機構長官の話を取り上げましたが、民間銀行の信用創造について
次のように述べています。
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民間金融機関の信用創造を厳しく規制するとともに、政府と中
央銀行については、インフレ目標の厳守を前提に、ヘリコプター
マネーを実施すべきである。
──アデア・ターナー元英国金融サービス機構長長官
──森永卓郎著/角川新書K126
『消費税は下げられる!/借金1000兆円の大嘘を暴く』
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ここで、「民間金融機関の信用創造」とは何かについて、考え
る必要があります。お金を作っているのは、日銀だけではなく、
民間銀行でも作っているのです。それが「民間金融機関の信用創
造」です。
それでは、銀行はどのようにして、お金を生み出しているので
しょうか。
銀行というのは、顧客から預かっている預金の範囲内でお金を
貸し出しているのではないのです。預かっているお金よりもはる
かに多い量のお金を貸し出しています。
誰かがA銀行に100万円預けたとします。A銀行は、法定準
備率分(1%とします)の1万円を中央銀行である日銀に預ける
と、残りの99万円を誰かに貸すことができます。一般に銀行か
らお金を借りるときは、その銀行の口座を開設するので、銀行は
融資のときは自行内の借り手の口座に99万円と書くだけです。
この時点において、最初に預けた100万円はそのままですから
A銀行の預金は199万円に増えたことになります。
借り手はそのお金を使い、B銀行の誰かの口座に振り込んだと
すると、B銀行はその金額の法定準備率分を日銀に預け、残りを
誰かに貸すことができます。この時点で、最初の100万円の預
金も、B銀行で99万円の振込みを受け取った人の預金も存在し
ていますから、さらに98万100円が生まれ、合計300万円
近くになっています。このようにして借金とお金がグルグルと回
りながら増えて行き、仮に法定準備率が1%だとすると、100
万円の預金から、最大1億円のお金を作り出すことができるので
す。これを「信用創造」といい、それが現代のお金の発行の仕組
みになっています。なぜ、最大1億円であるかについて、次の式
をご覧ください。
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100万円÷0・01=1億円
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歴史を振り返ってみると、日本のバブルは民間銀行がこの信用
創造を膨らませ過ぎたことが原因であり、2008年9月のリー
マンショックが100年に一度の経済危機をもたらしたのも、民
間銀行が金融工学を使って、とんでもない信用創造を行ったから
であるといえます。
アデア・ターナー元長官が、このような歴史的事実を踏まえて
規制すべきは民間金融機関であって、政府や中央銀行にはもっと
自由度を与えてもよいのではないかといっているのです。
この「信用創造」に関連して、「マネタリーベース」という言
葉を理解する必要があります。
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マネタリーベースとは、「日本銀行が供給する通貨」のことで
ある。具体的には市中に出回っているお金である「流通現金」の
ことである。流通現金とは、次の合計値である。
流通現金=「日本銀行券発行高」+「貨幣流通高」+
「日銀当座預金」
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「日本銀行券発行高」とは、1万円札などの「お札」のことで
す。毎年どのくらい作られているのかというと、最新の2019
年度については、全部で30億枚、内訳は次の通りです。
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1万円券 ・・・ 10・0億枚
5千円券 ・・・ 2・4億枚
2千円券 ・・・ 0億枚
1千円券 ・・・ 17・6億枚
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「貨幣流通高」とは10円玉などの貨幣(硬貨)の流通高を合
計したものです。なぜ、「発行高」ではなく、「流通高」になっ
ているのかというと、貨幣については、日銀保有分が除かれてい
るので、「流通高」と表記することになっています。
「日銀当座預金」とは、都市銀行や地方銀行などの金融機関が
日銀に開設しておかなければならない口座のことです。いわゆる
「マイナス金利」は、この当座預金の一部にのみ、かかっていま
す。日銀当座預金は、詳しい説明は避けますが、次の3層になっ
ており、金利との関係は次の通りです。
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政策金利残高 ・・・ −0・1%
マクロ加算残高 ・・・ 0・0%
基礎残高 ・・・ +0・1%
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この3層のうちの「政策金利残高」には、「−0・1%」」の
マイナス金利がかかっています。なぜ、マイナス金利をつけるの
かというと、ごく簡単にいうと、多くなり過ぎる日銀当座預金を
抑えるためです。
マネタリーベースとは、上記の「日本銀行券発行高」と「貨幣
流通高」と「日銀当座預金」の合計をいいます。つまり、日本中
に流通しているお金の合計です。マネタリーベースは、通貨発行
益に深い関係があります。明日のEJで説明します。
──[消費税増税を考える/039]
≪画像および関連情報≫
●マネーサプライ(貨幣供給量)とは何か
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貨幣(マネー)は、商品を購入したり、企業が設備投資を
する場合など、経済活動のすべてにおいて必要なものだ。日
本経済を大きな旅客機、消費や設備投資などの経済活動をそ
のエンジンとすると、貨幣は「燃料」に相当する。燃料が十
分に供給されていれば、エンジンの出力も強くなって機体が
上昇し、景気が良くなる。反対に燃料の供給が不十分だと、
エンジンの出力が低下、機体が下降して、景気が悪化する。
この貨幣の量を示すのが、マネーサプライ(貨幣供給量)
であり、旅客機のコックピットに取り付けられた「燃料計」
ということができる。
貨幣の供給源は、中央銀行である日本銀行(日銀)だ。日
銀は、銀行を中心とした金融機関に貨幣を供給、銀行はそれ
を企業や個人に融資する。融資を受けた企業が機械を購入す
るなどの設備投資を行えば、機械を製造した企業に売却代金
としての貨幣が流れる。また、個人が銀行から融資を受けて
自動車を購入した場合には、自動車メーカーに貨幣が渡り、
従業員の給料や新たな設備投資となって、さらなる流れが発
生する。日銀が供給した貨幣は、こうした様々なプロセスを
経て、経済全体に行き渡っていくことになる。日銀が供給す
る貨幣が、流通している貨幣の源になることから、これをマ
ネタリーベース、あるいは、ハイパワードマネーと呼んでい
る。 https://bit.ly/37VfP3h
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銀行の信用創造のメカニズム