2020年02月07日

●「消費税廃止のマレーシアへの視察」(EJ第5183号)

 「藤井聡教授VS片山さつき議員」の消費税をめぐる激論の最
後の部分で、マレーシアの消費税廃止の話が出てきました。マレ
ーシアは2018年6月に消費税(GST)を廃止しています。
日本はそのほぼ1年後に消費税の税率を8%〜10%に引き上げ
ることが予定されているのに、マレーシアの状況についての情報
はほとんどないし、政治家も積極的に調べようとしていなかった
と思われます。
 当然安倍政権が知らないはずはないし、「消費税凍結」を求め
る野党の立憲民主党、国民民主党も知っていたはずです。メディ
アも安倍政権に気を使ってか、この情報をほとんど報道しておら
ず、多くの日本人はマレーシアが消費税を廃止したことを知らな
かったと思われます。
 増税をしようとしている与党の自公政権は当然のこととして、
野党の立憲民主党、国民民主党も、「社会保障と税の一体改革」
として、自民党と共に消費増税に賛成しているので、増税に反対
できる立場ではなく、本来であれば、消費税凍結も口にする資格
はないのです。
 しかし、れいわ新撰組の山本太郎代表と立憲民主党の若手議員
ら8名は、2019年8月26日から28日にかけて、消費税廃
止後のマレーシアを視察しています。このことをメディアは完全
に無視して、報道していません。
 ところが、このマレーシア視察について、立憲民主党の枝野代
表は、なぜか批判しています。2019年9月3日の「日刊ゲン
ダイデジタル」は、次のように報道しています。
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 野党第1党の立憲民主の枝野幸男代表に批判が殺到している。
先月30日(2019年8月)の会見で枝野氏は、立憲の若手が
「消費税廃止」を訴える「れいわ新選組」の山本太郎代表と共に
昨年6月に消費税を廃止したマレーシアを視察したことを問われ
トンデモ回答。若手を通じた「れいわ」との共闘の可能性を質問
されたが、枝野氏は「(マレーシアは)消費税を廃止したけど、
失敗した国ですよね」と、冷たい笑みを浮かべながら切り捨てた
のだ。冷笑する枝野氏に対し、「枝野さん、なんで笑うの??」
「これ見て支持やめた!」などのツイートが噴出。山本氏と立憲
若手のマレーシア視察は、消費税減税で、野党結集を進める狙い
があったはず。国民民主党の玉木雄一郎代表も、消費税減税に言
及しており「共闘」をアピールする絶好の機会だ。なぜ枝野氏は
不遜な態度を取ったのか。
    ──2019年9月3日付、「日刊ゲンダイデジタル」
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 この枝野発言には疑問があります。その発言とは「マレーシア
は消費税を廃止したけど、失敗した国ですよね」のことです。マ
レーシアは、2018年6月に消費税を廃止し、1年しか経って
おらず、まだ成功か失敗かを論ずる時期ではないからです。それ
に、「消費税5%」で野党で足並みを揃えようとしているときに
この発言はないと思います。自分の党の若手がマレーシア視察に
参加しているのにです。それに「冷笑」を浮かべたのは、非常に
まずかったと思います。
 この枝野氏の「冷笑」について、厳しい質問をすることで知ら
れるジャーナリストの横田一氏は次のように述べています。
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 今回の枝野代表の「冷笑」は、希望の党立ち上げの際、笑みを
浮かべながら「(リベラル派を)排除します」と発言した小池百
合子都知事に通じるものを感じました。批判を招くのも仕方あり
ません。せっかく有望な若手が山本代表と視察に行ったわけです
から、「消費税については若手の報告を待って今後検討する」な
どと、前向きな発言をすればよかったのではないか。野党共闘が
進んでいることをにおわせれば、与党にもプレッシャーになるは
ずです。──2019年9月3日付、「日刊ゲンダイデジタル」
                  https://bit.ly/2GUWzGT ─────────────────────────────
 マレーシアでは、2018年5月に総選挙があったのです。こ
の総選挙では、「消費税(GST)廃止」を公約として掲げた、
マハティール元首相率いる野党連合「希望連盟」(PH)が勝利
し、ナジブ政権を倒して政権交代を成し遂げたのです。当時、マ
ハティール氏は92歳であり、公選された世界最高齢の国家首脳
となったのです。かつての自分の弟子であるナジブ首相の悪政を
覆すため、マハティール氏としては、やむにやまれぬ出馬であっ
たといわれます。
 首相に復帰したマハティール氏は、公約通り、2018年6月
1日より6%の消費税(GST)を廃止したのです。公約実現で
す。しかし、それでは財源が減ってしまうので、2018年9月
に、売上サービス税(SST)が再導入されています。これも公
約通りです。GSTとSSTは、次の言葉の略です。
─────────────────────────────
     GST ・・・ Goods and Services tax
     SST ・・・ Sales and Services tax
─────────────────────────────
 マレーシアの消費税については、来週のEJで詳しく述べます
が、「GST」というのは日本でいう消費税ですが、「SST」
は、かつて日本にもあった物品税に当ります。そのため、SST
には非課税品目が非常に多いので、GSTからSSTへの移行で
税収は、220億リンギ(約5500億円)減少したといわれて
おり、マレーシアは、さまざまな方法でこれを埋めるべく、努力
しているといわれます。
 2018年6月にGSTを廃止し、同年9月にSSTを再導入
することは公約通りですが、これを「消費税の再導入」と報道す
るメディアもあり、枝野代表は、そのことを十分理解しておらず
「消費税の廃止に失敗した」と勘違いしたのではないかと考えら
れます。       ──[消費税は廃止できるか/024]

≪画像および関連情報≫
 ●マレーシアで政権交代
  マハティール元首相の野党連合が総選挙勝利
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   首相を22年にわたり務めた後、政界を引退していたマハ
  ティール氏は、かつて弟子のような存在だったナジブ・ラザ
  ク首相(64)の対抗馬として出馬していた。ナジブ首相は
  汚職と縁故主義の批判にさらされていた。
   2018年5月10日未明の選挙管理委員会発表によると
  連邦下院(定数222)でマハティール氏率いるPHは過半
  数超えの115議席を獲得した。ラザク氏率いる与党連合・
  国民戦線(BN)の議席は今のところ、79議席に留まって
  いる。マレーシアでは下院過半数の政党が与党となり、政権
  を樹立する。マハティール氏は報道陣に、「我々は報復を求
  めているのではない。法の支配を復活させたいのだ」と話し
  た。元首相は、10日中にも、宣誓就任式を開きたいと述べ
  た。公選された世界最高齢の国家首脳となる。選管発表の後
  政府報道官は10日と11日を国全体の祝日にすると発表し
  た。情勢が次第に明らかになると、野党支持者が次々と通り
  に繰り出し、歴史的勝利を祝った。
   BNと主要政党の、統一マレー国民組織(UMNO)は、
  1957年に英国から独立して以来、マレーシア政界で圧倒
  的な影響力を誇ってきたが、近年では支持率にかげりが出て
  いる。             https://bbc.in/383AIc3
  ───────────────────────────

マレーシア視察団/山本太郎氏.jpg
マレーシア視察団/山本太郎氏
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 消費税は廃止できるか | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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