2020年01月22日

●「38年間のデータが示す日本の姿」(EJ第5171号)

 添付ファイルのグラフは、1980年〜2018年までの38
年間の次の4つのファクターの推移を示したものです。既出の大
西つねき氏の本に出ていたものです。グラフの作成者は、大西つ
ねき氏自身です。
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         1.マネーストックM2
         2.      GDP
         3. 国内銀行貸出残高
         4.     国債残高
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 既に説明しているように、「マネーストックM2」は、日本中
の現金・預貯金のうち、郵便貯金(ゆうちょ銀行)や農協に預け
た分を差し引いた金額のことをいいます。本当は、マネーストッ
クM3と比較すべきですが、38年間となると、データの継続性
の関係上、M2を使うことになります。
 添付ファイルを見てください。バブル崩壊によって、1991
年から1993年まで信用収縮が起きています。1のM2は一貫
して右肩上がりで上昇しています。これは、お金の量がどんどん
増えていることを示しています。しかし、信用収縮時期には一時
的に上昇はストップしています。
 信用収縮によって、民間銀行の貸出が、500兆円から400
兆円ラインまで、100兆円下がっています。3がそうです。つ
まり、銀行がお金を貸さなくなったというわけです。
 その理由は、4のGDPの横ばいにあります。経済が信用収縮
以降、成長せず、約25年間ずって横ばいだからです。経済成長
がないと、銀行は貸し出しを増やすことはできないのです。
 このように、銀行が貸し出しを増やせないとなると、誰かが借
金を増やす必要が出てきます。それを示しているのが2の国債残
高の増加です。つまり、政府が借金を増やし、お金を発行しつづ
けたのです。これが1のマネーストックM2を増加させているこ
とがグラフから読み取れます。これは、現在のお金の発行の仕組
みがそうさせているのです。
 このロジックが正しいとすると、これを解決するカギは経済が
成長すること、すなわち、GDPが伸びることです。GDPが成
長すると、銀行は貸し出しを増やし、それによってお金が増えて
も、それに見合う実体価値が生産され、消費されるので、借り手
は問題なくお金を返済できるので、銀行はさらに資金を貸し出せ
る好循環を生むことになります。かつての高度成長期はこの循環
うまく行われ、日本は米国に次ぐ世界第2位の経済大国になった
のです。
 しかし、バブル崩壊による信用収縮によって経済成長が止まり
それが長期化すると、事態は一変します。これについて、大西つ
ねき氏は、次のように述べています。
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 日本の場合、バブルの発生と崩壊を契機に経済成長が止まりま
した。バブル崩壊後に最初に起きたことは信用収縮です。信用収
縮とは信用創造の逆、つまり、信用(クレジット)が破綻して借
金が減り、同時にお金が減ることを言います。
 例えば、不良債権を処理したり、貸し剥がしという形で債権を
回収したり、貸し渋ったりしてお金を貸さなくなれば、借金が減
り、お金も減ることになります。したがって、このバブルの発生
と崩壊をきっかけに、順調にお金と借金を増やし続けた時代は終
わりを告げました。(中略)
 まず、銀行がお金を貸さなくなりました。バブル時期のピーク
で、500兆円ぐらいだった民間銀行の貸出残高は、バブル崩壊
後に急速に減り、一時は約400兆円までほぼ100兆円も減り
ました。つまり、その分のお金が減ったということです。
 ただしこれは一時的にはあり得る話です。銀行が膨らませすぎ
たお金と借金を縮小する。日銀も例えば、金利を上げるなどして
それを促すことがあります。バフルの時は正に、総量規制という
形で、その総額を抑えようとして、それがバブル崩壊のきっかけ
になりました。しかし、絶対にあり得ないのは、それがずっと続
くことです。          ──大西つねき著/白順社刊
 『私が総理大臣ならこうする/日本と世界の新世紀ビジョン』
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 このように、添付ファイルのグラフが意味していることは重大
です。そして、大西つねき氏は次のようにいうのです。
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 お金の発行は、誰かの借金として行われる。すなわち、「お金
の発行=借金の発行」である。       ──大西つねき氏
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 「お金の発行=借金の発行」の意味を理解するには、信用収縮
の逆の「信用創造」を理解する必要があります。「信用創造」に
ついては、前回のテーマで既に説明していますが、明日のEJで
は、さらに具体的なかたちで日本の現況について説明します。
 ここまでの検討で、この仕組みがうまくいくには、経済が順調
に成長する必要があります。しかし、日本の場合、バブル崩壊に
よるデフレ経済で、経済成長が実に27年もの間、止まったまま
です。これをどうするのかについて、その元凶のひとつとされる
消費税の廃止が果して可能かどうかを今回のテーマで追及しよう
としています。消費税の廃止によって、経済成長が目下回復しつ
つあるマレーシアのケースもあるからです。
 しかし、大西つねき氏は、現在の「お金の発行=借金の発行」
であるとする仕組みそのものに問題があると指摘し、その具体的
な解決プランを提案しています。そのプランは、なかなか興味深
いものですが、それを理解するには、いくつかの前提知識が必要
になるので、このところ大西氏の所説をご紹介しているのです。
大西氏は金融のプロであるだけあって、精緻にしてユニークな財
政論を展開しています。検討する価値はあると思います。
           ──[消費税は廃止できるか/012]

≪画像および関連情報≫
 ●「バブルの発生と崩壊の仕組み/信用創造と信用収縮」
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   バブルとは、その名の通り『泡』です。その泡は、信用創
  造と信用収縮を繰り返しながら、10年から20年のサイク
  ルで世界中に起こっては消えていきます。そこで今回は、信
  用創造と信用収縮で起こるバブルの発生と崩壊の仕組みを考
  えていきます。
   金融リスク(危機)の原因は銀行にある?銀行がお金を稼
  ぐ仕組みでもお伝えした通り、銀行は私達から預金としてお
  金を集め、その預金の一部を日本銀行(中央銀行)に預けれ
  ば、残りの資金を貸し付けに充てることができます。銀行は
  ビジネスを成り立たせるために、リスクが低ければ融資を繰
  り返し続け、その融資したお金から新たに預金が生まれます
  ので、銀行の預金残高はどんどん増えていきます。
   これが、信用創造と呼ばれる現象で、社会全体の中でお金
  の量を増やし、経済を発展させていきます。例えば、家を買
  うのに銀行からお金を借りた場合、現資産は住宅ローンの頭
  金だけで、残りは信用を担保にお金が膨れ上がります。そし
  て、その住宅ローン債権が市場で売買され、「住宅ローン債
  権担保証券」という金融商品として現資産から膨れ上がった
  実体のないお金がどんどん生まれていくのです。住宅ローン
  による信用創造の典型的な例は、民間金融機関と住宅金融支
  援機講が提携して販売している、長期固定金利ローン『フラ
  ット35』なのです。      https://bit.ly/360q9os
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 ●グラフ出典/──大西つねき著の前掲書より

マネーストックとGDP、借金の推移.jpg
マネーストックとGDP、借金の推移
 
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 消費税は廃止できるか | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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