2020年04月20日

●「消費税減税を潰したかった財務省」(EJ第5231)

 4月18日のことです。政府の緊急経済対策の目玉である「収
入半減世帯に30万円給付」が、「所得制限なしで国民一律10
万円」に突如変更になり、緊急経済対策の閣議決定のやり直しが
行われることになっています。これについては、4月17日付の
EJで、詳しく述べています。
 こういう政策で、いつも執拗に所得制限にこだわるのが財務省
です。この役所はドケチで、取得条件をなるべく複雑に設定し、
予算を全部使い切らせず、お金を残すようにいろいろな細工をす
るのです。これに対して財務省は、国の財政を預かる重要な役所
であり、国のために無駄な出費を抑える努力をしているという見
方をする人もいますが、彼らの狙いはけっして国のためではなく
トップの財務官僚が裕福な老後を暮らすために天下り先として利
用できる数多い政府系企業・団体を維持するため、お金をできる
限り、ストックしようとしているだけです。
 そもそも、収入半減世帯への30万円給付案は、岸田政調会長
と麻生財務相が仕組んだプランです。岸田政調会長は、もともと
財務省寄りの政治家(増税派)ですが、安倍後継政権を狙うため
麻生派の協力は不可欠であり、プランには財務省の意向が色濃く
反映されています。
 それを見事に覆したのは、岸田政調会長と財務省の連携にハラ
を立てた二階幹事長の思惑と、自民党の良識派の議員たちによる
議員連盟「日本の未来を考える勉強会」の提言、そして友党であ
る公明党からの激しい突き上げです。
 ことが決した後、麻生太郎財務相は17日の閣議後の記者会見
で、次のように悪態をついています。くやしかったのでしょう。
─────────────────────────────
 新型コロナウイルス対策で政府が検討している全国民への10
万円給付については、一方的に支給するのではなく、あくまで要
望される方、手を挙げる方に配るものである。 ──麻生財務相
─────────────────────────────
 実際問題として政府は、国民の振り込み口座を把握しているわ
けではなく、何らかの方法で、国民からそれを政府に申告しても
らう必要があります。麻生財務相は、それを「私は10万円が欲
しい」と申告させると表現しているのです。言外に「私はそんな
もの、申告しませんよ」といっています。実にイヤミな男です。
 ところで、この人は、安倍政権の副総理として7年以上の年月
を過ごしながら、これまで何か仕事を遺したでしょうか。森友問
題の情報を隠蔽するため、膨大な公文書の改ざんをやっただけで
はないでしょうか。
 実は、今回の新型コロナウイルス蔓延禍が起きたとき、その経
済的措置として、一番早く「消費税0%」を中心とする提言をま
とめたのは、自民党内の若手グループ「日本の未来を考える勉強
会」で、二階幹事長に対して次の提言を行っています。それは、
次の5つから成る提言です。
─────────────────────────────
 1.50兆円規模の補正予算を編成し、財源には躊躇なく国債
   を発行してそれに充てること。なお、2025年のプライ
   マリーバランス黒字化目標は当分の間延期すること。
 2.被雇用者に対しては十分な休業補償をするとともに、事業
   者、特に中小企業及び小規模事業者(個人事業主を含む)
   に対しては、失われた粗利を100%補償する施策を講ず
   ること(特別融資だけでは不十分)。安心して休業できる
   ことは、有効な防疫対策にもなる。
 3.消費税は当分の間、軽減税率を0%とし、全品目軽減税率
   を適用すること(消費税法の停止でも可)。なお、消費税
   減税のタイミングとして6月を目指し、各種調整を速やか
   に行うこと。
 4.従来から存在するあらゆる制度も活用し、資金繰り支援等
   企業の廃業防止、国民の不安を払拭するために全力で取り
   組むこと。
 5.国土強靭化、教育・科学技術投資、サプライチェーンの再
   構築、特定国依存型のインバウンドの見直しなど、内需主
   導型の経済成長を促す政策を検討すること。
                  https://bit.ly/3cyRsdj ─────────────────────────────
 これに慌てたのが財務省です。「消費税0%」が掲げられてい
るからで、さっそく潰しに動きます。せっかく引き上げた消費税
にだけは絶対手を触れさせてはならじとして、安倍首相に対して
先手を打ったのです。それが、国民への現金給付です。麻生財務
相は、2009年のリーマンショック対策のとき、時の首相とし
て、この現金給付を手掛けたことがあるからです。安倍首相が当
初から消費減税には消極的で、現金給付にこだわったのは、麻生
財務相から国民への現金給付の提案を受けていたからです。そし
てその取りまとめを岸田政調会長に託したのです。
 本来であれば「消費税0%」こそ先にやるべきだったのです。
なぜなら、コロナ禍は、国難であり、国民に重くのしかかる消費
税を減税しなければ、本当に安部政権は、国民の「命を守り、生
活を守る」気はあるのかと疑われるからです。
 消費税率を変更するには法律の改正が必要であり、「時間がか
かる」といわれますが、現在食料品を中心に一部の品目にかかっ
ている軽減税率8%を0%にし、軽減税率を全品目に拡大するの
であれば、野党は反対しないので、早く成立させることができる
はずです。しかし、麻生財務相はそれをさせないため、現金給付
の容認姿勢を安部首相に示したのです。
 そのうえで、岸田政調会長に働きかけ、コロナ禍で収入が半減
した世帯に1率30万円のプランをまとめさせたのです。この案
は、複雑な条件が設定されているため、国民の約20%にしか適
用されず、政府支出が少なくて済むからです。財務省は国民の命
がかかっているのに、こんなゼニ勘定をしているのです。財務省
は国民の敵です。   ──[消費税は廃止できるか/072]

≪画像および関連情報≫
 ●自民若手が消費税ゼロ提言、なぜ?/安藤裕氏
  ───────────────────────────
   新型コロナウイルスの感染拡大にともなう「コロナ不況」
  が現実味を帯びる中、与野党から消費減税の可能性に言及す
  る機会が増えてきた。そんな中で、「減税」にとどまらず、
  消費税率を「ゼロ」にすべきだとする提言を2020年3月
  11日に打ち出したのが、自民党の若手議員らによる議員連
  盟「日本の未来を考える勉強会」。この勉強会は、元々消費
  税率10%への引き上げに反対するなど「党内野党」ぶりを
  発揮してきた。勉強会中心メンバーの安藤裕衆院議員に、提
  言の狙いを聞いた。(聞き手・構成:J−CASTニュース
  編集部 工藤博司)
  ――内閣府が3月9日に発表した19年10〜12月期の国
  内総生産(GDP)改定値が、物価変動を除いた実質で前期
  比1・8%減、年率換算で7・1%減でした。これは新型コ
  ロナウイルスによる影響を含んでいないので、20年1〜3
  月期は、さらに厳しい数字が出そうです。そういった中で発
  表された提言で、目玉は「消費税は当分の間軽減税率を0%
  とし、全品目軽減税率を適用すること」。5%への引き下げ
  を唱える野党はいますが、あえて「0%」を打ち出した理由
  を教えてください。
  安藤:2017年に立ち上げた我々のグループ「日本の未来
   を考える勉強会」は、消費税率を10%にはするな、5%
   に減税するべきだと、ずっと言い続けてきたんですね。
                  https://bit.ly/3ajckDJ
  ───────────────────────────

「自民党議員連盟『日本の未来を考える勉強会』」.jpg
自民党議員連盟『日本の未来を考える勉強会』

posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 消費税は廃止できるか | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス: [必須入力]

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

×

この広告は90日以上新しい記事の投稿がない ブログに表示されております。