2019年11月21日

●「日銀国債保有で政府債務が消える」(EJ第5133号)

 「ヘリコプターマネーはとても納得いかない」と考える人は多
いと思います。経済学者がこぞって反対していることについて高
橋洋一氏は、「経済学者はすこぶる会計に弱い。連結BSとかい
うと、さっぱりお手上げの学者が多いが、この程度は簿記レベル
の話である」といっています。
 そこで、平成27年度(2015年)末の日銀のバランスシー
トから、必要な数字を引き出して考えてみることにします。
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  ◎平成27年度末/日本銀行バランスシート
      【資産の部】
        金地金     4412億円
         現金     2099億円
         国債  3491955億円
   (資産の部合計)  4056481億円
      【負債の部】
      発行銀行券   955947億円
         預金  2829396億円
     うち当座預金  2754394億円
   (負債の部合計)  4020984億円
             ──森永卓郎著/角川新書K126
  『消費税は下げられる!/借金1000兆円の大嘘を暴く』
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 これによると、2015年末の日銀の資産は406兆円で、そ
のうち349兆円は国債であることがわかります。日銀の資産の
9割は国債なのです。負債の方をみると、発行銀行券、すなわち
日本銀行券が96兆円、日銀当座預金は275兆円、計371兆
円、この2つで負債の9割を占めています。
 したがって、日銀のバランスシートは、日銀券発行で得た資金
と銀行から預かっている当座預金で、国債を買っているという構
造になっていることがわかります。
 少し難しい2つの説明が必要です。
 1つは「日銀当座預金」です。日銀当座預金というのは、日銀
が、取引先の金融機関などから受け入れている当座預金のことで
す。それらの金融機関のうち、準備預金制度の対象となっている
金融機関(銀行預金残高1600億円超の信用金庫、農林中央金
庫)は他行との取引の決済をスムーズにするため、中央銀行の当
座預金口座に一定の準備預金を預け入れることが義務付けられて
います。この準備預金の最低金額(積むことが義務付けられてい
る金額)を超えて中央銀行に預けている預金を「超過準備」と呼
ぶのですが、この超過準備に付く金利をマイナスにする政策が、
「マイナス金利(政策)」です。
 2つは、日銀券の発行残高と、日銀当座預金の合計を「マネタ
リーベース」と呼んでいます。市中に出回っているお金の流通現
金と日銀当座預金の合計のことです。
 これらのことを頭において、経済アナリスト森永卓郎氏の次の
解説を読んでください。
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 国債を民間が保有していれば、政府は毎年国債の利払いをしな
ければならないし、満期がきたら、元本を返済しなければならな
い。しかし、日銀が持てば、話は別だ。政府はとりあえず日銀に
も利払いをしなければならないが、その利払い分は政府に戻って
くる。日銀は剰余金をすべて政府に納付することになっているか
らだ。また、日銀が国債を持ち続けてくれる限り、政府は元本を
返済する必要もないのだ。つまり、日銀が国債を買って、日銀券
を発行するということは、政府・日銀を一体として考えれば、国
債を日銀券にすり替えるということを意味する。日銀券に利払い
はされないし、元本返済がなされることは、もともとないから、
日銀が国債を買った瞬間に、借金が消えるのだ。
                ──森永卓郎著の前掲書より
─────────────────────────────
 ここでひとつ疑問が生じます。日銀は保有している国債を今後
どうするのでしょうか。
 この国債を日銀が保有し続ければ、政府の借金は消えたままで
す。しかし、日銀が金融政策の一環として、金融引き締めをしな
ければならないとき、日銀は国債を売ることになります。これは
金融緩和の逆をすることになります。
 金融緩和は、国債を買って、代金としての資金を提供すること
ですが、金融引き締めは、国債を売って、資金を回収することに
なります。別な表現でいうと、マネタリーベースを減らすことで
す。そうすると、売った国債は民間の手に戻ることになるので、
政府はその分の国債の利払いや元本返済の義務を負うことになり
ます。しかし、現在はデフレであって、日銀は国債を買うペース
を少し落とすだけでも十分な金融引き締め効果があるので、そう
いう事態がすぐ訪れることは考えにくいことです。
 日銀が、国債を買って保有すると、その分を政府の借金から棒
引きしてよいということに違和感を覚える人は少なくないと思い
ますが、それは「通貨発行益」というものが理解できていないか
らです。財務省は1000兆円を超す政府の借金を一般家庭の借
金に譬えて説明していますが、政府と一般家庭を同列に扱うこと
は大きな誤解を生みます。
 なぜなら、個人の借金は必ず返済しなければなりませんが、政
府の借金は返す必要があるかどうかは疑問です。もちろん借金が
増加することは避けなければなりませんが、それは、長期間にわ
たって少しずつ返済していけばいいだけの話です。
 それに政府は緊急の場合、通貨を発行することができますが、
それは個人にはできないことです。この場合、通貨を発行すると
発行者には「通貨発行益」が与えられます。これが理解できてい
ないと、日銀が国債を保有すると、政府の借金が減るのか、納得
できないと思います。明日のEJでさらに説明します。
            ──[消費税増税を考える/031]

≪画像および関連情報≫
 ●「通貨発行益」とは何か/シェイブテイル日記2
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   政府の収入、いわゆる歳入の源は、どこにあるのでしょう
  か。歳入=税収+国債ですか?いいえ。ちょっと違います。
  歳入=税収+国債+通貨発行益です。
   ではその通貨発行益とは一体何なのでしょうか。
  この重要な政府歳入源を知るか知らないかで、政府の財政に
  対する考え方は大きく異なってくるのは間違いありません。
  リフレ派の論客、高橋洋一嘉悦大学教授(大蔵省出身)は通貨
  発行益は、政府貨幣でも日銀券でも通貨を増やせばその殆ど
  が通貨発行益だという主張をしています。
   「金利がゼロなら貨幣と国債は完全代替物となるといえる
  が、実際には金利はゼロでない。だからこそ、マネタリーベ
  ースのところはシニョレッジ(通貨発行益)が発生するが、
  国債には発生しないのだ。これをイメージしやすくしたもの
  が、実は政府通貨のアイデアである。会計上の違いによって
  シニョレッジ(通貨発行益)の計上は、日銀の量的緩和では
  各期の利払い相当額、政府通貨発行では当期に全額となって
  いるが、現在価値ベースでみれば両者は同じ。要するに、マ
  ネタリーベースの増加額がシニョレッジ(通貨発行益)にな
  る。【シニョレッジ(通貨発行益)を見落としている量的緩
  和「懐疑論」の誤り】      https://bit.ly/2XvyRsa
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経済アナリスト/森永卓郎氏.jpg
経済アナリスト/森永卓郎氏
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 消費税増税を考える | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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