そういうものが公開されると、その内容がユニークであればある
ほど、必ず反対意見が出てきます。まして、それが自分のつねに
主張していることに矛盾する場合は、猛然と反論します。
MMT(現代貨幣理論)に関しては、著名な経済学者のほとん
どが反対の立場をとっていますし、日本の経済学者、経済評論家
ジャーナリストなどの多くは賛成ではないようです。しかし、消
費増税に反対の立場をとる藤井聡京都大学大学院教授は、MMT
の解説書を上梓して、賛成の立場をとっておられます。
しかし、まだ立場をはっきりさせていない専門家もたくさんい
ます。きちんと勉強していないのでしょう。政治家では、自民党
参議院議員の西田昌司氏が、MMTに賛成の立場を明確にしてお
り、とても目立っています。
それでいて、ステファニー・ケルトン教授が2019年7月に
来日し講演をしたとき、受講希望者が殺到、抽選で2回の講演会
の参加者を決めたといわれます。そのとき、1回の受講者は60
人に制限されていたようです。おそらく出席者は経済の専門家が
多かったはずです。トンデモ理論といわれながらも、どのような
理論か、本家の学者の話を直接聴きたかったに違いありません。
そもそも米国でMMTの議論が巻き起こったのは、2019年
1月のことです。それは、史上最年少の女性下院議員であるアレ
キサンドリア・オカシオ・コルテス下院議員の掲げる「グリーン
・ニューディール政策」についての議論が原因です。この政策は
太陽光や風力などの再生可能エネルギーを100%にしようとす
るもので、当然のことながら、巨額の資金が必要になりますが、
その財源として赤字国債を上げています。これに関してオカシオ
・コルテス下院議員は、次のように主張しています。
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グリーンニューディールを成功させる方法に関しては、富裕層
課税など、いくつもの財源創出方法があります。政府の赤字支出
は良いことです。そしてグリーンニューディールを実現させるた
めには、財政黒字こそが、経済にダメージを与えるとするMMT
の考えを、”絶対に”私たちの主要議論にする必要があります。
──オカシオ・コルテス下院議員
https://bit.ly/39ArTY9 ─────────────────────────────
実は、ナンシー・ペロシ下院議長は、オカシオ・コルテス議員
だけでなく、民主党の大統領候補、さらに70人の民主党議員が
GND(グリーン・ニューディール政策)に賛同していると言明
しており、コルテス下院議員については、その実現を目指させる
ため、気候変動委・予算編成委の部署へ異動させています。
もちろん、米民主党のすべてがMMTに賛成しているわけでは
ありませんが、その予算化の案の一つとして、MMTの検討を始
めているのは事実です。
民主党大統領予備選挙の候補であるバーニー・サンダーズ上院
議員と、エリザベス・ウォーレン上院議員(大統領候補から撤退
表明)は、GNDの財源について、次のように述べています。
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◎バーニー・サンダーズ上院議員
・雇用、格差是正、インフラ整備、貿易、退職保障および教育
に対して(国債発行して)赤字支出をしなければならない。例
えば、インフラに5年で1兆ドル以上の投資をすれば1300
万の高給の雇用を創出できるでしょう。
◎エリザベス・ウォーレン上院議員
・政府預金(税収)で支出増加を賄うとする議会の現在のやり
方は全く意味をなしません。教育やインフラ、人々や国内企業
への投資など、時間の経過とともに本当の価値を生み出す投資
があります。そういったことを我々の政府会計では考慮すべき
です。 https://bit.ly/39ArTY9
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サンダース上院議員にしても、ウォーレン上院議員にしても、
MMTとはっきり口にしていませんが、明らかにMMT的考え方
を述べています。なぜ、MMTなのでしょうか。彼らとMMTは
どういう関係があるのでしょうか。
それは、ステファニー・ケルトン教授が、バーニー・サンダー
ズ上院議員の政策顧問を務めているからです。ちなみに、ケルト
ン教授は、オカシオ・コルテス下院議員の経済アドバイザーも務
めています。したがって、もし、サンダース上院議員が大統領に
になったら、MMTが米国の経済政策に大きな影響を与えること
になる可能性があります。
これに対して、米国の主流派の経済学者の3人は、それぞれ次
のようなバカにしたような言葉を連ねて反対しています。
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◎ポール・クルーグマン氏(ノーベル経済学賞受賞者)
・「理解不能」
◎ケネス・ロゴス氏(経済学者/ハーバード大学教授)
・「ナンセンス」
◎ローレンス・サマーズ氏(経済学者で、元財務長官)
・「ブードゥー経済学」(いかがわしい経済学)
──井上智洋著『MMT/現代貨幣理論とは何か』
講談社選書メチエ
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経済学の世界で主流を占めているのは、「ニュー・ケインジア
ン」と呼ばれる人たちです。経済学の教本を出していて著名なグ
レゴリー・マンキューやクルーグマンは、このグループに属しま
す。これに対して、「ポスト・ケインジアン」と呼ばれる一派が
あり、MMT系の経済学者はこれに属します。同じケインジアン
ですが、右寄りのニューケインジアン、左寄りのポストケインジ
アンの考え方は大きく異なります。
──[消費税は廃止できるか/044]
≪画像および関連情報≫
●ケルトン教授が、顧問のバーニー・サンダース氏を大統領に
──2019年5月の記事
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MMT(現代貨幣理論)の提唱者の1人、ニューヨーク州
立大学のステファニー・ケルトン教授が6月に訪日するそう
です。自民党議員でMMTを支持する安藤ひろし氏と西田昌
司氏と会うことを楽しみにしています。いいですねえ。政治
のダイナミズム。アメリカが日本が変わろうとしています。
ケルトン教授は2016年の米国大統領選でバーニー・サ
ンダース上院議員の顧問を務めており、2020年の大統領
選でも同氏の顧問を務めることになりました。MMTが注目
されている今、最高のタイミングで、最高の人が大統領候補
として名乗りを上げ、最高の人が顧問を務めることにわくわ
くしています。
ところが今、民主党の大統領候補を選ぶ予備選ではジョー
・バイデン議員が大きくリードしています。サンダース氏は
2位につけており、実質、両候補の戦いになりそうです。ど
ちらも70代の半ばと高齢ですが、エネルギッシュに、選挙
キャンペーンを繰り広げており、かっこいいと思います。し
かし、やはり勝って欲しいのはサンダース氏。サンダース氏
が勝てば、文字通りアメリカが変わります。当然日本も、世
界も変わることになります。 https://bit.ly/2TxL6E8
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西田昌司自民党参院議員