2019年12月19日

●「菅政権がPB目標を導入した理由」(EJ第5153号)

 よく考えてみると、財務省の増税路線を突き進め、「社会保障
と税の一体改革」を実現させたのは、当時の民主党政権での菅直
人内閣です。この内閣は国の経済に関する知識がきわめて不足し
ており、そこを財務省につけ込まれたのです。「プライマリーバ
ランスの黒字化」を目標に掲げたのもこの内閣です。
 旧民主党というと、何かにつけて鳩山元首相が槍玉に上げられ
批判されますが、財務省に完全に洗脳され、当時野党の自民党と
共謀して、亡国の消費増税を実現させた責任は、菅直人元首相と
野田前首相の2人にあります。現在の野党の弱体化、迷走ぶりは
この2つの内閣に対する国民の怒りが解けないからです。
 彼らは、財務省のいう「日本は深刻な財政危機にあり、破綻の
淵に立っている」という主張をアタマから信じ込み、増税路線を
突き進みます。加えて、2010年のG20トロントサミットに
おいて、財政の持続可能性の確保と健全化が強調され、「深刻な
財政問題に直面する諸国は健全化を加速する必要がある」との合
意がなされると、財務省の口車に乗って、菅政権は「2020年
までのプライマリーバランスの黒字化」を閣議決定しています。
これがいかに愚かなことであったかについて、三橋貴明氏は次の
ように述べています。
─────────────────────────────
 2011年3月11日に、東日本大震災が発生。東日本大震災
クラスの大規模自然災害が発生した以上、政府は国債でも何でも
発行し、速やかに財源を調達。復興に取り掛からなければなりま
せん。ところが、前年にPB(プライマリーバランス)目標が決
定されていました。復興予算は、もちろん「国債関係費を除く政
府の歳出」に該当します。東北の復旧・復興で新たな支出が生じ
た以上、政府は他の予算を削るか、もしくは「増税」をする必要
があったのです。結果、まさかとは思いましたが、復興特別税と
いう形の増税が行われました。しかも、復興増税は被災地からも
容赦なく徴収されたのです。もはや、ここまでくると「狂気」と
しか呼びようがありません。     https://bit.ly/2PVEkVR
─────────────────────────────
 なぜ、当時の菅直人政権が財務省にまるめ込められたのかにつ
いては、理由があります。国会の質疑で、「菅・林の乗数論争」
というのがあったのです。ここで「林」とは、自民党の林芳正議
員のことです。2010年1月26日の参議院予算委員会でのや
り取りです。といっても、詳しいことは忘れている人も多いと思
うので、小笠原誠治氏のブログを参考にして、その一部を再現す
ることにします。当時、菅直人氏は財務相です。▲▲は両者の発
言に対するコメントです。
─────────────────────────────
菅 :(自民党は)1兆円出して、1兆円しか効果がないような
 やり方をしてきて、経済の低迷を招いた。
林 :乗数効果のことを言っていると思うが、公共事業の乗数効
 果は、最低「1」ある。では、子ども手当の乗数効果はどれだ
 けあるのか?
菅 :1兆円出して、1兆円の効果しかないのは、事実上効果は
 ゼロだ。
▲▲菅財務相は「おうむ返し」をして何も答えていない。財務省
がきちんとサポートしていないか、したとしても大臣が乗数効果
自体を知らないので、理解できない。こういうとき、大事なこと
は知ったかぶりせず「知らない」というべきだ。
林 :私の質問は、子ども手当の乗数効果をどのくらいとみてい
 るか、ということだ。
長妻:民間最終消費支出を1兆円程度押し上げる。これは実質G
 DPを0・2%ほど引き上げる。
▲▲ここで長妻厚労相が助っ人に入って、役人のペーパーを読ん
でいるが、彼も内容を理解しているとは思えない。
林 :消費の効果を言ったので、使う額でその額を割ったら乗数
 が算出できる。
仙谷:子ども手当の乗数効果は計算していない。ただ1以上であ
 ることは間違いない。幼保一体化などをすれば1・3、1・5
 以上にもなる。
▲▲仙石行政刷新担当相まで助っ人に入ったが、「1以上」とい
うのは正しくない。1兆円支給されても、全額貯蓄に回れば「ゼ
ロ」である。            https://bit.ly/35oQs8h
─────────────────────────────
 結局、このやり取りは、林議員による「菅財務相、消費性向と
乗数効果の違いをご説明ください」という質問にまで発展するの
です。林議員としては、菅財務相が、この違いを知らないことが
わかったからです。みっともない話です。テレビ中継されている
参議院予算委員会において、財務相が経済学のいろはも知らない
ことがわかってしまったからです。もっとも経済に強い林芳正議
員と経済の基礎がわかっていない菅財務相では、はじめから勝負
は見えていたといえます。
 それを財務省の役人が十分なサポートをしていたとは思えない
のです。そういうところから、あるいはいうことを聞かせるため
に、わざと恥をかかせたのではないかといわれるのです。高橋洋
一氏はこのやり取りを次のようにコメントしています。
─────────────────────────────
S君:(消費性向と乗数効果、財務大臣どころか、経済学部の1
 年生でも知っていないといけないマクロ経済のイロハ中のイロ
 ハ)それを財務大臣が知らなかった!これはショックです。
教授:国民もショックだけど、菅さんもよほどショックだったん
 だろうね。おそらく「財務省の話に耳を傾けないと、赤っ恥を
 かき続けることになる」って思ったんじゃないかな。で、その
 日を境に、心を入れ替えて、財務省のいいなりになっていくわ
 け。──高橋洋一著『数学を知らずに経済を語るな』/PHP
─────────────────────────────
            ──[消費税増税を考える/051]

≪画像および関連情報≫
 ●【藤井聡】「プライマリー・バランス黒字化」の「悪行」
  ───────────────────────────
   【マスメディアは、PB黒字化が難しくなった事を批判し
  ている】政府の「基礎的な財政収支」を意味する「プライマ
  リーバランス」、略称PB。わが国政府は、2010年の菅
  直人内閣の時に、「2020年にこのPBを黒字化する」と
  いう目標をたてました。そして現在の安倍内閣も、この目標
  を引き継いだ財政運営をしています。
   その結果、「PB赤字」は、昨年度までで16兆円以上も
  削られました。そして2010年の頃の「半分」にまで縮小
  しました。これは、菅直人氏が建てた「中間目標」が達成さ
  れたことを意味しています。ただし、今年1月に公表した直
  近の財政シミュレーションによると、このままPB赤字は縮
  小していきますが、2020年時点でも「8・3兆円」の赤
  字が残される見込み――となっています。これについて、多
  くのマスメディアが「批判的」な論調を展開しています。例
  えば毎日新聞は、「基礎的財政収支:20年度赤字8.3兆
  円険しい財政再建」という見出しで、政府を非難する記事を
  配信しています。この記事で、財政再建に積極的でない安倍
  内閣を批判し、最終的に、『「首相はむしろ、教育無償化や
  子育て支援など歳出拡大を伴う施策の強化に意欲を見せてお
  り、黒字化目標を変えたがっているのでは」(首相周辺)と
  の声も出ている。財政健全化は一層難しくなりそうだ』
                  https://bit.ly/2to7gOx
  ───────────────────────────

「菅/林乗数論争」.jpg
「菅/林乗数論争」
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 消費税増税を考える | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス: [必須入力]

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

RDF Site Summary