2019年12月03日

●「マネタリーベース正しく理解する」(EJ第5141号)

 11月29日のEJで、アデア・ターナー元英国金融サービス
機構長官の話を取り上げましたが、民間銀行の信用創造について
次のように述べています。
─────────────────────────────
 民間金融機関の信用創造を厳しく規制するとともに、政府と中
央銀行については、インフレ目標の厳守を前提に、ヘリコプター
マネーを実施すべきである。
     ──アデア・ターナー元英国金融サービス機構長長官
             ──森永卓郎著/角川新書K126
  『消費税は下げられる!/借金1000兆円の大嘘を暴く』
─────────────────────────────
 ここで、「民間金融機関の信用創造」とは何かについて、考え
る必要があります。お金を作っているのは、日銀だけではなく、
民間銀行でも作っているのです。それが「民間金融機関の信用創
造」です。
 それでは、銀行はどのようにして、お金を生み出しているので
しょうか。
 銀行というのは、顧客から預かっている預金の範囲内でお金を
貸し出しているのではないのです。預かっているお金よりもはる
かに多い量のお金を貸し出しています。
 誰かがA銀行に100万円預けたとします。A銀行は、法定準
備率分(1%とします)の1万円を中央銀行である日銀に預ける
と、残りの99万円を誰かに貸すことができます。一般に銀行か
らお金を借りるときは、その銀行の口座を開設するので、銀行は
融資のときは自行内の借り手の口座に99万円と書くだけです。
この時点において、最初に預けた100万円はそのままですから
A銀行の預金は199万円に増えたことになります。
 借り手はそのお金を使い、B銀行の誰かの口座に振り込んだと
すると、B銀行はその金額の法定準備率分を日銀に預け、残りを
誰かに貸すことができます。この時点で、最初の100万円の預
金も、B銀行で99万円の振込みを受け取った人の預金も存在し
ていますから、さらに98万100円が生まれ、合計300万円
近くになっています。このようにして借金とお金がグルグルと回
りながら増えて行き、仮に法定準備率が1%だとすると、100
万円の預金から、最大1億円のお金を作り出すことができるので
す。これを「信用創造」といい、それが現代のお金の発行の仕組
みになっています。なぜ、最大1億円であるかについて、次の式
をご覧ください。
─────────────────────────────
        100万円÷0・01=1億円
─────────────────────────────
 歴史を振り返ってみると、日本のバブルは民間銀行がこの信用
創造を膨らませ過ぎたことが原因であり、2008年9月のリー
マンショックが100年に一度の経済危機をもたらしたのも、民
間銀行が金融工学を使って、とんでもない信用創造を行ったから
であるといえます。
 アデア・ターナー元長官が、このような歴史的事実を踏まえて
規制すべきは民間金融機関であって、政府や中央銀行にはもっと
自由度を与えてもよいのではないかといっているのです。
 この「信用創造」に関連して、「マネタリーベース」という言
葉を理解する必要があります。
─────────────────────────────
 マネタリーベースとは、「日本銀行が供給する通貨」のことで
ある。具体的には市中に出回っているお金である「流通現金」の
ことである。流通現金とは、次の合計値である。
   流通現金=「日本銀行券発行高」+「貨幣流通高」+
        「日銀当座預金」
─────────────────────────────
 「日本銀行券発行高」とは、1万円札などの「お札」のことで
す。毎年どのくらい作られているのかというと、最新の2019
年度については、全部で30億枚、内訳は次の通りです。
─────────────────────────────
       1万円券 ・・・ 10・0億枚
       5千円券 ・・・  2・4億枚
       2千円券 ・・・    0億枚
       1千円券 ・・・ 17・6億枚
─────────────────────────────
 「貨幣流通高」とは10円玉などの貨幣(硬貨)の流通高を合
計したものです。なぜ、「発行高」ではなく、「流通高」になっ
ているのかというと、貨幣については、日銀保有分が除かれてい
るので、「流通高」と表記することになっています。
 「日銀当座預金」とは、都市銀行や地方銀行などの金融機関が
日銀に開設しておかなければならない口座のことです。いわゆる
「マイナス金利」は、この当座預金の一部にのみ、かかっていま
す。日銀当座預金は、詳しい説明は避けますが、次の3層になっ
ており、金利との関係は次の通りです。
─────────────────────────────
       政策金利残高 ・・・ −0・1%
      マクロ加算残高 ・・・  0・0%
         基礎残高 ・・・ +0・1%
─────────────────────────────
 この3層のうちの「政策金利残高」には、「−0・1%」」の
マイナス金利がかかっています。なぜ、マイナス金利をつけるの
かというと、ごく簡単にいうと、多くなり過ぎる日銀当座預金を
抑えるためです。
 マネタリーベースとは、上記の「日本銀行券発行高」と「貨幣
流通高」と「日銀当座預金」の合計をいいます。つまり、日本中
に流通しているお金の合計です。マネタリーベースは、通貨発行
益に深い関係があります。明日のEJで説明します。
            ──[消費税増税を考える/039]

≪画像および関連情報≫
 ●マネーサプライ(貨幣供給量)とは何か
  ───────────────────────────
   貨幣(マネー)は、商品を購入したり、企業が設備投資を
  する場合など、経済活動のすべてにおいて必要なものだ。日
  本経済を大きな旅客機、消費や設備投資などの経済活動をそ
  のエンジンとすると、貨幣は「燃料」に相当する。燃料が十
  分に供給されていれば、エンジンの出力も強くなって機体が
  上昇し、景気が良くなる。反対に燃料の供給が不十分だと、
  エンジンの出力が低下、機体が下降して、景気が悪化する。
   この貨幣の量を示すのが、マネーサプライ(貨幣供給量)
  であり、旅客機のコックピットに取り付けられた「燃料計」
  ということができる。
   貨幣の供給源は、中央銀行である日本銀行(日銀)だ。日
  銀は、銀行を中心とした金融機関に貨幣を供給、銀行はそれ
  を企業や個人に融資する。融資を受けた企業が機械を購入す
  るなどの設備投資を行えば、機械を製造した企業に売却代金
  としての貨幣が流れる。また、個人が銀行から融資を受けて
  自動車を購入した場合には、自動車メーカーに貨幣が渡り、
  従業員の給料や新たな設備投資となって、さらなる流れが発
  生する。日銀が供給した貨幣は、こうした様々なプロセスを
  経て、経済全体に行き渡っていくことになる。日銀が供給す
  る貨幣が、流通している貨幣の源になることから、これをマ
  ネタリーベース、あるいは、ハイパワードマネーと呼んでい
  る。              https://bit.ly/37VfP3h
  ───────────────────────────

銀行の信用創造のメカニズム.jpg
銀行の信用創造のメカニズム

posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 消費税増税を考える | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス: [必須入力]

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

RDF Site Summary