2020年04月13日

●「なぜ、デフレから脱却できないか」(EJ第5226号)

 EJの今回のテーマも今回で67回になり、そろそろしめくく
る時期になりつつあります。ところで今回のテーマは、2020
年1月6日から、次のテーマで、スターとしています。
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    どうしたら日本経済を成長させることができるか
    ── 消費税を廃止することは可能である ──
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 テーマの狙いは、「消費税を減税できるか/廃止できるか」を
論点にしたかったのです。次の衆院選は、来年、2021年9月
までに必ずありますが、そのときは、消費税の是非がメインテー
マになると判断したからです。
 安倍政権の経済政策、アベノミクスは、完全な失敗に終わって
います。どうしてでしょうか。それは、ズバリ、政権発足以来7
年を超える長期政権であるのに、安倍政権の重要な目的であるは
ずの「日本経済のデフレからの脱却」が実現できていないからで
す。それどころか、性懲りもなく、反省のかけらもなく、2回に
わたる消費増税を重ねて、デフレを一層深刻化させてしまってい
ます。おまけに、今年の2月頃から深刻化した新型コロナウイル
スの世界的感染の拡大によって、世界経済はドロ沼に落ち込もう
としています。もはや経済どころではなく、どうやって自分の命
を守るかがメインテーマになりつつあります。
 MMT(現代貨幣理論)のような経済理論を調べていると、経
済や財政に関する考え方が変わってきます。MMTの観点に立つ
と、これまで主流派といわれている経済学の考え方が、完全に間
違っているように見えてきます。物理学などの自然科学と違って
経済学は、経済に関する捉え方によって、経済政策のあり方が変
わってくるのです。
 井上智洋駒澤大学経済学部准教授は、MMTに関する自著の冒
頭で、次のように述べています。
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 平成の30年間は、失われた30年で終わりました。この時代
に私たちは、多くのものを失ってきました。デフレ不況とそれに
伴う政府支出の出し惜しみによって、少なからぬ国民が生活の安
定や人生そのものを失いました。
 企業はイノベーションカを、大学は科学技術カを、家計は消費
意欲を、若者はチャレンジ精神をそれぞれ失いました。我が国の
国力衰退は、目を覆わんばかりです。
 この国を再興するには、デフレ不況からの完全な脱却を果たす
以外にありません。そのためには、「拡張的財政政策」を大々的
に実施する必要があります。「拡張的財政政策」というのは、税
金を減らして財政支出を増やすことです。そうすると政府の借金
は増大します。ですが、財政の拡大なくして、デフレ不況からの
脱却はありません。
 それを怠ったために失われた10年は、20年となり、30年
近くにまで延長されました。それにもかかわらず2019年10
月に消費税が増税され、政府支出の出し惜しみも続いています。
デフレ不況という長く暗いトンネルの出口には、まだたどり着け
そうもありません。             ──井上智洋著
    『MMT/現代貨幣理論とは何か』/講談社選書メチエ
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 井上准教授の指摘は核心を衝いています。解決策は実にシンプ
ルです。デフレ不況から脱却するには、コロナウイルスの感染拡
大を奇貨として、経済的な手当として、10%まで引き上げた消
費税の税率を元に戻し、財政支出を増やすしかないのです。増税
ではなく、減税をすべきだったのです。それでいて法人税の減税
はやっており、大企業に媚を売っています。やり方が、完全に間
違っています。財政の拡大なくしてデフレからの脱却はないし、
これを達成せずして、日本経済を復活させることは不可能です。
 しかし、問題は、これほどの失敗を重ねても、安倍政権は、自
らの失敗を認めようとはしていないことです。安倍政権は、経済
運営の失敗をすべてコロナウイルスの感染拡大のせいにしようと
していますが、これはとんでもないことです。
 2020年4月8日、安倍首相は、非常事態宣言は発出し、記
者会見を行っています。法律上は、非常事態宣言の発出後、実施
権限は自治体の長に移っています。担当する自治体の長は、担当
の自治体の状況に応じて、政策を実施できるのです。
 しかし、どの範囲まで休業要請の幅を広げるのかについて、政
府と東京都との間に見解の相違があり、最終決定までにゴタゴタ
したのです。2週間ほど様子を見て、拡大の幅を確定すべきとす
る西村経済再生担当相に対して、小池東京都知事は、「危機管理
の要諦として、はじめにドカーンと厳しい施策を打ち出し、経過
を見て少しずつ緩めていくべき」と主張し、対立したのです。そ
れに加えて、休業補償に後ろ向きの政府に対して、東京都は独自
の休業実施への協力金を支払うと宣言し、ここでも意見の違いを
見せたのです。休業補償について、安倍首相は次のようにいって
います。
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    個別の損失を直接補償するのは現実的ではない
                   ──安倍首相
─────────────────────────────
 この政府と東京都知事との意見衝突は話し合いがついたものの
このやり取りは、全面的に小池都知事の方が正しいし、さすがに
防衛相の経験者だけのことはあると感心したしだいです。太平洋
戦争の失敗にみられるように、戦力の小出しの逐次投入は、最悪
の結果を招くだけです。本当に首相が望むように外出制限の80
%の達成を期するのであれば、国としてきちんと休業補償をつけ
て、その確実性を狙うべきです。なぜ、その程度の財源を渋って
いるのでしょうか。事態がもっと深刻化すればやらざるを得なく
なると思いますが、それではもはや手遅れなのです。
           ──[消費税は廃止できるか/067]

≪画像および関連情報≫
 ●【休業補償】国は公平な仕組み検討を/高知新聞社説
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   新型コロナウイルスの感染拡大を食い止めるため、緊急事
  態宣言にどう実効性を持たせるか。感染の終息後に回復でき
  るだけの力を国民経済にどう与えるか。政府は整理し直すべ
  きではないか。感染が急拡大する東京都が新型コロナ特措法
  の緊急事態宣言を受けた休業要請に踏み切った。対象業種・
  施設は大学や学習塾、劇場や映画館、美術館、ナイトクラブ
  バー、パチンコ店など幅広い。
   要請に応じた中小事業所には「感染拡大防止協力金」とし
  て単独店舗事業者は50万円、複数店舗を持つ事業者には、
  100万円を支給する。国内で最も状況が悪化している首都
  の封じ込め策が奏功するかどうかは、他の自治体にも影響し
  よう。特措法には休業要請に伴う補償の規定はないが、これ
  までの外出自粛要請でも既に大きな打撃を受けている事業主
  は多い。休業要請があっても、やむにやまれず営業を続けて
  は感染抑止の効果は薄くなる。
   法的裏付けがある休業要請をしておきながら、損失は自己
  責任というのは事業主に酷に過ぎる。東京の50万〜100
  万円が十分な額かどうかは不明にしても、行政による損失補
  償は当然である。疑問が残るのは政府と都の調整が難航し、
  宣言から3日を要したことだ。休業要請に前向きな都に対し
  政府は当初、外出自粛要請の効果を見極めるべきだとして、
  2週間程度見送るよう求めた。  https://bit.ly/3aYOIFG
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西村経済再生担当相/小池東京都知事.jpg
西村経済再生担当相/小池東京都知事

posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 消費税は廃止できるか | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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