2019年12月27日

●「なぜ建設国債は伸びていないのか」(EJ第5159号)

 財務省のサイトで、国の財務書類を見ていると、興味ある事実
をたくさん見ることができます。そのひとつに「建設国債」があ
ります。平成29年度(2017年)の「公債残高の内訳」は、
次のようになっています。
─────────────────────────────
  ◎公債残高の内訳
   建設国債   274.6兆円(+ 1.3兆円)
   特例国債   555.3兆円(+23.0兆円)
    その他    27.6兆円(▲ 1.0兆円)
   ――――――――――――――――――――――
          857.5兆円(+23.4兆円)
                  https://bit.ly/2EPaX2e ─────────────────────────────
 これによると、いわゆる公債(以下国債)の残高は、2017
年度においては約858兆円あることがわかります。その内訳を
みると、そのうち、約555兆円が「特例国債」で65%を占め
前年度から23兆円も増えていることがわかります。これに対し
て約275兆円が「建設国債」であり、32%を占めています。
前年度から1・3兆円増えていますが、その伸びは「特例国債」
に比べると、少ないです。
 ここで特例国債と建設国債の違いをしっかり頭に入れる必要が
あります。国債は、政府の借金ですが、1975年までは、国債
といえば建設国債を意味していたのです。日本の財政は、財政法
第4条において、借金に依らない財政、財政収支の均衡を原則に
掲げています。
─────────────────────────────
◎財政法第4条
 国の歳出は、公債又は借入金以外の歳入を以て、その財源とし
なければならない。但し、公共事業費、出資金及び貸付金の財源
については、国会の議決を経た金額の範囲内で、公債を発行し又
は借入金をなすことができる。    https://bit.ly/37apNN4
─────────────────────────────
 この財政法第4条の但し書きで認められている国債は建設国債
です。国の歳出に関しては、あくまで税収によって行わなけれな
らないとしていますが、道路や橋などのインフラの建設、つまり
投資的経費については、国債の発行を認めています。これが建設
国債です。
 実際に日本の財政は、1965年までは、入ってくる税収の範
囲内で歳出を行う均衡財政主義の原則のもとで運営されてきたの
です。しかし、国を発展させるには、インフラの建設などの投資
的経費が必要になりますが、それまで税収で賄うことは不可能で
あり、そのさいには建設国債を発行してそれを行うことが財政法
で定められているのです。
 第1回の東京オリンピックが行われた1964年頃から、19
75年頃までの約10年間は、この建設国債が盛んに発行され、
インフラ建設と整備が急速に進められたのです。この建設国債に
関しては、それに対応する資産があることと、その返済ルールが
きちんと決められており、そういう意味で心配のない借金であり
政府の借金から外しても何ら問題はないのです。
 しかし、1970年代に入ると、日本は、2度にわたる石油危
機に直面し、その後、経済成長率が大幅に低下するという重大な
変化を経験します。これによって、恒常的な財源が不足するとい
う事態に陥ったのです。これを受けて、いわゆる赤字国債の大量
発行が始まります。
 赤字国債を発行するには、毎年度、そのための特例の法律を定
めて、その法律に基づいて国債が発行されます。そのため、この
国債を「特例国債」と呼ぶのです。これが赤字国債です。この残
高が、2017年現在、約555兆円あり、毎年積み上がってい
ることになります。この特例国債の問題点について、経済学者の
植草一秀氏は、自著で次のように述べています。
─────────────────────────────
 赤字国債は国債発行によって調達した資金を、経常的な支出に
充ててしまうため、建設国債と異なり、借金に見合う資産が形成
されない。この部分が将来へのツケまわしと表現されれば、確か
にその側面が存在する。したがって、政府債務のなかで、問題が
あると言わざるを得ないものが特例国債ということになる。
               ──植草一秀著『日本の再生/
    機能不全に陥った対米隷属経済からの脱却』/青志社刊
─────────────────────────────
 添付ファイルをご覧ください。これは、日本の国債種別発行残
高の推移を示しています。これによると、いわゆる赤字国債(特
例国債)は右肩上がりで増えていますが、建設国債は2000年
以降、ほとんど横ばいであることが分かります。
 これは何を意味しているかです。はっきりしていることは、経
済がさかんに成長しているときは、建設国債は増えるはずですが
デフレから脱却できずに、経済がまるで成長しないため、特例国
債だけが増える結果になっています。
 明らかに日本は経済政策を間違えています。三橋貴明氏による
と、次の悪循環に陥っているというのです。「デフレ深刻化→所
得停滞→税収不足→赤字国債発行→「国の借金で破綻する」→緊
縮財政→デフレ深刻化」そして最後にこう結んでいます。「ここ
まで愚かな国は人類史上に先例がない」と。
 今日のEJは、2019年の最後のEJになります。新年は1
月6日からの発行になります。既に申し上げているように、テー
マは変わりますが、基本的には10月7日からはじめたテーマの
第2部になります。なぜ同種のテーマを続けるかというと、20
20年は「消費税」が政治の大きなテーマになるからです。
 本年のEJのご愛読を感謝するとともに、新年もEJをよろし
くお願いいたします。どうか良いお年をお迎えください。
        ──[消費税増税を考える/057/最終回]

≪画像および関連情報≫
 ●公共投資は本当に日本の負債を増やしたのか/三橋貴明氏
  ───────────────────────────
   「日本政府の負債が増え続けているのは公共投資をやりす
  ぎたからだ」という話を聞いたことがありませんか?
   「日本政府の負債が増え続けているのは公共投資をやりす
  ぎたからだ」というのは本当でしょうか?ここではそれを検
  証してみたいと思います。
   ですがその前に、このようなもっともらしい言説に惑わさ
  れず、真実を見極めるために、三橋貴明が使っている分析手
  法はいくつあると思いますか?
   実は“たったの3つ”しかありません。この3つを知って
  磨いていくだけであなたはきっと賢くなります。イメージで
  語る連中に騙されなくなります。なぜここまで言い切れるの
  か?それは・・・。あなたがこのような情報の分析手法をこ
  れまで一切学んだことがないはずだからです。私たちは、い
  い加減な情報発信をするマスメディアに日々振り回されてい
  ます。ウンザリされている方も多いのではないでしょうか。
   現代人は情報リテラシー(読み取り能力)がないと言われ
  ますが、ではどうすれば良いのか、何を学べばいいのか、具
  体的なことは誰も教えてくれません・・・。それもそのはず
  私たち情報を受け取る側の国民は、情報の分析手法や、真実
  の見極め方なんて学んだことがありません。
                  https://bit.ly/2tRVwUR
  ───────────────────────────
 ●グラフの出典/三橋貴明著『米中覇権戦争/残酷な未来透視
  図』/ビジネス社刊

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日本の国債種別発行残高の推移.
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 消費税増税を考える | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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