の2日間が空くので、どうしてもつながりが悪くなります。した
がって、今日はMMTの周辺の話をします。MMTの本格的な話
は3月2日からになります。さて、消費増税に関して、次のこと
がよくいわれます。聞いたことがあると思います。
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消費税の税率を1%アップすると、2・5兆円税収が増える
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このことをあまり疑う人はいないと思います。税率を上げるの
ですから、その分が増加して、2・5兆円になるのだろうと誰で
も考えます。しかし、よく考えてみると、必ずしもその金額が増
えるとは限らないのではないでしょうか。もし、本当に1%につ
き2・5兆円増えるのであれば、次のように税収が増えたことに
なります。
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◎第1回/1989年 0%〜 3% 7・5兆円増
◎第2回/1997年 3%〜 5% 5・0兆円増
◎第3回/2014年 5%〜 8% 7・5兆円増
◎第4回/2019年 8%〜10% 5・0兆円増
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実際はどうだったのでしょうか。私の知るかぎり、その結果は
新聞などでは、公表されていないはずです。しかし、経済評論家
の上念司氏の本にその結果が出ています。それによると、第4回
の増税はやったばかりなのでまだ結果が出ていませんが、3回ま
での増税では、いずれも「1%=2・5兆円」は未達成の結果に
終っています。
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◎第1回/1989年 0%〜 3%
54・9兆円 → 60・1兆円 +5・2兆円
◎第2回/1997年 3%〜 5%
53・9兆円 → 49・5兆円 −4・5兆円
◎第3回/2014年 5%〜 8%
54・0兆円 → 56・4兆円 +2・4兆円
──上念司著/講談社+α新書
『財務省と題新聞が隠す本当は世界一の日本経済』
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3回とも未達成というのも驚きですが、なかでも悲惨な結果に
終ったのは、第2回の3%〜5%への増税です。増税しているの
に税収が4・5兆円もマイナスになってしまっているからです。
これでは、何のための増税かわからなくなります。
どうしてこういう結果になるのかについて、上念氏は次のよう
に述べています。
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■税収=名目GDP×税率
税率を上げても名目GDPに変化がなければ、確かに税収は増
えるでしょう。しかし税率を上げると、人々は支出を抑制し、モ
ノを買わなくなります。そうすると景気が悪くなって、名目GD
Pの伸びが鈍化したり、場合によってはマイナスになる。そして
その落ち込みが税率の上げ幅より大きければ当然、税収も減って
しまうことになるわけです。
具体的にいえば、消費税の増税によって、消費税だけの税収は
確かに増えるかもしれません。しかし、景気が悪くなることで企
業の収益が悪化し、消費税以外の所得税や法人税が大幅な減収と
なります。1997年のケースは、消費税の増収分よりも所得税
や法人税の減収の幅のほうがはるかに大きかったために、全体と
しての税収が減ってしまったのです。
──上念司著/講談社+α新書の前掲書より
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つまり、税収を増やすには名目GDPを上げればよいのです。
名目GDPと税収の間の相関係数は「0・82」であり、相関係
数が「0・7」以上あると、強い相関があるといえます。上念司
氏によると、「GDPが1%増えると、税収は3%以上増える」
そうです。ところが、名目GDPが1%増えたら、税収がどのく
らい増えるかについて、財務省は、公式見解として、次のように
述べています。税収弾性値とは、名目GDPが1%増えると、税
収がどのくらい増えるかを表す数値です。
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名目GDPの税収弾性値はほぼ「1」である
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この数値は明らかに低いのです。財務省から聞き出したとされ
る下記の2005年から2012年度までの税収弾性値を見ると
かなり、高い値であり、平均値は「7・5」になるそうです。こ
の数字はさすがに高いとしても、「3」ぐらいになっても不思議
はありません。それを財務省は「1」としています。長期的には
そうなるというのです。これも日本の財政を実態よりも悪く見せ
たい財務省の思惑なのでしょうか。財務省は何が何でも増税を積
み重ねたいようです。
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◎平成17年度から24年度の税収弾性値
平成17(2005)年度 ・・・ 15・6
平成18(2006)年度 ・・・ 6・3
平成19(2007)年度 ・・・ 0・0
平成20(2008)年度 ・・・ 2・6
平成21(2009)年度 ・・・ 4・0
平成22(2010)年度 ・・・ 6・2
平成23(2011)年度 ・・・ 弾性値マイナス
平成24(2012)年度 ・・・ 27・0
──上念司著/講談社+α新書の前掲書より
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──[消費税は廃止できるか/037]
≪画像および関連情報≫
●税収弾性値の議論で抜け落ちる「重要な視点」とは
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税収の伸び率が名目GDP成長率の何倍になるのかという
弾性値の議論が活発だ。現在(2015年)の景気回復局面
では、弾性値(10年ローリング)は3・5倍程度となって
いるが、数十年のかなり長期的な平均では1倍程度と言われ
る。6月中に政府がまとめる財政健全化計画の議論では、こ
の弾性値の前提を控えめな1倍程度とするのか、それより大
きい数字とするのか、意見が割れているようだ。
倍数が大きくなれば、名目GDP成長率の伸びに対して税
収の見積もり(伸び率)も大きくなり、政府の目標である、
2020年度のプライマリーバランスの黒字化達成のための
歳出削減幅は、小さくてもすむことになる。
この議論で疑問なのは、税収の伸び率と名目GDP成長率
というフローの比較だけが行われていることだ。税収と名目
GDPの水準比較の議論がほとんど行われておらず、抜け落
ちている視点であると言える。バブル期の1990年度の税
収(除く消費税)の名目GDPに対する割合は12%程度で
あった。しかし、その後に急落が続き、デフレに陥った19
90た年代後半からは、割合は7%程度となっている。現在
税収の弾性値が1倍を大きく上回ってきているため、割合は
上昇傾向にある。日本がデフレを完全に脱却していけば、こ
の割合は1990年度までとは言わないが、今後もしっかり
とした上昇が続くはずである。このような税収水準の上方へ
の調整を考えると、税収の弾性値が2020年度という短い
期間で1倍程度にとどまるというのは非現実的である。
https://bit.ly/37VtuGp
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上念司氏