2020年02月05日

●「藤井教授VS片山さつき参院議員」(EJ第5181号)

 1月16日のEJ第5167号の冒頭で、私は、本日のテレビ
朝日「羽鳥慎一モーニングショー」の玉川徹氏による『そもそも
総研』をぜひ視ていただきたいという予告を出しました。「消費
税ゼロ」の特集が予定されていたからです。その放映は1週間前
の9日に予定されていたのですが、当日は、イランが米軍基地に
ミサイルを撃ち込んだニュースによって『そもそも総研』が放映
できなくなり、次週に行うことがアナウンスされたからです。
 そのさい、玉川氏は、消費税ゼロの問題は、藤井聡京都大学大
学院教授で元内閣官房参与に直接スタジオに来ていただき、説明
してもらうことを約束したのです。そのため、私が16日のEJ
の冒頭で予告したわけです。
 しかし、当日の『そもそも総研』では、何の断りもなく、別の
企画が放映されています。しかし、次週の23日、『そもそも総
研』において、藤井聡教授と片山さつき自民党税制調査会幹事が
消費税の問題で直接対決したのです。片山さつき氏は、元財務省
主計局主計官であり、税の専門家です。そのやり取りの概要につ
いて、以下に紹介します。
 当日、藤井聡教授が使ったフリップを添付ファイルにしてある
ので、添付ファイルをご覧ください。グラフは「A」と「B」が
あります。最初にグラフ「A」を見てください。
 グラフ「A」は、「小売販売額の推移」を示しています。これ
について、藤井教授は、消費、小売りが大幅に冷え込んでおり、
その冷え込みは、2014年4月の8%増税のときよりも激しい
ことを指摘しています。しかし、これに関して、片山自民党税制
調査会幹事は、この景気の冷え込みは、「台風」が大きな影響を
与えていると反論しました。
 しかし、2019年9月のグラフの急上昇は、明らかに巨大な
駆け込み需要があったことを示しており、10月の落ち込みは、
その反動減であることは素人でもわかります。それを台風のせい
にするのは、税の専門家の反論としては論外です。これは、どう
みても、藤井教授に軍配が上がります。
 続いて、グラフ「B」を見てください。これは、1995年か
ら日本の実質消費の伸びをグラフで示しています。日本の個人消
費はGDPの約6割(57%)を占めており、その増減はGDP
の伸びに重要な影響を与えます。
 1997年に消費税を3%から5%に上げる前の日本の実質消
費の平均伸び率は2・61%だったのです。しかし、消費税を3
%から5%に2%上げたとたんに実質消費は2%ダウンし、そこ
から実質消費の平均伸び率は半分以下の1・14%になっていま
す。グラフの傾きが緩やかになり、上がり方がゆっくりになって
います。これは、日本の成長の実力が消費増税によって下がった
ことを意味します。
 それから、2014年の消費増税までには、2008年のリー
マンショック、2011年の東日本大震災などがありましたが、
それぞれ直後は大きくダウンしたものの、それ以降は、ほぼ同じ
傾きで、実質平均消費は伸びてきています。
 しかし、2014年に消費税を5%から8%に引き上げると、
その増加分の3%は直後にダウンし、そしてそれ以降の実質消費
の平均伸び率は0・41%まで下がっています。グラフの傾きは
さらに下がり、ほぼ横ばいになってしまっています。そして、藤
井聡教授は、次のように力説します。
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 ちなみに、消費税を8%から3%上げた直後に、実質消費は3
%下がって、以後0・41%しか伸びないのですから、2014
年3月(8%に上げる前月)の状況に戻るのに8年かかるという
計算になります。日本の経済が成長するには、消費増税のせいで
8年間足踏みを続けることになるのです。
 問題は、これからどうなるかですが、これらの関係から、数学
的に推計すると、消費税を10%にすると、直後に2%ダウンし
実質消費の平均伸び率は0・21%にダウンします。そうすると
2019年9月(10%に上げる前月)の状態に戻るのは、10
年を要することになります。このことから、安倍内閣は、アベノ
ミクスを始めた状況に戻るには、実に18年を要することになり
ます。これはとてつもない経済の冷え込みであり、この18年の
間に中国も、アメリカも、ヨーロッパもすべて成長するのです。
これをどうするかは、私の学者としての心からの心配というか、
憂慮であります。       ──藤井聡京都大学大学院教授
  ──2020年1月23日、「羽鳥愼一モーニングショー」
                   『そもそも総研』より
─────────────────────────────
 これに対して、片山さつき参院議員は、「超少子高齢化」が実
質消費の落ち込みを起こしたものであり、消費増税がなくても起
きうる現象であるとして、次のように述べています。
─────────────────────────────
 いままさにこの流れのなかで、安倍政権は戦ってきたのです。
超少子高齢化社会で、人口が減る社会でも、国民に不安を与えな
い財源を作ってやってきています。超少子高齢化の社会では、ど
この国でも個人消費の総額は落ちてくる。まさに藤井教授のいわ
れるような現象は、消費増税がななくても起きています。
 個人消費の総額では、確かに藤井教授のいわれるように0・3
〜0・15と減っていますが、一人当たりで見ると、0・28〜
0・21とあまり差がないです。
            ──片山さつき自民党税制調査会幹事
─────────────────────────────
 片山議員は、藤井教授の突き付けた問題に正面から向き合おう
とせず、逃げています。明らかに説得力に欠けています。人口が
減って行くのだから、一人当たりの消費を増やさなければならな
いのに、消費から罰金を取る消費税を増税すれば、経済は奈落の
底に落ちるという藤井教授の主張には強い説得力があります。
           ──[消費税は廃止できるか/022]

≪画像および関連情報≫
 ●藤井教授の勝ち/TOGETTER
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  ◎普通に聞いていれば藤井教授の勝ち。片山は日本が駄目な
   理由は滔々と述べらるが、日本を良くする為の事は何にも
   言えてない。藤井教授は、明確に消費税を下げれば、消費
   が増えて、景気も財政も上向くと述べている。この差は大
   きい!
  ◎そもそも総研・消費税どうする。片山議員「成長するには
   全世代型社会保障で70歳まで就労可能とし支え手側に回
   ることで乗り切る」藤井教授、キッパリ「政府の考え方は
   完全な誤り、京大教授として確信している。消費税を5%
   に軽減すれば消費は回復、成長を実現し税収も大幅に増え
   る」藤井教授の勝ち。
  ◎自民党の片山は、庶民(お前たち愚民)が70歳まで働い
   て、税金徴収されて、年金を差し送りしろ!どうすれば景
   気(政府や企業のみ)は景気が良くなる。藤井教授は自民
   党の考えは完全にキチガイ。そんなことより一回消費税を
   5%に戻してみー。一気に景気(みんな全国民)が回復し
   潤う! 藤井教授の勝ち。   https://bit.ly/2OsUpSV
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藤井聡京都大学大学院教授のフリップ.jpg
藤井聡京都大学大学院教授のフリップ
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 消費税は廃止できるか | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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