2020年02月27日

●「財務省は財政をどう考えているか」(EJ第5195号)

 日本政府の財政が深刻な状況にあることはほとんど常識化され
ています。しかし、その根拠は、政府債務の対GDP比が200
%を超えているということに過ぎないのです。
 しかし、日本の場合、他の国では当然のようにやっている金融
資産を債務から差し引かず、債務だけを発表しています。それは
政府の借金を多く見せようとする財務省の策略です。借金が大き
い方が増税しやすいからです。
 本当のところは、どうなのでしょうか。少し長いですが、次の
文章を読んでください。これは、米国の格付会社が日本国債の格
付けを下げたときに、財務省がその格付会社に突き付けた抗議文
書と質問状の全文です。
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◎外国格付け会社宛意見書要旨
1.貴社による日本国債の格付けについては、当方としては日本
 経済の強固なファンダメンタルズを考えると既に低過ぎ、更な
 る格下げは根拠を欠くと考えている。貴社の格付け判定は、従
 来より定性的な説明が大宗である一方、客観的な基準を欠き、
 これは、格付けの信頼性にも関わる大きな問題と考えている。
  従って、以下の諸点に閲し、貴社の考え方を具体的・定量的
 に明らかにされたい。
 @日米など先進国の自国通貨建て国債のデフォルトは考えられ
  ない。デフォルトとして如何なる事態を想定しているのか。
 A格付けは財政状態のみならず、広い経済全体の文脈、特に経
  済のファンダメンタルズを考慮し、総合的に判断されるべき
  である。
  例えば、以下の要素をどのように評価しているのか。
  ・マクロ的に見れば、日本は世界最大の貯蓄超過国
  ・その結果、国債はほとんど国内で極めて低金利で安定的に
   消化されている
  ・日本は世界最大の経常黒字国、債権国であり、外貨準備も
   世界最高
 B各国間の格付けの整合性に疑問。次のような例はどのように
  説明されるのか。
  ・1人当たりのGDPが日本の3分の1で、かつ大きな経常
   赤字国でも、日本より格付けが高い国がある。
  ・1976年のポンド危機とIMF借入れの僅か2年後(1
   978年)に発行された英国の外債や双子の赤字の持続性
   が疑問視された1980年代半ばの米国債はAAA格を維
   持した。
  ・日本国債がシングルAに格下げされれば、日本より経済の
   ファンダメンタルズではるかに格差のある新興市場国と同
   格付けとなる。
2.以上の疑問の提示は、日本政府が改革について真剣ではない
 ということでは全くない。政府は実際、財政構造改革をはじめ
 とする各般の構造改革を真撃に遂行している。同時に、格付け
 について、市場はより客観性・透明性の高い方法論や基準を必
 要としている。       ──上念司著/講談社+α新書
      『財務省と大新聞が隠す本当は世界一の日本経済』
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 どうでしょうか。米国の格付会社は、この質問状にまともには
答えられないはずです。すべてが、真実で固められているからで
す。そのため、主張には強い説得力があります。財務省は、日本
国民に対しては、借金で首がまわらないから増税しかないといっ
ておきながら、外に対しては、このようにまるで違うことをいっ
ているのです。
 さて、財務省は主張のなかで「日米など先進国の自国通貨建て
国債のデフォルトは考えられない」と明言しています。これはま
さにMMTそのものです。財務省の役人は、ちゃんとわかってい
るのです。しかし、国民よりも、自分たちの利益を優先させてお
り、借金の多額さをよいことに、増税を実現させようとしている
のです。これでは公務員として失格です。
 安倍首相もMMTを知らないはずはないと思います。それなら
安倍首相は、なぜ借金など気にしないで、消費増税を凍結し、積
極的に財政出動して、日本経済をデフレから脱却させないでいる
のでしょうか。なぜ2014年に5%〜8%、2019年に8%
〜10%の大増税を実施し、デフレ脱却を不可能にしてしまった
のでしょうか。自分のやったことがわかっているのでしょうか。
 それは、安倍首相には一国のリーダーにとって不可欠な「大胆
な決断力」が欠如しているからです。消費増税も2回延期しまし
たが、結局は実施して、その結果、10月〜12月のGDP成長
率を年率6・3%というとんでもないマイナス成長にしてしまっ
ています。安倍首相のやっていることは「やってる感」は感じさ
せるものの、結局何も実現しないで終っています。
 それは、新型肺炎コロナウイルスの政府としての対応にもよく
あらわれています。この国家的危機に対して、国民の安全と財産
を守らなければならない安倍首相は、リーダーシップをとってい
ません。あるサイトでは、この問題の政府の対応について、次の
ように批判しています。「やってる感」じゃだめなのです。
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 新型肺炎の対策で日本は初動を誤った。検査体制に万全を尽く
し、早期発見に努め、市中感染が広がる前に封じ込めをしなくて
はいけなかったのに、検査をせず、感染者を探し出すことをせず
3週間も市中で感染が連鎖するのを閑却した。政府発表の見かけ
の数字は少ないが、市中では3次4次の感染が広がっている。W
HOの進藤奈邦子は、「今一番、世界中が心配しているのが日本
だ」「他の国では全部の感染者が(誰から感染したのか経路が)
追える。日本だけ様相が違う」と言い、日本のルーズな対応に警
鐘を鳴らした。           http://exci.to/37QVqLq
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           ──[消費税は廃止できるか/036]

≪画像および関連情報≫
 ●永田町大混乱!「新型コロナVS安倍VS菅」
  最後に勝つのは誰だ!/「プレジデント」3月6日号
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   世界中で感染拡大している新型コロナウイルスをめぐり、
  安倍晋三政権の後手後手な対応が批判を浴びている。現在は
  国・湖北省に滞在した外国人の入国を拒否するようになった
  が、当初は「震源地」である武漢市からチャーター機で帰国
  した日本人全員を検査することができず、感染症法に基づく
  「指定感染症」の政令施行日や搭乗者負担としていたチャー
  ター機費用も土壇場で方針転換するなど不手際ぶりが浮き彫
  りになっている。「危機管理」の強さを売りにしてきたはず
  の安倍政権に今、何が起きているのか。
   野党が繰り返し追及してきた森友・加計問題や財務省の文
  書改ざん問題など、「普通ならば内閣が吹っ飛ぶ」(閣僚経
  験者)とされたテーマでも乗り切り、史上最長政権となった
  安倍内閣だが、新型コロナウイルスをめぐる対応はあまりに
  遅く、お粗末さが目立つ。
   中国・湖北省では2019年12月以降、新型コロナウイ
  ルス関連肺炎の発生が確認されていたが、日本政府が関係閣
  僚会議で対応方針を決定したのは20年1月21日。その方
  針も感染リスクが高い地域からの帰国者・入国者に対する健
  康状態の確認や情報収集・情報提供など4項目で、この時点
  で安倍首相は「持続的なヒトからヒトへの感染が確認されて
  いる状況ではないが、一層の警戒が必要となる。感染症の発
  生状況など情報収集の徹底に万全を期してほしい」との認識
  だった。            https://bit.ly/2PmiFqu
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WHO/進藤奈邦子氏.jpg
WHO/進藤奈邦子氏
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 消費税は廃止できるか | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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