な事態に陥っています。国際通貨基金(IMF)が14日に発表
した最新の世界経済見通しによると、2020年の世界全体の成
長率は「マイナス3%」と予測しています。これは、1929年
〜32年の大恐慌のさいの「マイナス10%」に次ぐものです。
世界恐慌以来、最悪の不況になるという予測です。主要国の20
20年の予測は次のようになっています。
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2019年 2020年(予想)
中国 6・1% +1・2%
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世界 2・9% −3・0%
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米国 2・3% −5・9%
日本 0・7% −5・2%
イタリア 0・3% −9・1%
──2020年4月15日付、朝日新聞
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世界経済のマイナス成長は、2009年のリーマン・ショック
直後の「マイナス0・1%」だけですが、「マイナス3・1%」
は深刻な数字です。しかし、この予測には前提があるのです。そ
れは、新型コロナウイルスの蔓延が2020年前半で峠を越すと
いう前提です。しかし、現在の情勢では、この前提はクリアでき
そうもないと考えられます。
この未曾有の感染症危機、経済危機に対する安倍政権の対応は
はっきりいって支離滅裂です。緊急事態宣言の発出も遅いし、し
かも休業補償などは一切なしの非常にインパクトの弱いものでし
かありません。事業規模108兆円の緊急経済対策も、総額に異
常にこだわり、中身は「張り子の虎」でスカスカです。おまけに
最大の売りであるはずの「30万円の現金給付」も、対象者を徹
底的に絞り込み、使い勝手は最悪です。手続きが面倒で、税理士
に頼んだり、あきらめる人まで出てくると思われます。そのため
党内からも批判を浴び、30万円給付の対象者を少し広げる修正
を行ったり、それとは別に「所得制限なしに一律10万円支給」
の実施を公明党から求められる始末です。
リーダーの真の力量は、今回のような国家的危機に瀕したとき
の危機対応能力によって判定されるものです。その点、小池東京
都知事は、何回も安倍首相に会って、国として何らかの休業補償
と一緒に緊急事態宣言を出して欲しいと要請したものの、首相が
聞き入れてくれないことがわかると、国が休業補償なしの緊急事
態宣言を発出すると同時に、東京都としての休業自粛要請に協力
してくれた事業者に対し、50万円〜100万円の「感染拡大防
止協力金」を給付することを発表しています。
これについて、緊急事態宣言の対象地域に指定された自治体は
「東京都はカネを持っているからできる」とブツブツいっていた
ものの、結局は、何らかの「感染拡大防止協力金」の支給を発表
しています。そういう意味において、小池都知事のリーダーシッ
プは安倍首相を上回っていると思います。
ところで、国は、なぜ休業補償に踏み切らないのでしょうか。
4月13日に行われた自民党役員会において、安倍首相は、休業
要請について、次のように述べています。
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さまざまな支援を用意したが、補正予算案の成立を急ぐことで
準備を加速させたい。休業に対して補償を行っている国は世界に
例がなく、わが国の支援は世界で最も手厚い。 ──安倍首相
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驚くなかれ「休業に対して補償を行っている国は世界に例がな
く、わが国の支援は世界で最も手厚い」といったのです。これは
おかしな話です。英国では、ジョンソン首相のテレビ演説によっ
て国民に呼びかけた外出禁止「ステイ・ホーム」によって、業種
を問わず、追い込まれた労働者、自営業者の所得の8割、上限約
33万円を当面3ヶ月補償しています。フランスでは、商店や零
細企業で「一時帰休」になった従業員に対し、給与の手取り分で
84%を補償しています。
西村コロナ担当大臣は、4月12日のNHKの「日曜討論」に
おいて、休業補償について次のように発言しています。
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事業者に対する損失補填とか、休業補償の枠組みは、諸外国、
我々もすべて当たりましたけども、そういう仕組みを取っている
ところは見当たりません。 ──西村コロナ担当相
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政府はどこを調べているのでしょうすか。ドイツでは、5人以
下の事業所で約180万円を一括支給しているし、前述の英国の
給与補償の対象者のなかには個人事業主も含まれ、所得の8割を
補償しています。
休業補償について、安倍政権の代弁役を務める田崎史郎氏は、
4月14日のTBSの『ひるおび』に出演し、安倍政権の考え方
について、次のように述べています。
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休業補償をやっていくと際限がなくなる。それがわかっている
から、世界各国どこも休業補償っていうのはやっていない。
──田崎史郎氏
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どうなっているのでしょうか。安倍首相のロジックは、「休業
補償なんかどこの国もやっていない。だから、日本もやらない」
というのですが、それでは、英国、フランス、ドイツが、現実に
やっている補償制度について、どう説明するのでしょうか。野党
には、その点をぜひ内閣に問いただして欲しいものです。安倍政
権は、何を勘違いしているのでしょうか。
──[消費税は廃止できるか/070]
≪画像および関連情報≫
●【コロナ禍】政府はなぜ休業補償に消極的なのか/「働かざ
る者食うべからず」の歴史的背景
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4月7日、「新型インフルエンザ等対策特別措置法(特措
法)」に基づき、東京を始めとする7都府県を対象に5月6
日までを期限とする緊急事態宣言が発令された。
欧米のメディアは一様に「感染拡大を抑制するには不十分
な措置である」と厳しい評価を下しているが、緊急事態宣言
を発令したことの成否は「どこまで人の動きを抑えられる」
にかかっている。
緊急事態宣言発令により、地方自治体は外出自粛要請と休
業要請が行えるようになる。このうち休業要請については、
罰則はないが要請に従わない企業名を公表することにより実
質的な強制力を発揮できることから、「人と人の接触を8割
減らす」という目標達成の切り札である。
だがその休業要請について、休業補償の是非を巡って国と
地方自治体が対立している。財政に比較的余裕がある東京都
を除く6つの府県知事は「休業要請と休業補償はセットであ
る」との態度を明確にし、これが認められなければ休業要請
を行わない構えであるのに対し、国は「休業補償は現実的で
はない」として応じる姿勢を示していない。自民党の有力若
手衆議院議員によれば、政務調査会の場で「休業補償を実施
すべきだ」と主張したところ「働かざるもの食うべからず」
という自己責任論を振りかざす議員が圧倒的多数を占め、賛
同者はほとんどいなかったという。国は「欧米でも休業補償
制度は存在しない」と説明しているが、英国やフランス、ド
イツでは実質的に休業補償が行われていると言っても過言で
はないだろう。欧州と日本の間の休業補償についての温度差
はどこにあるのだろうか。筆者は社会福祉に関する歴史的変
遷の違いがその背景にあると考えている。
https://bit.ly/2Vbh9ug
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田崎史郎氏