2020年01月23日

●「お金は誰かの借金として作られる」(EJ第5172号)

 「日銀がお札を刷って世の中に流通するお金の量を増やす」と
よくいいます。この表現は多くの誤解があります。日銀はお札を
刷っていないし、世の中にばら撒いてもいません。それに、この
ようにとらえてしまうと、金融の仕組みを間違って理解してしま
う恐れがあります。
 大西つねき氏がいうように、世の中のお金は「誰かの借金とし
て発行」されます。もっと正確にいうと、世の中のお金の増減は
借金の増減であるといえます。中央銀行の役割は、それをコント
ロールすることです。その目的は「物価の安定」です。
 世の中のお金の量を増やすには、世の中の借金の量を増やせば
よいのです。それを実施するのは民間銀行です。そのため日銀は
民間銀行への貸出金利を上下させてコントロールします。金利を
下げれば、お金を借りようとする企業や人が増えますし、上げれ
ばその逆のことが起きます。
 しかし、日本の場合、デフレが深化・長期化して、金利がほぼ
ゼロになっており、その上下の調節が効かなくなっています。金
利をゼロ以下にはできないからです。そこで日銀は銀行が貸し出
しを増やしたくなる政策を実行するのです。それが「量的緩和」
という政策です。デフレになると、銀行は企業や個人にお金を貸
さなくなります。返済不能になって焦げ付きを出し、経営状況を
悪化させたくないからです。そして、国債を大量に購入して、国
債で金利を稼ごうとします。
 そこで日銀は、銀行が大量に保有する国債を強制的に買い上げ
その代金を、銀行が日銀に開設している当座預金口座に振り込み
ます。中央銀行は「銀行の銀行」であり、民間銀行に対して、そ
ういう強大な権限を持っているのです。
 日銀が、銀行の保有する国債を買い上げ、その代金をその銀行
の日銀当座預金口座に振り込むと、何が起きるでしょうか。当座
預金には、基本的には金利は付かないので、金利の付く国債を日
銀に強制的に買い取られ、その代金を金利の付かない当座預金に
入金されることを意味します。つまり、日銀としては、銀行は
金利の分だけ稼ぎが減るので、民間への貸し出しを増やすだろう
という期待しているのです。
 しかし、それでも大きな効果が見られないので、日銀は、20
16年2月16日から、各銀行の当座預金残高のごく一部に「マ
イナス0・1%」の金利を付けるマイナス金利政策をはじめたの
です。それまでは、当座預金にお金を寝かしておいても金利が付
かない状態だったものが、マイナス金利政策になると、マイナス
金利の該当部分は、0・1%損をすることになります。そうすれ
ば、当然銀行は民間への貸し出しを増やすに違いないとする金融
政策です。この政策は現在も続けられていますが、その効果は今
ひとつという状況です。
 この日銀のマイナス金利政策について、日本のエコノミストで
日本銀行政策委員会審議委員、元野村證券金融経済研究所経済調
査部長の木内登英氏は、自身のコラムにおいて、次のように論評
しています。
─────────────────────────────
 この異例の(マイナス)政策が、日本銀行の2%の物価目標達
成の助けとはならなかったのは、今や誰の目にも明らかであるが
それだけでなく、経済にプラスの効果をもたらした証拠も見いだ
せない。導入直後には住宅ローンを増加させた銀行も見られたが
これは貸出金利引き下げを通じた他行からの肩代わりによるとこ
ろが大きく、金利低下で新規借入れ需要が高まった訳ではない。
 むしろ、マイナス金利政策の導入は、金融機関の間で金利引下
げ競争を煽るきっかけとなり、その収益環境を著しく悪化させて
しまった。それは、金融機関の金融仲介機能を低下させ、適切な
資源配分を妨げるなどして、長い目で見て経済活動に深刻な悪影
響を与える可能性がある。この点から、マイナス金利政策が経済
活動に与えるマイナス面は明らかだ。 https://bit.ly/38qjghL ─────────────────────────────
 これほどまでに日銀が政策を展開しても、銀行の民間への貸出
は増加していません。銀行に大量の資金は眠ったままです。これ
は既に述べたように、GDPが成長しないからです。これは、日
銀の責任ではなく、政府の経済の舵取りに問題があることの証拠
です。かぎを握るのは、あくまで経済の成長なのです。
 以上でわかるように、日銀はお金を作って(印刷して)、世の
中にばら撒いているのではなく、金利を調節したり、民間銀行の
保有する国債を買い取ったり、その一部の金利をマイナスにした
りしています。通貨の発行権を握っているのは日銀ではなく、政
府です。日銀は政府の子会社であり、銀行の国債の買い取りも、
かたちのうえでは政府が日銀に指示してやらせているのです。実
際は、日銀の判断で実施しているのですが、あくまでかたちのう
えでのことです。
 ここで、「通貨はどのようにして増やせるのか」の話に戻りま
す。実際にお金を増やしているのは銀行です。銀行が企業や個人
に貸し付けを行うと、「信用創造」というシステムによって、世
の中に流通するお金の量が増加するのです。この「信用構造」に
ついては、前回テーマの12月3日のEJ第5141号で解説し
ていますので、参照してください。  https://bit.ly/2TGWNZG
 この「誰かが100万円を銀行に預ける」からはじまる話です
が、分かりやすそうで、意外によくわからないものです。それは
理屈としてはその通りなのですが、あまり現実的な話ではないか
らです。よく難しい話をするときに、何かに例えて話をする人が
多いですが、このやり方では、一応わかった気になるものの、本
当の意味で理解しているとはいえないからです。
 かえって少し面倒でも、ある特定年度の実際の予算案の数字を
使って、お金の動きをていねいに追った方が、理解しやすいもの
です。そこで明日のEJで、現実にすこぶる近い政府支出とお金
の動きについて詳しく説明をすることにします。
           ──[消費税は廃止できるか/013]

≪画像および関連情報≫
 ●国が持つ絶対的な権力「通貨発行権」vs「仮想通貨」
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   国家は様々な権力を保有しています。例えば、国家運営の
  財源確保のために国民から税金を徴収する課税権、治安を守
  るために犯罪を取り締まる警察権など様々な権力が存在しま
  すが、その中でも近代国家において特に重要な権力が通貨発
  行権です。通貨発行権とは、名前の通り通貨を発行する権利
  の事で、円やドル、ユーロなどの貨幣を発行して市場に供給
  する事ができる権利の事を指します。
   現代の経済において、通貨発行権はとても重要で、信用が
  無い国が過度に通過を発行してしまえばその通貨の相対的な
  価値は下がりますし、欲しいという人が多いのに通貨の量を
  国が過度に制限していればその通貨の価値は上がります。こ
  の通貨の価値が経済に与える影響は大きく、日本でも円安に
  よって輸出業産業の競争力が高まって景気が良くなったり、
  円高によって輸入製品の値段が安くなったりと私たちの生活
  に国によって発行された通貨の量は密接に関連しています。
   このように、通貨の発行によってその価値をコントロール
  するのは、その国の専属的な権利でしたが一方で最近誕生し
  た仮想通貨は各国が通貨発行権によってコントロールできな
  いお金です。すなわち、皆がビットコインで取引をすれば通
  貨の供給をコントロールする事によって景気をコントロール
  する事ができなくなるのです。  https://bit.ly/37eLkV0
  ───────────────────────────

「マイナス金利とは何か」.jpg
 
>「マイナス金利とは何か」>
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 消費税は廃止できるか | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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