2019年12月24日

●「財務官僚の天下り3大ポストとは」(EJ第5156号)

 キャリア官僚、なかんずく財務官僚は、なぜ天下り先の確保に
必死になるのでしょうか。
 それには、焦りがあると思います。かつて財務省の天下り先と
いえば、次の3大ポストがありました。しかし、これらのポスト
は、並みの財務官僚では、いずれも務まらないポストになってい
るのです。
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        1.   日本銀行(日銀)
        2.東京証券取引所(東証)
        3. 日本開発銀行(開銀)
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 第1に、日本銀行ですが、ここは最もハードルが高いポストで
あるといえます。現在の黒田東彦日銀総裁は、東大法学部出身の
元財務官僚ですが、主として国際金融と主税畑でキャリアを積み
「ミスター円」として知られた榊原英資氏の後任として、財務官
に就任しています。
 1999年から財務省を退官するまでの3年半にわたってこの
ポストにあり、2003年に一橋大学大学院教授を経て、アジア
開発銀行総裁に就任、2013年3月まで務めています。普通の
財務官僚とは違うのです。黒田東彦日銀総裁について高橋洋一氏
は、次のように述べています。
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 現在の黒田東彦総裁は、金融政策を勉強した人なので、日銀に
行くことができましたが、いまや並みの財務官僚には務まらない
ポストです。経済学の理解は必須で、世界の中央銀行のトップと
渡り合うには、少なくとも博士号ぐらいはないと、会話になりま
せん。                   ──高橋洋一著
      『「消費増税」は嘘ばかり』/PHP新書1174
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 第2に、東京証券取引所ですが、2001年に株式会社に組織
変更されるまでは、大蔵官僚の天下りの指定席だったのです。2
013年に旧大阪証券取引所の株式市場も統合し、米国ニューヨ
ーク証券取引所、英国ロンドン証券取引所とともに、「世界三大
証券取引所」の一つといわれています。
 2000年以降、証券・金融メカニズムが複雑化し、2004
年に元大蔵官僚の社長が退いてからは、東京証券取引所の生え抜
きや証券会社の大物トップが社長を務めるようになり、天下りは
困難化しています。証券のプロでも何でもない財務官僚にトップ
が務まるはずがないからです。
 第3に、日本開発銀行は、1951年に設立された全額政府出
資の政府系金融機関ですが、1999年に日本政策投資銀行に業
務を引き継ぎ解散しています。このポストについて、高橋洋一氏
は次のようにコメントしています。
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 本来、日本政策投資銀行は完全民営化して、政府からの資金提
供の流れを断ち切る予定でした。そうすれば財務官僚の天下りも
消え、三兆円弱の出資金が戻ってきて借金の返済に充てることも
できたでしょう。「金の切れ目が緑の切れ目」で政府関係機関を
完全民営化し、政府からの出資が終われば、天下りもなくなりま
す。補助金も口利きもないのに、わざわざ官僚を雇おうとする機
関はおらず、各機関のプロパーが社長・役員に就くようになるは
ずです。
 政府関係機関に天下り官僚が次々と来るため、プロパーの幹部
が行き先を失ってしまい、結局、孫会社のようなものをつくり、
天下りします。玉突き状態のように官庁OBが入ってこなくなる
ことは、政府関係機関の人にとっても大歓迎だと思います。
                ──高橋洋一著の前掲書より
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 大蔵省の時代から定番ポストといわれたこれらの天下りポスト
が、今や簡単には天下りできなくなりつつあります。このように
して、天下りポストは全体として減ってきているのです。
 そういう状況の下で、財務省は、現在でも管理下にある特殊法
人をいろいろな理屈をつけて、天下り先として確保しようとして
います。そのひとつに日本たばこ産業株式会社(JT)がありま
す。このJTについて、財務省は「政策目的の特殊法人は、民営
化しても株式の保有を続ける必要がある」として、現在もJT株
を保有しています。
 日本たばこ産業株式会社(JT)は、1985年4月に設立さ
れ、日本専売公社のタバコ事業を引き継ぎ、現在にいたっていま
す。日経平均株価およびTOPIXの構成銘柄の1つです。M&
Aにより、たばこ事業を世界展開しており、企業別の世界シェア
は、2018年時点で第4位(8・4%)です。2019年現在
JTの会長には、元財務事務次官の丹呉泰健氏が取締役会長を務
めています。
 財務省がJTの株保有に現在でもこだわっているのは、何とか
してJTを天下り先として残したいという意思のあらわれである
と考えられます。このJTに対する財務省のかかわり方について
の高橋洋一氏のコメントです。
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 たばこの健康問題が取り沙汰されるなか、「なぜ政府が株を保
有して、片方の立場に立つようなことをするのか」といわれて、
財務省も抵抗しきれなくなりました。当初は100%の株を保有
していましたが、やがて50%に下がり、33%強にまで減りま
した。それでも現在、2・4兆円分の株式があります。何の政策
目的もないのに、政府が一企業に2兆円を超える出資をする必要
はありません。完全民営化して政府保有株をゼロにすれば、2兆
円を政府債務の返済に充てられるし、官僚の天下りも難しくなり
ます。             ──高橋洋一著の前掲書より
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            ──[消費税増税を考える/054]

≪画像および関連情報≫
 ●読売新聞と安倍政権の関係
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   産経新聞の記事では、主な財務次官OBの進路先として、
  丹呉泰健氏が日本たばこ産業会長、勝栄二郎氏がIIJ社長
  真砂靖氏が日本テレビホールディングス社外取締役と書かれ
  ている。それぞれ木下氏の前々々任、前々任、前任の財務次
  官である。
   ただ、丹呉氏は、読売新聞グループ本社(と東京本社)の
  監査役をしていた(2010年12月〜12年12月)。ま
  た、その後任次官の勝氏も、同じく読売新聞東京本社監査役
  に就任した(2014年6月)。つまり、日テレHD社外取
  締役の真砂氏を含め最近の財務次官は、3代続いて読売・日
  テレグループにお世話になっている。
   その一方で、最近、読売新聞の変貌ぶりも話題になってい
  る。ジャーナリストの須田慎一郎氏によれば、読売のスタン
  スは、安倍政権寄りになっているという。安倍政権が、読売
  を「特別扱いしている」とも。某高官の話として「もう朝日
  新聞や毎日新聞は読む必要はありませんよ。新聞は、読売の
  一紙だけ読んでいれば十分」らしい。最近の朝日新聞騒動を
  踏まえて、財務次官の天下り先を読み解くと、脈絡のない世
  間の動きがちょっと見えてくるような気がする。朝日新聞の
  ヘマの背後で、天下りが難しくなってもタダでは転ばない財
  務省とそれをちゃっかり取り込む読売があった。
                  https://bit.ly/35Q64SC
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黒田東彦日銀総裁.jpg
黒田東彦日銀総裁.
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 消費税増税を考える | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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