2020年03月11日

●「記者とケルトン教授との一問一答」(EJ第5204号)

 MMTにスポットライトを当てた一人である、元ウエイトレス
の29歳のオカシオ・コルテス下院議員ですが、彼女の掲げる政
策は、次の3つです。
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   1.GND ・・・ グリーン・ニュー・ディール
   2.JGP ・・・       国民総雇用保証
   3.MFA ・・・         国民皆保険
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 オカシオ・コルテス下院議員の政策の達成には、莫大な資金が
かかります。彼女は、その財源の調達にMMTの考え方を使おう
と考えています。そのためには、民主党のバーニー・サンダーズ
上院議員が大統領になることがベストです。ステファニー・ケル
トン教授は、サンダーズ上院議員の政策顧問にして、オカシオ・
コルテス下院議員の経済アドバイザーを務めています。
 ここに、記者(Q)とケルトン教授(A)とのMMTに関する
一問一答があります。MMTの理解につながると思われるので、
何回かに分けてご紹介し、解説を加えることにします。
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Q:グリーンニューディールの財源は、ちゃんと確保できるので
  しょうか?
A:はい、連邦政府は、自国通貨で売りに出されているものは何
  でも購入することができます。
Q:あなたは、政府は新規の支出のために、ただ「カネを刷れば
  いい」というのですか?
A: 逆に他になにか方法があるんですか?
Q:他の方法ですって?税率を上げられるじゃないですか!
A:そういうものではないのです。政府が国民経済に注いだお金
  の一部を、税は吸収してしまいます。支出と税収を同額にす
  ることもできるかもしれません。でも政府はふつう、税収よ
  り多くのお金を支出していますし、それによって市場にはよ
  り沢山のお金が出回りますよね。 https://bit.ly/2Q4sGJc ─────────────────────────────
 MMTでは、税金は財源とは考えないのです。これは、とても
わかりにくい考え方です。主流派経済学では、税金が税収として
得られ、政府はそれを財源として支出を行うと考えています。当
たり前なことであると誰しも考えます。
 しかしMMTでは、逆に政府支出がまずあって、国民はそれに
よって得たお金で納税できると考えます。これを「スペンディン
グ・ファースト」といいます。税金についてケルトン教授は重要
なことをいっています。「税金は、政府が国民経済に注いだお金
の一部を税は吸収する」と。
 3月2日のEJで述べた「ウォーレン・モスラーの話」を思い
出してください。モスラーは、子供たちのお手伝いに応じて、名
刺(お金)を与えています。スペンディング・ファーストです。
子供たちはそうして集めた名刺、すなわちお金で納税を行ってい
ます。このように、徴税は、貨幣に価値を与え、市中に流通する
貨幣の量を調節する役割をもっています。すなわち、徴税は、市
中から貨幣を吸収する行為として位置付けられています。
─────────────────────────────
Q:いやいや、それは(国債発行による)赤字支出じゃないです
  か?あなた、まーた、政府債務を積み上げるんですね?
A:いいえ、国債を買うためのドルは、赤字支出からくるもので
  はありません!それは、そもそも「借り入れ」ではありませ
  ん。人々がドルと国債を交換したときには、政府が発行した
  おカネを別の形で持ちかえたというだけのことです。
Q:でも、結局、我々は負債を返済する必要がありますよね?
A:政府は常に国債を償還しています。簡単ですよ。国債の売り
  手(多くは銀行)の口座の証券の項目を引き算して、中央銀
  行預け金の項目を足し算するだけです。これをNY連邦準備
  銀行はキーボードを叩くだけで終わらせるんです。
Q:しかし、利子の支払いはどうなるんですか?利払いによって
  使用可能なお金は少なくなりますよね?
A:それは間違いです。政府が利子を支払う方法も、あらゆる支
  払いと同じです。いつだって何にでも支払いが増やせます。
  その上限を決めるのが物価上昇率なのです。
                  https://bit.ly/2Q4sGJc ─────────────────────────────
 ここでは、MMTの本質を論じています。「国債とは何か」が
論じられています。これについては、残りの紙面で述べることは
困難であるので、明日のEJで述べることになります。
 前のブロックで、記者は「政府は新規の支出のためにただ『カ
ネ』を刷ればいい」といっていますが、これは日本的な表現であ
り、日本の読者向けにそう訳したものと思われます。MMTでは
次の2つの表現を使っています。
─────────────────────────────
       @     「万年筆マネー」
       A「キーストローク・マネー」
─────────────────────────────
 ここまで何度も述べてきた銀行の信用創造の仕組みによれば、
無一文の銀行でも、お金を貸す能力があるといえます。銀行は預
金者から預かったお金を貸しているのではないからです。もちろ
ん、法的な規制があって、無一文の銀行ではお金は貸せませんが
その規制がなければ貸すことができるのです。それは、きわめて
簡単なことです。貸付を希望する人の口座に「○○万円」と書き
込むことによって、貸したことになるからです。
 この「書き込む」という言葉によって、「万年筆マネー」とい
う表現が生まれたのですが、実際には、キーボードのキーをスト
ロークすることによって貸し付けが可能になるので、「キースト
ローク・マネー」という表現に変わってきているのです。
           ──[消費税は廃止できるか/045]

≪画像および関連情報≫
 ●異端の経済理論「MMT」を恐れてはいけない理由
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   現代貨幣理論は、その名のとおり、「貨幣」論を起点とす
  る経済理論であるが、この現代貨幣理論と主流派経済学とで
  は、貨幣の理解からして、180度違うのである。
   まさに、地動説と天動説の相違と比肩できるほど、異なっ
  ているのだ。では、ここで、現代貨幣理論が立脚する貨幣論
  について、ごく簡単に解説しよう。
   今日、「通貨」と呼ばれるものには「現金通貨(お札とコ
  イン)」と「預金通貨(銀行預金)」がある。「銀行預金」
  が「通貨」に含まれるのは、我々が給料の支払いや納税など
  のために銀行預金を利用するなど、日常生活において、事実
  上「通貨」として使っているからである。ちなみに「通貨」
  のうち、そのほとんどを預金通貨が占めており、現金通貨が
  占める割合は、ごくわずかである。ここまでは、主流派経済
  学でも異論はないであろう。
   問題は、通貨のほとんどを占める「銀行預金」と貸し出し
  との関係である。通俗的な見方によれば、銀行は、預金を集
  めて、それを貸し出しているものと思われている。しかし、
  これは銀行実務の実態とは異なる。
   実際には、銀行の預金が貸し出されるのではなく、その反
  対に、銀行が貸し出しを行うことによって預金が生まれてい
  るのである(これを「信用創造」という)。驚かれたかもし
  れないが、これは事実である。      ──中野剛志氏
                  https://bit.ly/2TA7NHP
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sanda-zu/korutesuryougiin.jpg
サンダーズ/コルテス両議員 
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 消費税は廃止できるか | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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