2020年03月24日

●「金融政策は有効ではない/MMT」(EJ第5212号)

 MMTが主流派経済学と異なる3つの論点をさらに再現するこ
とにします。
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       1.   財政的な予算制約はない
     → 2.   金融政策は有効ではない
       3.雇用保障プログラムを導入せよ
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 このうち、「1」については説明が終わっているので、「2」
の「金融政策は有効ではない」について考えます。
 MMTの経済学者であるポスト・ケインジアンは、主流派経済
学派のニュー・ケインジアンが信奉する金融政策の有効性につい
ては否定的です。厳密にいうと、よって立つ貨幣供給理論が異な
るのです。
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   ニュー・ケインジアン ・・ 外生的貨幣供給理論
   ポスト・ケインジアン ・・ 内生的貨幣供給理論
      ──井上智洋著『MMT/現代貨幣理論とは何か』
                     講談社選書メチエ
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 難しい経済学の理論はやめてごく簡単にいうと、上記の2つの
貨幣供給理論の違いは、中央銀行の金融政策によって世の中に流
通するお金の量(貨幣量)をコントロールできるかどうかにあり
ます。コントロールできるという主流派のニュー・ケインジアン
に対して、コントロールできないとするポスト・ケインジアン、
すなわち、MMTが対立しているわけです。
 そもそも金融政策とは、物価の安定を通して日々の暮らし、す
なわち経済が、健全に発展するよう金融を調整することであり、
中央銀行がその役割を担っています。日本の場合は、日本銀行、
ユーロ圏は欧州中央銀行(ECB)、米国は連邦準備理事会(F
RB)が中央銀行です。
 日銀とECBはの場合、その目的は、物価の安定を図ることと
金融システムの安定を確立することですが、FRBの場合、物価
と金融システムの安定に加えて、完全雇用の達成も政策の目的に
加えています。ここで「完全雇用」というのは、失業者がゼロに
なる状態ではなく、働く意欲と能力のある人が、その時の賃金水
準ですべて雇われている状態のことです。
 ところで「景気が良い」というのは、どういう状態をいうので
しょうか。これについて、法政大学大学院政策創造研究科教授の
真壁昭夫氏は、次のように説明しています。
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 世界の主要な中央銀行は、1年間で2%の物価の上昇率が物価
を安定させつつ経済が持続的な成長を実現するために適している
と考えています。日銀も、2%の物価目標の実現を目指していま
す。この2%(消費者物価指数の前年同月比で見た変化率)とい
う数字の根拠に関しては、様々な議論があります。
 まず、物価上昇率が年間プラス2%ということは、物価が上昇
しているということです。物価が上昇しているということは、需
要(人々がモノをほしいと思う気持ち)が高まっているというこ
とです。これは、経済の成長に欠かせません。多くの国の中央銀
行が2%の物価上昇率を目指すことは、グローバルスタンダード
だとしています。経験則として、1%の物価上昇率よりも2%の
物価上昇率を目指したほうが、長い目線で経済の安定を目指し、
景気が減速した際の対応も進めやすいとの見方が多いです。各国
の中央銀行は、人々が安定した経済環境の中で、お金の価値に不
安を感じることなく、成長を享受していくためには2%の物価上
昇率が適していると考えています。      ──真壁昭夫著
   『MMT(現代貨幣理論)の教科書/日本は借金し放題?
       暴論か正論かを見極める』/ビジネス教育出版社
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 日本は、安倍政権の2013年4月から、日銀が「2年間で2
%の物価上昇を実現する」ことを強くコミットして、異次元金融
緩和政策(量的質的金融緩和)を展開していますが、7年にもな
る現在も、目標を達成できていません。何かが間違っているので
す。その反動として、現在、クローズアップしてきているのがM
MTです。
 添付ファイルとして、「わが国の消費者物価指数の推移」のグ
ラフを付けていますが、これは真壁昭夫教授の本に出ていたもの
です。同じようなグラフを3月18日のEJ第5209号でもつ
けています。今回のグラフは、生鮮食品を除いたコアCPIと、
それに加えてエネルギーを除いたコアコアCPIの両方が出てい
るのでわかりやすいと思います。これについて、真壁昭夫教授は
次のように解説しています。
─────────────────────────────
 エネルギーや生鮮食品の価格は、天候や原油価格の動向に左右
されます。それを含んだCPI総合は、上下に振れを伴いつつも
前年同月比でみた場合に安定的に2%程度の水準を維持できてい
ません。なお、2014年のCPIの上振れは、消費税率の引き
上げの影響によるものです。また、コアCPI、コアコアCPI
は、前年同月比1%の上昇率を維持することも難しいのが、実情
です。             ──真壁昭夫著の前掲書より
─────────────────────────────
 これでわかったことがあります。金融政策には限界があるとい
うことです。7年やっても目標が達成できないということは、や
り方が間違っているのです。そういう意味でアベノミクスは、日
銀の金融政策に頼り過ぎであり、その一方で2回にわたって増税
をして、経済成長の足を引っ張っています。
 物価上昇率が2%ということは、経済が成長している──需要
が高まっていることを意味します。つまり、MMTでは、そのた
めにこそ、積極的な財政出動が必要であると説いているのです。
           ──[消費税は廃止できるか/053]

≪画像および関連情報≫
 ●骨太解説「日本の金融政策」がかくも無力なワケ
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   現在、日本はじめ世界の先進諸国は一様に異常な経済状況
  に直面している。ゼロないしマイナスの金利、天文学的とも
  言うべき金融の量的緩和にもかかわらず、多くの経済はいま
  だ力強い回復を取り戻せていない。
   なぜバブル崩壊後の経済が長期不況に苦しまなければなら
  ないのか。なぜ伝統的な金融政策はそうした不況に対して総
  じて無力なのか。なぜ財政赤字が拡大しているのに長期金利
  が低下するのか。
   こうした疑問に答える書として、リチャード・クー氏の新
  刊『「追われる国」の経済学』が高い評価を受けている。経
  済学の重鎮である藪下史郎氏が、クー氏が展開している経済
  理論の本質について読み解く。
   『「追われる国」の経済学』(以下、本書)で展開される
  議論の基礎となるクー氏の日本経済の捉え方は、以下のよう
  にまとめることができるだろう。
   資金の主たる借り手は民間企業であるが、高度成長期にお
  いては設備投資のための資金需要が旺盛であり、とくにアメ
  リカなどの先進国の後を追う形で投資を拡大するため資金需
  要も増加した。そのときには物価・賃金も上昇してきた。こ
  の期間のことを黄金時代と呼んでいるが、日本は成熟経済で
  あった。しかし、物価・賃金の上昇と新興国による追い上げ
  によって、日本経済の国際競争力が低下し、市場が奪われる
  ことになる。          https://bit.ly/3a9h2ob
  ───────────────────────────
 ●グラフの出典/──真壁昭夫著の前掲書より


わが国の消費者物価指数の推移.jpg
わが国の消費者物価指数の推移




posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 消費税は廃止できるか | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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