2020年04月10日

●「事業規模にこだわる緊急経済対策」(EJ第5225号)

 新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、政府は、4月7日に
緊急事態宣言を出すとともに、過去最大となる事業規模108兆
円の緊急経済対策を決定し、発表しました。緊急事態宣言の対象
地域は、東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県、大阪府、兵庫県、
福岡県の7都府県です。
 事業規模108兆円といえば、GDPの約2割に相当する今ま
でにない規模です。この緊急経済対策を実行するため、政府は追
加の歳出が総額で16兆8057億円に上がる今年度の補正予算
案を固めています。年度の当初に補正予算案を編成することは異
例なことです。財源はどうするのでしょうか。
 必要な財源は、全額、追加の国債で賄う方針で、内訳は次のよ
うになっています。当初予算と合わせた2020年度の国債発行
額は49兆3619億円になります。
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    ◎補正予算公債金
     赤字国債 ・・・・ 14兆4767億円
     建設国債 ・・・・  2兆3290億円
              ──────────
               16兆8057億円
    ◎当初予算公債金
     赤字国債 ・・・・ 25兆4462億円
     建設国債 ・・・・  7兆1100億円
              ──────────
               32兆5562億円
    ◎公債金合計     49兆3619億円
─────────────────────────────
 今回の経済対策は一見すると超大判振る舞いに見えます。確か
に、リーマンショック後の2009年4月に麻生内閣が実施した
経済対策の事業規模56・8兆円の約2倍ですし、GDPの2割
相当というのはとんでもない巨額な金額であることは確かです。
 しかし、この「最大級」はいささか疑問です。安倍首相はかな
り早い段階からこのGDP2割にこだわっていたといいます。そ
れは、首相がドイツの経済対策を意識していたからです。ドイツ
は、7500億ユーロ(約90兆円)規模の経済対策を既に実施
していますが、これがGDP比で約2割に該当するのです。
 そのため、今回の経済対策の事業規模には、あれもこれも何で
もかんでも注ぎ込んで、意識的にGDPの2割にしたフシがあり
ます。2019年末に決めた経済対策での未執行分や、既に発表
済みの感染対策でまだ実施されていなもの、後から返済を求める
融資などの金額も上乗せし、それに納税や社会保険料支払いの猶
予分の26兆円まで加えて、やっとGDPの2割にしているので
す。安倍首相にとっては、経済政策の中身や使い勝手ではなく、
「2割」という規模にこだわったようです。「やってる感内閣」
の面目躍如といったところです。
 それでいて、事実上閉店を強制されているレストランなどの飲
食店や、バー、クラブなどの店舗の休業補償については、頑なに
応じようとしないのです。その点、ドイツでフリーランスの仕事
をしているある日本人が、ルールにしたがってメールで休業補償
の申請をしたところ、3日で現金が振り込まれたといいます。と
にかくドイツは、金額も巨額であるし、スピードも非常に早いの
です。それに対して日本は、金額についてはこだわったものの、
スピードに関しては知らん顔です。
 政府のドタバタぶりもひどいものです。なかでも「減収世帯へ
の30万円支給」については、あまりの評判の悪さに自民党の総
務会で、早くも「一率で現金を配るべきだった」と反省の声が出
ていますが、安倍首相は「全世帯一率現金給付」は、配付に3ヶ
月以上時間がかかり、実効性がないの1点張りで、まったく聞く
耳を持たないという姿勢です。
 いずれにせよ、公債金の総額が約50兆円になろうとも、80
兆円になろうとも、100兆円になろうとも、MMTの考え方に
立てば、財政出動は何も問題はないのです。それでは、ただでさ
え巨額になっている政府の借金が激増してしまうということが心
配であれば、こういうときこそ、政府紙幣を発行することを検討
すべきです。
 政府紙幣については、2月20日のEJ第5191号で述べて
いますが、これ以上政府の借金を増やしたくないというのであれ
ば、こういう方法も使えます。法律の改正が必要になりますが、
国会で堂々と議論して発行すべきです。https://bit.ly/2wobEz5
 新型コロナウイルス蔓延関連の経済対策として、神奈川県の黒
岩知事は、4月7日に、次の趣旨の発言をしています。
─────────────────────────────
 神奈川県の黒岩祐治知事は7日、新型コロナウイルスの感染拡
大の影響で内定を取り消された人や、職を失った人らを、任期付
き職員として臨時雇用する規模について、100人程度とする方
針を明らかにした。
 県人事課によると、2021年3月末までを任期とした非常勤
の雇用を想定している。任期中に新しい職を探してもらう狙いと
いう。公務員試験を受ける必要はなく、面接試験を中心に実施す
る見込みだ。黒岩知事は「優秀な方はそのまま県庁職員に登用す
る道もつくりたい」と述べた。
          ──2020年4月7日付、日本経済新聞
─────────────────────────────
 これは、MMTの「雇用保障プログラム」(JGP)の考え方
に似ています。今回の新型コロナウイルスの感染拡大によって内
定を取り消された人が大勢いるそうですが、そういう人を自治体
が任期付きで臨時雇用し、任期中に職探しをしてもらうというも
のです。大変良いことであるし、これによって救われる人は多い
と思います。これを国家レベルでやるのがJGPですが、実施す
れば、経済回復に大きく貢献するはずです。
           ──[消費税は廃止できるか/066]

≪画像および関連情報≫
 ●なぜ感染拡大の収束後の話ばかりが充実しているのか
  ───────────────────────────
   新型コロナウイルスの感染拡大を受けた緊急経済対策につ
  いて、政府は4月6日に開かれた自民・公明両党の会議で、
  所得が減少した世帯への現金30万円の給付や、児童手当の
  上乗せなどを行う案を示しました。しかし、この緊急経済対
  策案は、いくぶん理解しがたい部分があります。
   4月6日に開かれた自民党と公明党との会議で、政府は新
  型コロナウイルスの感染拡大を受けた緊急経済対策の案を提
  示しました。治療薬として効果が期待される「アビガン」を
  年度内に200万人分の備蓄を目指すことなどを盛り込んだ
  「感染拡大防止策と医療提供体制の整備及び治療薬の開発」
  や、1世帯あたり30万円の現金給付などの「雇用の維持と
  事業の継続」についての対策が明らかにされました。
   しかし、この案には明確な金額など規模が示されておらず
  中小および小規模事業者などを対象にした給付金についても
  明示されていませんでした。「緊急」対策と言う割に、具体
  的な記述が少ないのです。
   この緊急経済対策案を通して読んでみると、曖昧な部分と
  明示されている部分の差が大きく、バランスの悪いものにな
  っているように感じられました。これを読んだある地方自治
  体の経済担当職員は、「非常に細かく書き込まれている部分
  と、粗々で内容がほとんどない部分の差が激しい。
                  https://bit.ly/3bYwFPW
  ───────────────────────────

「緊急経済対策」を発表する安倍首相.jpg
「緊急経済対策」を発表する安倍首相
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 消費税は廃止できるか | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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