2020年04月09日

●「なぜ全員一律に現金給付しないか」(EJ第5224号)

 新型コロナウイルスの蔓延による政府の緊急経済対策の一つで
ある「一世帯30万円の現金給付」が、本稿執筆時点の7日朝の
時点で、自民党と公明党がまだモメています。公明党は、かなり
早い段階で自民党に対し、「国民一律10万円の現金給付」を申
し入れており、それを全国の組織に流してしまっているのです。
ところが、それが厳しい条件付きになったので、全国の組織から
突き上げを食って、困惑しているといわれます。
 「国民全員に現金を配付する」というのは、MMTとも深く関
係するので、今回、取り上げることにします。結論からいうと、
今回の現金給付案は、財務省に牛耳られている自民党首脳部の非
常にケチくさい政策案であり、これはおそらく経済的にも、政治
的にも与党にとってマイナスでしかない政策になると思います。
以下、詳しく見ていくことにします。
 一番問題なのは、条件が厳し過ぎることです。そもそもどうい
う世帯に30万円が給付されるのかというと、その支給対象は、
次のようになっています。
─────────────────────────────
◎一世帯30万円の支給対象
 今回の新型コロナウイルス蔓延の影響で、収入が5割程度下が
るなど急減した世帯で、それによって年収が、個人住民税(均等
割)非課税の水準になるか、個人住民税非課税水準の2倍以下に
なる世帯が条件。これに該当する世帯は、それを証明する書類を
もって、自治体に自己申告することが必要になる。
─────────────────────────────
 これは非常に厳しい条件です。まず、収入が5割程度減ったこ
とをどのように証明するのかです。自分が対象になるかどうか、
わからないので、おそらく市区町村の受付窓口には、その問い合
わせのため、人が殺到し、そこに「3密/密閉・密集・密接」空
間ができてしまう可能性が十分あります。
 要するに、今回の新型コロナウイルスの影響で所得が半減して
も、それによって住民税非課税水準にならないと支給されないと
いうことになります。給与所得者の場合、個人住民税非課税水準
の2倍以下になる世帯ならOKという一定の救済措置はあるもの
の、きわめて複雑な条件ということになります。
 この厳しい条件に該当する世帯は、全5800万円世帯のうち
約1000万世帯になりますが、1000万世帯に30万円を配
付しても、たったの3兆円です。あまりにもケチくさい政策であ
ると思います。今回の経済対策をまとめた岸田文雄政調会長は、
財務省寄りの増税派で、強いリーダーシップもないので、どうし
てもこういうぬるい政策になってしまうのです。この人が経済政
策をまとめるトップである限り、消費税の減税など、とても実現
できそうもありません。
 上武大教授で、経済学者の田中秀臣氏は、今回の条件付き現金
給付案について、次のように問題点を指摘しています。
─────────────────────────────
 フリーランスや自営業者などの場合、ここ2ヶ月で所得が減少
したと書類で証明することも難しい。市区町村の窓口で、自己申
告するにも、審査の段階での混乱も予想される。このままでは、
日本経済は大きく減速したままになる。    ──田中秀臣氏
             2020年4月4日発行、夕刊フジ
─────────────────────────────
 テレビ朝日の羽鳥慎一モーニングショーで、コメンテーターを
務める玉川徹氏は、現金給付には、スピードが何よりも大事であ
るとして、次のようにコメントしています。
─────────────────────────────
 日本以外の国では、誰彼を問わないで(現金を)全員に配ると
いうようにやっているところがある。なぜそういうことをやって
いるかって言ったら、それがいちばん早いからなんですよね。
 また、ここで優先順位ですけど、この現金給付で優先順位でい
ちばん高いのは、スピードです。とにかく早く出すってことが重
要なんです。足りなかったらまた出せばいいだけの話ですから、
スピードがいちばん大事なんですね。
 そこで所得制限してみたり、それに対する申請を、どういうよ
うにするかとか考えてる前に、配っちゃえばいいんですよ、まず
足りなかったらまた配ればいいだけで・・・。だから、ここでも
また優先順位を取り違えている。        ──玉川徹氏
                  https://bit.ly/39Lu6z1 ─────────────────────────────
 このように主張する玉川徹氏に対し、4月7日の羽鳥愼一モー
ニングショーにおいて、ジャーナリストの田崎史郎氏は、玉川氏
に対し、全国民一律に現金を配付するにはかなりの時間がかかる
と反論しています。この田崎史郎なる人物は、かねてから、政府
の意向を代弁することで批判されていましたが、最近テレビ局で
は、逆に政府側のスタンスを聞くために、田崎氏の出演を求める
ようになっています。本人もそのつもりで出演しています。
 「全世帯にマスクが届くのであれば、現金も届けられるのでは
ないか」という玉川氏に対し、国民の住所を把握しているのは自
治体であり、マスクと違って現金を届けるには、どうしても時間
がかかると反論したのです。
 2008年のリーマン・ショックのときは、麻生政権でしたが
全国民に1万2000円(18歳以下2万円)を届けています。
しかし、このときも配付に相当時間を要し、しかもその大半が貯
蓄に回されたという批判があったといいます。田崎史郎氏による
と、今回自己申告制にしたのは、このやり方が一番早く現金を必
要とする人に届けられるからであると主張しています。
 いずれにしても全員給付でない限り、もらえない世帯からは、
不公平であるとの反発が出るのは必至であり、まして所得制限の
複雑さによって、本来支給されるべき人にも現金が届かなかった
ら、政府の措置としては最悪になります。
           ──[消費税は廃止できるか/065]

≪画像および関連情報≫
 ●新型コロナ経済対策、総額108兆円/7日閣議決定
  ───────────────────────────
   安倍晋三首相は6日、新型コロナウイルスの感染拡大を受
  け、総額108兆円規模の緊急経済対策を実施すると発表し
  た。国内総生産(GDP)の2割に相当し、事業規模は過去
  最大。首相は「経済に与える甚大な影響を踏まえ、過去にな
  い、強大な規模となる対策を実施する」と述べた。7日に対
  策に必要な経費を盛り込んだ2020年度補正予算案を閣議
  決定し、大型連休前の成立を目指す。
   政府はリーマン・ショック後の09年4月に策定した事業
  規模56兆8000億円を大幅に上回る対策を実施し、経済
  の悪化を最小限に食い止めたい考えだ。
   108兆円のうち、収入が大幅に減少し、住民税が非課税
  となる水準まで落ち込んだ低所得者世帯や、中小・個人事業
  者らへの現金給付は6兆円超を予定。対象世帯には30万円
  売り上げが急減した中堅・中小企業には200万円、フリー
  ランスなど個人事業者には100万円を支給する。税金や社
  会保険の納付猶予は26兆円規模を想定。20年度補正予算
  案で、新型コロナウイルス感染症対策として、新たに1兆円
  以上の予備費も計上する。児童手当は子ども1人当たり1万
  円を上乗せする。
   民間企業の資金繰り支援策として、中小企業が民間金融機
  関から「実質無利子・無担保」で融資を受けられる制度を創
  設。中堅・大企業向けは、日本政策投資銀行などの融資を活
  用する。            https://bit.ly/2Vc18Dv
  ────────────────────────

玉川徹氏.jpg
玉川徹氏


posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 消費税は廃止できるか | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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