2020年03月26日

●「『雇用保障プログラム』とは何か」(EJ第5214号)

 MMTが、経済政策の中軸に据えている「雇用保障プログラム
(JGP)」とは、具体的に何でしょうか。
 すべての経済政策の目的は、「国民の幸福の確保と拡大」にあ
ります。重要なのは、それを左右するのが「失業率の低減」であ
ることです。多くの不幸の原因は「貧困」にありますが、その多
くは、「失業」によってもたらされるからです。
 添付ファイルをご覧ください。2つのグラフがありますが、上
のグラフを見てください。これは1978年から2018年まで
の「自殺者数の推移」をあらわしています。
 グラフのスタート時点の自殺者は、年間約2万人です。総数の
推移を目で追っていくと、バブルが崩壊した1990年頃から自
殺者はゆるやかに増加していることがわかります。
 1997年には自殺者は約2万4千人になり、デフレに突入し
た1998年には3万2千人に跳ね上がっています。それ以来約
10年間、3万2千人のレベルに高止まりしています。これが下
落をはじめるのが2010年以降です。この頃から雇用状況は少
しずつ改善をはじめ、安倍政権になってから、失業者は大きく減
少すると、2018年頃には、1978年当時の2万人のレベル
までまで減少しています。不況は自殺者を増やすのです。
 続いて下のグラフを見てください。これは賃金の推移をあらわ
しています。2015年を100として設定しています。バブル
崩壊後の1990年以降も賃金は伸びていますが、デフレのはじ
まる1998年以降、一貫して低下しています。
 「名目賃金」とは、給料などの額面をあらわし、「実質賃金」
は、名目賃金の物価に対する割合をあらわしています。平成のは
じまりは1989年ですが、以来30年間、実質賃金は一貫して
下落しています。実質賃金の低下は、給料で購入できるものの量
が減ったことをあらわしており、それだけ貧乏化が進んだことを
意味します。主要国でこんな異常事態になった国は日本のみ。日
本は経済政策を完全に間違っているのです。それを端的にあらわ
しているのは次の事実です。
─────────────────────────────
      ◎一人当たり名目GDP
       2000年 ・・・・・  2位
       2017年 ・・・・・ 25位
─────────────────────────────
 それでは、JGPとは、どのようなプログラムでしょうか。藤
井聡京都大学大学院教授は、次のように説明しています。
─────────────────────────────
 失業者が一定以上存在するような状況において、公務員を増や
したり公共投資などを行って雇用を生み出し、失業者がいない完
全雇用を目指すと同時に、政府が設定した最低賃金を実現させる
ことを目指す政策である。したがって、JGPはこれまで雇用保
障プログラムや、就労保障プログラム等と呼ばれてきたが、ここ
では、そのJGPが賃金水準の確保も明確に視野に収めたもので
あることから「就労・賃金保証」プログラムと呼称する。
                   ──藤井聡著/晶文社
   『MMTによる令和「新」経済論/現代貨幣理論の真実』
─────────────────────────────
 この「就労・賃金保証」プログラムは、1929年の世界大恐
慌のさい、米国は「ニューディール政策」として行っています。
このニューディールという言葉は、「新規まき直し」という意味
の思い切った経済政策のことをいいます。
 このプログラムは、政府が「最後の雇い手」としての役割を担
い、民間では雇ってくれない人々を対象とし、政府が直接的な雇
い手となり、完全雇用を目指します。世界ではじめて、ジョン・
メイナード・ケインズの理論を取り入れた経済政策ともいわれて
います。この「最後の雇い手」という言葉ですが、資金不足に陥
った銀行が、他の銀行からお金を借りることができなくなったと
きに、中央銀行が「最後の貸し手」としての役割を果たすという
ことになぞらえています。
─────────────────────────────
  ◎最後の貸し手  Lender of Last Resort  ELR
  ◎最後の雇い手 Employer of Last Resort  LLR
─────────────────────────────
 大恐慌のさいは、大規模な治水事業や道路事業を展開し、全国
で1300万人もの人々を雇用しています。このさい、政府が作
り出す就労機会の賃金はどのように設定されるのかというと、政
府が想定する「最低賃金」になります。最低賃金のレベルは、普
通に生活をしていける最小必要限のレベルに固定されます。そう
することによって、それ以下の賃金で働いている、ブラック企業
の労働者に転職を促し、吸収できます。そうなると、そういうブ
ラック企業では働き手が奪われていき、労働賃金を上げることに
よって、脱ブラック化が進むことになります。
 もし、景気が回復すると、当然のことながら、より高い賃金を
保証する民間企業が増えるので、労働者はそのような企業に転職
して行くことになります。これについて、井上智洋教授は次のよ
うに説明をしています。
─────────────────────────────
 政府がJGPで雇用する労働者の賃金は、「基本的公共部門賃
金」と言われています。ここでは、たんに「基本賃金」と呼ぶこ
とにします。仮に、JGPの賃金を時給1500円と決定したと
しましょう。そうすると、民間企業では、1500円以上の時給
に設定しないと、労働者を雇用することはできません。コンビニ
でのバイトの時給が1200円だったら、労働者はそのバイトを
辞めてJGPのほうに参加することでしょう。したがって、基本
賃金は、事実上最低賃金になるのです。    ──井上智洋著
    『MMT/現代貨幣理論とは何か』/講談社選書メチエ
─────────────────────────────
           ──[消費税は廃止できるか/055]

≪画像および関連情報≫
 ●MMTの雇用保障プログラムが目指すものとその限界
  ───────────────────────────
   ネット界隈では非主流派経済学の一つMMTは、しばらく
  話題になりそうだ。毎日新聞のコラムで取り上げられている
  し、日経新聞でも紹介された。しかしメディアではまだMM
  Tの柱の一つ、雇用保証プログラム(JGP)について注目
  されていない。MMT教祖たちの長い議論でもはっきり言及
  されているので、これを無視してMMTは理解はできない。
   このように書くと、なにやら壮大な仕掛けな気がするが、
  JGPの概要の説明は難しくない。政府や地方自治体が最低
  賃金で雇用を用意し、望む全員に提供するというものだ。M
  MT教祖は、総需要管理政策で雇用を増やすのではなく、J
  GPによってルーズな完全雇用をインフレなしで実現すると
  している。           https://bit.ly/2vKQtXF
  ───────────────────────────
 ●グラフの出典/──井上智洋著の前掲書より

自殺者数の推移と名目賃金指数・実質賃金指数の推移.jpg
 自殺者数の推移と名目賃金指数・実質賃金指数の推移
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 消費税は廃止できるか | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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