ようになります。この図は、井上智洋駒澤大学准教授の本に出て
いたものです。添付ファイルを見てください。
現代の経済学の中軸は「ケインズ主義」、すなわち、ケインズ
経済学です。これには、次の2つがあります。
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1.ニュー・ケインジアン ・・ 主流派経済学
2.ポスト・ケインジアン ・・ 非主流派経済学
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経済学を明確に分類することは容易なことではありませんが、
MMTの位置づけを明確にするするため、井上准教授の本を参考
にして、大ざっぱに述べることにします。
軸の右に「新古典派経済学」があり、それは小さな政府を目指
す市場経済をベースにする経済学です。市場はその調整メカニズ
ムにまかせていれば、基本的には円滑に機能するばずであり、政
府が介入する必要はないと考える傾向の強い経済学です。これに
対して、軸の左には「マルクス経済学」があり、それは大きな政
府を目指す計画経済をベースとしています。
「ニュー・ケインジアン」は、やや右寄りのポジションに位置
しており、資本主義にも肯定的であり、そのため、「ケインズ右
派」といわれます。現在、主流派経済学といわれている経済学は
これを指しています。
これに対して「ポスト・ケインジアン」は、マルクス経済学も
部分的に取り入れており、資本主義にもそれほど肯定的ではなく
「ケインズ左派」と位置づけられます。これは、マルクス経済学
も含め、非主流派経済学といわれます。MMTは、こちらに属し
ています。
しかし、経済学は、基本的には科学のようにどれが正しいとは
いうことができず、その違いは、考え方、捉え方の差であるとい
うことができます。これについて、井上准教授は、こういう学問
分野での部族争いについて、次のように述べています。
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このように、経済学者は派閥に分かれてたがいに争い合う傾向
が高い人たちです。他の学問分野では類を見ないほど派閥争いが
盛んで、私はそれを「部族ごっこ」と呼んでいます。経済学者に
は原始的な本能を宿した人が多いのか、すぐに部族ごっこが勃発
してしまうのです。それが経済学の面白いところではあるのです
が、党派性にこだわるというのは、学者としてのあるべき姿では
ありません。学者たるもの、仲間意識や敵愾心に惑わされずに、
何が真実であるのかを徹底して考え抜くべきでしょう。(中略)
MMTが提起する議論は、それが正しいにせよ、間違っている
にせよ、日本の経済学者にとって、いまもっとも重要なテーマと
言えます。なにしろ、政府は借金を増やすべきか、減らすべきな
のかといった大問題に関わってくるからです。
──井上智洋著『MMT/現代貨幣理論とは何か』
講談社選書メチエ
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どのような経済学にせよ、ひとつでパーフェクトなものはない
はずです。それなら、互いに良いところを取り入れ、パーフェク
ト化を図るべきですが、どうしても、イデオロギー論争のように
なってしまうのです。
そのため、現在のように、MMTがマスコミに取り上げられ、
脚光を浴びると、主流派のポスト・ケインジアンたちは、ろくに
MMTを十分調べようとせず、生半可な知識でMMTを「ブード
ゥー経済学」などと侮辱し、全力で叩き潰そうとします。ネット
上にはそういう論説で溢れています。
MMTが主流派経済学と異なる論点として、井上准教授は次の
3つを上げています。
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1. 財政的な予算制約はない
2. 金融政策は有効ではない
3.雇用保障プログラムを導入せよ
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上記の3点について、ほとんどの主流派経済学者はすべて反対
の立場をとります。しかし、井上准教授は、3点について自身の
立場を次のように明らかにしています。
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私自身は、@「財政的な予算制約はない」については賛成であ
り、A「金融政策は有効ではない」と、B「雇用保障プログラム
を導入せよ」については、頭ごなしに否定するわけではないけど
かなりの違和感や疑問があるという立場です。つまり、私もMM
Tに全面賛成ではありません。それでも、すでに述べたとおり、
現在の日本経済という文脈では、@「財政的な予算制約はない」
はとても重要な論点だと捉えており、本書のような書籍を執筆し
ているわけです。 ──井上智洋著の前掲書より
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@に関しては、MMTは自国通貨建て国債のみを発行している
国の政府にとって、財政的な予算制約はないという意味です。し
かし、すべての経済は、生産と需要については一定の限界という
ものがあり、その限界とは「インフレ率」のことです。つまり、
過度のインフレにならない程度の上限があるというのです。
インフレ率は、「総需要(=名目GDP)」と「供給能力(=
潜在GDP)」のバランスで決定されますが、主流派経済学では
インフレ率は、「おカネの発行量」により決まることになってい
ます。しかし、図らずもそれが正しくないことを証明したのが日
本であるといえます。すなわち、安倍政権のアベノミクスによっ
て、MMTは脚光を浴びることになったのです。
それは、何を意味しているのでしょうか。これについては、明
日のEJ以降で、検討して行くことにします。
──[消費税は廃止できるか/049]
≪画像および関連情報≫
●なぜ財政赤字でも政府支出できる?経済学者・松尾匡氏が語
るMMT理論に対する誤解と疑問点
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金利を下げても設備投資が増えない、というのはよくある
主張ですが、景気が過熱した時に金利を上げることでインフ
レを抑える効果自体も否定する点は非常に特異です。多くの
人がこれは違うんじゃないかと思うところで、極端な話50
%の金利にしたらデフレ不況に叩き落されるでしょう、と。
──これについて、MMT側の反論としてはどのような議論
がありますか?
MMTの主張としては、設備投資するかどうかは金利以外
の様々な要因によって決まるとしています。特に将来どれく
らい儲かるかによって決まり、金利はそれに比べれば影響を
与えない、と。その説明としては、一つにはインフレを抑え
るために金利を上げようとすると、金利も生産コストですか
ら、企業は売値を決める時にコストに上乗せする。そのこと
で、かえって物価が上がるよ、という考え方をしています。
あるいは、金利を上げると利子収入が増え、そうした人たち
が支出を増やすことでますます景気が過熱する、という言い
方もします。そういった可能性もあると、言っているわけで
す。ただ、私は設備投資が金利にどれくらい反応するかは、
最終的には実証で決める問題だと思っていて、数字を出さず
に今の段階であれこれ言っても仕方がない。だから、私は現
時点では「金利をいくら上げてもインフレは抑えられない」
というのは信じられません、と言うしかないです。
https://bit.ly/2QdRazt
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経済学における右派と左派