休業補償を巡る国と自治体の争い」(EJ第5234号)

 新型コロナウイルスの感染拡大に対する政府の対応についての
最新の朝日新聞社の世論調査があります。4月18日〜19日実
施の全国世論調査です。
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      ◎感染拡大防止 首相は指導力を・・・
       ・発揮している  ・・ 33%
       ・発揮していない ・・ 57%
      ◎政府対応を・・・
       ・評価する  ・・・・ 33%
       ・評価しない ・・・・ 53%
      ◎緊急事態宣言の全国拡大を・・・
       ・評価する  ・・・・ 88%
       ・評価しない ・・・・  9%
      ◎自粛要請に応じた店舗の休業補償を・・・
       ・必要がある ・・・・ 82%
       ・必要はない ・・・・ 10%
           ──2020年4月21日付、朝日新聞
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 調査結果は、安倍政権にとって厳しいものになっていますが、
緊急事態宣言を全国に拡大したことについては、「評価する」が
88%を占めています。実は、これは事業主にとって、きわめて
重要なことなのです。
 この調査では、「休業補償」についても聞いていますが、これ
は、緊急事態宣言による休業要請に応じた店舗や企業の損失を政
府が補償すべきかどうかを意味しています。この場合、大切なこ
とは、補償すべきといっているのは、あくまで店舗や企業であっ
て、その店や企業で働いている従業員ではないことです。言葉の
違いには十分気をつける必要があります。
 「休業補償」に似た言葉に「休業手当」がありますが、これら
は明確に異なります。「休業手当」は、会社都合により従業員が
働けない状態にあるさいに、会社が平均賃金の6割以上を支払う
ように定めた制度です。これは会社に支払い義務があります。こ
れに対して休業補償は、業務中に生じた怪我や病気などで働けな
くなった労働者を救済する制度で、平均賃金の8割が労災保険か
ら支払われます。したがって、「休業補償」という言葉を使うと
混乱が生じます。
 この場合、今回のような新型コロナウイルスの感染拡大による
休業は、会社都合の休業になるかどうかです。これはなかなか微
妙です。ましてその休業が国の緊急事態宣言にしたがったもので
ある場合、会社都合にはならないはずです。実際に「不可抗力」
の場合は、休業手当は出さなくてもよいということになっていま
す。国の緊急事態宣言は、その不可抗力に該当するというわけで
す。そのため、全国レベルの緊急事態宣言が強く求められていた
のです。
 4月19日のフジテレビの番組で、元大阪市長の橋下徹氏は次
のように発言しています。
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 緊急事態宣言が出た場合、不可抗力として休業手当を払わなく
てもいいという解釈を厚生労働省がやっています。これだとね、
休業手当を出さない企業がいっぱい出てくる。  ──橋下徹氏
           ──2020年4月21日付、朝日新聞
─────────────────────────────
 この発言からわかることは、厚生労働省自身が、今回のケース
が、より強い指示などではなく、要請であっても、不可抗力に当
り得るとの判断を既に示していることです。実際にどこで厚生労
働省がそういう判断を示したかはわかりませんが、その判断は今
後重要な意味を持ってきます。
 例えば、今回のコロナ禍のケースでは、北海道知事が最初に緊
急事態宣言を出しましたが、これは、自治体の知事の権限で出せ
る「協力要請」であり、店側や企業がそれに応じたとしても、そ
れは知事のひとつの経営判断であり、それをもって「不可抗力」
とはいえないのです。しかし、国による緊急事態宣言にしたがっ
て休業した場合は、話は別であるということになります。
 この解釈は、経営側の弁護士と、労働側の弁護士とでは、当然
意見は異なってきます。「休業要請も不可抗力になり得る」とす
る経営側の弁護士に対して、「不可抗力の範囲が広すぎる」とす
る労働側の弁護士との意見が対立しているからです。これについ
ては、添付ファイルの図を参照してください。この図は、21日
の朝日新聞に出ていたものです。
 こういう経緯を踏まえて、西村経済再生担当相が、共同通信の
記事を差し替えてまでやった次の発言は注目されます。「考えた
い」とはいっているものの、実際には、この1兆円を休業要請に
応じた事業者への協力金として使うことを決めています。
─────────────────────────────
 国が自治体向けに創設する1兆円の臨時交付金の使途について
休業要請に応じた事業者に支払う協力金のような活用ができるか
考えたい。             ──西村経済再生担当相
─────────────────────────────
 大多数の企業は、不可抗力がどうかは別として、緊急事態宣言
の発出に基づく政府からの休業要請にしたがい、従業員に対して
休業手当を支払っているはずです。もちろん、それができない企
業も多数あるはずです。
 しかし、このまま放置すれば、多数の企業が倒産し、大勢の労
働者が職を失います。もし、そういうことになれば、日本経済に
とって大きなダメージになります。したがって、ここは政府が動
いて、補償をし、最悪の事態を防ぐ必要があります。そのための
協力金として、別の目的の使用を考えていた臨時交付金の1兆円
を使うとしても、1兆円で足りるはずはないのです。その点、政
府はどのように考えているのでしょうか。
           ──[消費税は廃止できるか/075]

≪画像および関連情報≫
 ●<コロナ緊急事態>交付金で休業補償、対立自治体要求に
  国「不可」
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   新型コロナウイルス対策として国が地方自治体に配る一兆
  円の地方創生臨時交付金の使い道を巡り、両者の間に溝がで
  きている。政府の緊急事態宣言の対象となっている7都府県
  のうち東京を除く6府県は、休業要請に応じた事業者への補
  償に充てたい意向。だが政府は「休業補償という形では使え
  ない」との立場を崩さない。対象の自治体には独自の支援策
  の中に臨時交付金を事実上取り込むところも出てきた。(山
  哲人)
   地方創生臨時交付金は、2020年度補正予算案に盛り込
  まれた。対象は全国の地方自治体で、西村康稔経済再生担当
  相は「できるだけ高い自由度を持って地域の中小企業を支え
  ていくことなどに使えるよう制度設計したい」としている。
   緊急事態宣言の対象となった7都府県では、15日までに
  事業者への休業要請が出そろう。47都道府県で唯一、交付
  税に頼らず財政運営できる「不交付団体」の東京都は、他の
  6府県に先駆け、要請に応じた中小事業者に最大百万円を支
  給する「感染拡大防止協力金」の創設を表明。要請の実効性
  を高めていく考えだ。一方で6府県は「休業補償に見合う協
  力金の財源力はない」(吉村洋文大阪府知事)のが実態。全
  国知事会長の飯泉嘉門徳島県知事は11日、西村氏とのテレ
  ビ会議で、「国の責任で営業補償に類する対応をお願いした
  い」と求めた。         https://bit.ly/3brBaCP
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休業手当の支払い能力がなくなる「不可抗力」とは.jpg
休業手当の支払い能力がなくなる「不可抗力」とは
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 消費税は廃止できるか | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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