2020年02月13日

●「財務省は公然とウソをついている」(EJ第5186号)

 マレーシアの消費税廃止の話から、今回のテーマの本筋に戻る
ことにします。経済の仕組みをごく簡単にいうと、世の中に回る
お金の量が増えると景気が良くなり、逆にお金の量が減ると、景
気は悪くなります。
 企業を中心に考えます。企業が銀行から積極的にお金を借りて
企業活動に使えば使うほど、世の中に流通するお金の量が増加し
景気が良くなります。逆に企業が借金を銀行に返せば返すほど、
世の中からお金の量が減って景気が悪くなります。世の中のお金
の量を増やすには、お金を発行すればよいのですが、お金の発行
は、誰かの借金として発行されます。次の図式です。
─────────────────────────────
        お金の発行 = 借金の発行
─────────────────────────────
 ところが現在日本は長期デフレで経済成長が止まり、企業は銀
行からお金を借りなくなっています。この場合、企業は銀行から
お金を借りず、銀行からの借金の返済を行うので、世の中からど
んどんお金の量が減っていきます。これが、行き着くところまで
行った状態がデフレなのです。
 デフレになると、当然税収が減り、政府は国債を発行してその
足りない部分を埋めることになります。これを毎年繰り返すと、
政府の借金はどんどん雪だるまのように大きくなり、とんでもな
い額になります。このようにしてできたのが、現在の日本政府の
GDPの2倍を超える巨額の借金です。
 財務省はこの政府の借金を消費税を増税し、税金によって返そ
うとしています。これが大きな間違いであることは、既出の大西
つねき氏の理論に基づき、ここまで詳しく説明してきましたが、
この話をさらに前進させます。
 2019年10月1日から、消費税は8%から10%に引き上
げられました。一部の学者たちや勢力は10%への税率引き上げ
に猛反対していましたが、政府与党(自公政権)は「消費税8%
を10%に引き上げる」ことを公約に掲げ、参院選に勝利してい
るし、世論調査でも10%への増税に賛成する人が、反対する人
を上回っています。これは、財務省のプロパガンダが相当効いて
いることをあらわしています。しかし、もしかすると財務省に騙
されている可能性があります。
 ここである事実を指摘します。8%から10%への消費税の税
率の引き上げに関する財務省のウェブサイトを見ると、次の記述
があります。URLをクリックしてください。
─────────────────────────────
 ◎全世代型の社会保障制度へ
   消費税率を引き上げることによる増収分は、すべて社会保
  障に充て、待機児童の解消や幼児教育・保育の無償化など子
  育て世代のためにも充当し、「全世代型」の社会保障に転換
  します。
    消費税率引上げによる増収分は全額を社会保障に充当
    し、「全世代型」の社会保障制度に転換
                  https://bit.ly/38lARry ─────────────────────────────
 税率を8%から10%に上げると、国の税収は5・6兆円増え
ます。当初の予定では、その増税分の4分の3を借金(国債)の
返済に充当し、残りの4分の1を、社会保障の充実に使うことに
なっていたのですが、借金の返済に回す分を増税分の2分の1に
減らし、残りの税収については、1.7兆円を教育・子育てを充
実させることにしたのです。添付ファイルの図はそれをあらわし
ています。
 しかし、財務省のウェブサイトでは「消費税率を引き上げるこ
とによる増収分は、すべて社会保障に充て」と書いてあります。
この表現であれば、8%から10%への増収分5・6兆円はすべ
て教育・子育てや、社会保障に充てられることになります。しか
し、実際には、5・6兆円の約半分の2・8兆円は、赤字国債の
発行抑制に当てられるのです。つまり、借金の返済です。それな
ら、どうしてこの表現になるのか理解できないでいます。財務省
がウソをついてといるのでしょうか。
 5%を8%に引き上げるときは、その増収分の80%は借金の
返済に充てられています。「社会保障と税の一体改革」のメイン
は、政府の借金を減らすための政策だからです。これはかつての
与党の民主党が、野党の自民党、公明党と一緒になって作成した
政策であり、彼らは基本的に「増税に反対できない」のです。
 財務省は、政府の借金を増税して税金で返しています。これに
ついは、その考え方がいかに間違っているか、1月28日のEJ
第5175号で述べています。消費増税は「消費の罰金」であり
増税すると、GDPの約6割を占める個人消費が落ち込み、それ
に加えて増収分で借金を返済すると、世の中のお金の量が減り、
景気は確実に悪くなるダブルパンチを食います。今まで何度もそ
ういう失敗を繰り返しているのに財務省は徹頭徹尾「緊縮政策」
を続けて、デフレを長引かせようとしています。
 現在の日本の社会では、消費税の廃止・減税、積極財政などと
いう言葉は、政治的に、まともにいえない雰囲気になりつつあり
ます。「ポリティカル・コレクトレス」という言葉があります。
略して「ポリコレ」といいますが、ポリコレは「政治的に望まし
い言説」のことであり、それが暗黙裏に社会で人々に共有され、
それに反する言説が、いいにくくなる社会現象というか、雰囲気
を生み出しているといえます。
 トランプ米大統領は、ポリコレを嫌い、本音でものをいう政治
家です。「米国第一主義」というような言葉は、心のなかではそ
う思っていてもなかなかいえないものです。
 現在は、緊縮財政、消費増税、グローバリズムはポリコレOK
で正しく、積極財政、消費税の廃止・減税、保護主義はポリコレ
アウトであり、これらを主張するのは、「不道徳」ということに
なります。      ──[消費税は廃止できるか/027]

≪画像および関連情報≫
 ●元国税が暴露。「消費税は社会保障のため不可欠」が大ウソ
  な理由/大村大次郎氏
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   消費税というのは、まずその存在意義そのものについて大
  きな疑問というか嘘があります。消費税が創設されるとき、
  国は「少子高齢化のために、社会保障費が増大する。そのた
  め、消費税が不可欠」と喧伝しました。でも、実際消費税は
  社会保障費などにはほとんど使われていないのです。
   では、何に使われたのかというと、大企業や高額所得者の
  減税の穴埋めに使われたのです。それは、消費税導入前と現
  在の各税目を比較すれば一目瞭然です。これは別に私が特別
  な資料をつかんで発見した事実などではありません。国が公
  表している、誰もが確認することのできるデータから、それ
  が明確にわかるのです。
   消費税が導入されたのは1989年のことです。その直後
  に法人税と所得税があいついで下げられました。また消費税
  が3%から5%に引き上げられたのは、1997年のことで
  す。そして、その直後にも法人税と所得税はあいついで下げ
  られました。そして法人税のこの減税の対象となったのは大
  企業であり、また所得税のこの減税の対象となったのは、高
  額所得者でした。所得税の税収は、1991年には26・7
  兆円以上ありました。しかし、2018年には、19兆円に
  なっています。法人税は、1989年には19兆円ありまし
  た。しかし、2018年には12兆円になっています。
                  https://bit.ly/2tOFlYF
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image.png
増収分の使いみち







posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 消費税は廃止できるか | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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