2019年12月09日

●「高速道路も一般道路も売却できる」(EJ第5145号)

 前号の復習です。現在、日本国のバランスシートには、年金積
立金の運用寄託金の費目で121兆円が計上されています。この
金額は、日本政府の莫大な借金の穴うめに使えるではないかとの
問いに、財務省は「将来の年金給付のため積み立てられている」
として、取り崩せないとしています。
 この財務省のいい分は、もっともなように聞こえますが、これ
ウソです。現在日本の公的年金は2004年から「賦課方式」に
なっており、この方式には積立金は発生しないのです。現在積み
上がっている121兆円は「積み立て方式」時代の積立金であっ
て、その10%程度を安全のために残し、法律を変更すれば、約
100兆円は使用可能です。財務省は、こういうウソを平気でつ
くので、騙されないよう注意が必要です。
 続いて、「資産はあるがそのほとんどは使えない」とする財務
省の別の回答を示します。
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 道路・堤防等の公共用財産については、例えば、国道(63兆
円)などや堤防等(67兆円)として、公共の用に供されている
ものであり、また、収益を生むわけでもないので、買い手はおら
ず、売却の対象とはなりません。       ──森永卓郎著
  『消費税は下げられる!/借金1000兆円の大嘘を暴く』
                     角川新書K126
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 確かに、「資産があるじゃないか。借金が大変なら、なぜ売ら
ない?」とは指摘するものの、国民も道路や橋まで売れといって
いるわけではありません。他に売れる資産があるでしょうといっ
ているだけです。
 しかし、「道路や橋は売れない」と財務省がいい切るのには問
題があります。そこまでいうと、ウソになります。なぜなら、イ
タリア政府は、高速道路を保有する政府系のアウトストラーデ社
を民営化し、株式を売却しているからです。イタリアは政府負債
が大きく、EU委員会から政府債務残高をGDPの60%以内に
するよう求められていたのです。これによって、イタリア政府は
高速道路のために抱えていた負債は消滅し、政府債務はGDPの
60%以内に収まったのです。しかし、イタリアの国民は、これ
によって何の不便も感じていないのです。アウトストラーデ社は
普段と変わりないサービスを提供しているからです。
 財務省は、政府系の企業がどんなに効率の悪い経営をしていて
も、絶対に売却しようとせず、必死になってそれを守ろうとしま
す。なぜなら、売却してしまうと、自分たちが天下りする企業が
少なくなるのを本能的に恐れるからです。その代わりに、国民に
は平然と消費増税を押し付けてきます。
 少し脱線しますが、柳瀬唯夫氏という元経産省のキャリア官僚
を覚えておられると思います。例の加計学園が新設する大学の獣
医学部認可をめぐって、当時、首相秘書官だった柳瀬氏が「首相
案件」と発言したことが問題視されました。2018年5月に参
考人招致の場において、柳瀬参考人は、徹頭徹尾首相をかばう答
弁をして乗り切り、7月には早々に退官しています。
 その柳瀬氏は、現在、財務省所管の「国際協力銀行」(JBI
C)のシニアアドバイザーに就任しています。ここは経産省とも
関連があり、なかなかよいポストです。明らかな論功行賞人事と
いえます。このように、キャリア官僚たちは、自分たちの天下り
の場所だけは絶対に手放さないのです。それは天下国家どころか
国民のために尽くすどころか、自己中心そのもの。官僚の質も落
ちたものです。
 なお、「高速道路だけでなく一般道路も売れる」と森永卓郎氏
は次のように述べています。
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 実は日本の高速道路もすでに株式会社化されている。ただし、
そのすべての株式は日本政府が保有している。だから、イタリア
と同じように、政府保有株を市場で売却してしまえば、道路に関
する政府の借金は、すぐにでも減らすことができるのだ。ただし
そう言うと、高速道路は売れても、料金収入を得ることができな
い一般国道は売れないだろうという反論がすぐに返ってくるだろ
う。しかし、一般国道を売ることも容易だ。一般国道の所有権を
証券化し、それを小口化して売りに出せばよいのだ。証券の所有
者には、国が道路の使用料を毎年支払うようにすればよい。いま
は超低金利の時代だから、証券の販売価格の0・1%くらいの使
用料を毎年国が支払えば証券の買い手はいくらでもいるだろう。
堤防も同じ仕組みを採れば、簡単に売却することができる。
                ──森永卓郎著の前掲書より
─────────────────────────────
 高速道路や一般道路や堤防などをわざわざ売却しなくても、政
府は、それぞれ100兆円規模の外貨証券、財政融資資金貸付金
を保有しています。これなどはすぐにでも売却に資産のはずです
が、財務省は、次のように反論しています。
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 外貨証券(82兆円)や財政融資資金貸付金(139兆円)は
FBや財投債という別の借金によって調達した資金を財源とした
資産であり、これらの借金の返済に充てられるものであるため、
赤字国債・建設国債の返済に充てることはできません。
(2009年当時)       ──森永卓郎著の前掲書より
─────────────────────────────
 日本政府が保有している外貨証券といえば、米国債がほとんど
です。この米国債について、森永卓郎氏は、「政府が円高を防ぐ
ために為替市場にドル買い・円売りの介入をしたときの残骸」と
表現しています。
 為替介入をするためにドルを買ったのですが、現金で持ってい
ても意味がないので、金利の付く米国債のかたちで保有していま
す。売ろうと思えば十分売れますが、日本政府は頑なに売ろうと
しません。       ──[消費税増税を考える/043]

≪画像および関連情報≫
 ●米国債保有で日本が2年ぶり首位6月、中国抜き返す
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  【ニューヨーク=後藤達也】米財務省が2019年8月15
  日発表した国際資本収支統計によると、日本が2017年5
  月以来、約2年ぶりに米国債の最大の保有国となった。6月
  の保有額は1兆1228億ドル(約120兆円)と5月より
  218億ドル増え、首位だった中国を抜いた。生命保険や年
  金基金などの機関投資家が比較的利回りの高い米国債への投
  資を増やしたとみられる。
   中国の6月の保有額は前月比23億ドル増の1兆1125
  億ドルだった。5月に米政府が中国への追加関税を表明して
  以降、市場では報復措置として米国債を売るとの観測もあっ
  たが、6月までは目立った動きはみられない。
   日本の財務省によれば日本の投資家は6月に海外の中長期
  債を3兆円強買い越した。その過半が米国債だった計算にな
  る。7月以降も日本は外債を買い越している。米国債の利回
  りは低下傾向が続いているが、日本や欧州よりは金利が高く
  為替リスクをとってでも米国債を買う投資家が増えている。
  米国債の急速な金利低下(価格上昇)を促す主要な買い手に
  もなっている。      https://s.nikkei.com/3521S1F
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柳瀬唯夫氏.jpg
柳瀬唯夫氏
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 消費税増税を考える | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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