2019年11月20日

●「財政ファイナンスの3つの副作用」(EJ第5132号)

 スティグリッツコロンビア大学教授による「日銀が保有する国
債を「相殺」することで、政府債務を減少させてはどうか」とい
うアドバイスに対して、政府委員を務めている経済学者たちは、
一様に顔をしかめたといいます。なぜでしょうか。
 経済学者たちは「それは『財政ファイナンス』であり、やって
はならない」と考えたからです。このことから、「スティグリッ
ツ教授は間違っている」という学者もいたといいます。しかし、
相手は2001年のノーベル経済学賞受賞の経済学者です。間違
えるはずがないではありませんか。そんなことだから、日本はい
つまで経ってもデフレから脱却できないのです。そんな国は、世
界中で日本しかありません。「御用経済学者よ、恥を知れ!」と
私はいいたいです。
 アベノミクスは、最初の1年目にやったことは正しかったと思
います。これによって停滞していた日本経済が急速に改善をはじ
めたからです。しかし、せっかく経済が立ち直ろうとしていると
きに消費増税をして、またしてもデフレに逆戻りさせています。
デフレの最中に増税という緊縮財政をとる──そんなことをすれ
ば経済がおかしくなるぐらい素人でもわかります。
 確かに日銀による国債の直接引き受けは、財政法第5条で禁止
されています。
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◎財政法
 第五条:すべて、公債の発行については、日本銀行にこれを引
 き受けさせ、又、借入金の借入については、日本銀行からこれ
 を借り入れてはならない。但し、特別の事由がある場合におい
 て、国会の議決を経た金額の範囲内では、この限りでない。
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 日銀は、金融緩和の手段として、主として銀行が保有する国債
を買い取り、国債の保有をはじめたのですが、日銀が政府から直
接国債を引き受けようと、市場を通じて買おうと、日銀が国債を
保有するという事実には変わりがないので、アベノミクスは、財
政ファイナンスであるといえます。
 太平洋戦争のさい、政府は戦費調達のため、日銀に大量の国債
を引き受けさせています。しかし、このことが原因で、高率のイ
ンフレを招いてしまい、苦しんだことがあります。お金を大量に
供給させようとしたので、お金の価値が落ちて、インフレになっ
たのです。財政法の第5条は、そのときの苦い経験に懲りて設け
られたものです。
 なぜ、財政ファイナンスはいけないのでしょうか。中央銀行が
国債を買うと、次の3つの副作用が生まれるからです。
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         1.物価が上昇すること
         2.国債の価格が下がる
         3.国の通貨が安くなる
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 ここで考えてみるべきことがあります。現在の日本経済の状況
は、通常とは異なり、デフレの状況下にあります。経済アナリス
トの森永卓郎氏は、上記の財政ファイナンスの副作用が現在の日
本にはすべてプラスに働くとして、次のように述べています。
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 これらは、通常の経済状況だったら、大きな問題になる。しか
し、いまの日本ではまったく問題にならない。第1の物価上昇だ
が、現在の消費者物価指数は、前年比マイナスであり、日銀が掲
げる2%上昇という目標に遠く及んでいない。つまり、いまの日
本にとっては、物価が上がることのほうが、よいことなのだ。
 第2の国債価格の下落は、いまの日本では心配がない。10年
国債でも、ゼロ金利になっているからだ。むしろ少々国債価格が
値下がりして、プラスの金利がつくことのほうが、金融市場の正
常化のためには、望ましいことだ。
 第3の通貨安についても、2017年1月下旬現在の為替レー
トは、1ドル=110円台で、2016年初めの120円からみ
ても、円高が進んでいる。だから、本来の為替水準に戻すために
も少々の円安は、進んだほうが望ましいのだ。
 金融緩和の3つの副作用がすべてプラスに働く国は、現代の日
本くらいしかない。アベノミクスは、この好条件を活かして、財
政再建を進めてきたのだ。 ──森永卓郎著/角川新書K126
  『消費税は下げられる!/借金1000兆円の大嘘を暴く』
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 添付ファイルのグラフを見てください。これは、連結財務諸表
でみた純債務(細かな点線)と、日銀の国債保有額(太い点線)
そして純債務から、国債保有額を差し引いた実質純債務(太い実
線)をあらわしたものです。
 1997年の3%〜5%の消費増税によって日本経済はデフレ
に突入しています。1998年度の連結純債務は134兆円だっ
たのですが、毎年のように悪化し、2013年度には451兆円
に膨れ上がったのです。デフレが財政を破壊したのです。
 ところが、安倍政権のアベノミクスによる金融緩和で、デフレ
にブレーキがかかります。そして2013年から日銀の国債保有
は急激に増加します。その結果、それによる実質連結純債務は、
急速にゼロに向って伸びています。これがゼロになると、日本政
府は「無借金経営」を達成したことになります。
 「そんな、バカな!」というなかれ、これは手品でもマジック
でもインチキでもなく、正当な手続きなのです。しかし、安倍首
相がそこまでわかっていてやったとは思えない。結果として、そ
うなったとしか思えないのです。これは、別名「ヘリコプターマ
ネー」とも呼ばれており、安倍首相はこれに反対しているからで
す。ヘリコプターマネーは、日本では評判が悪いですが、これに
対する政府の無理解が、日本経済をいつまでもデフレの底に沈め
ているのです。これについてさらに詳しく説明します。
            ──[消費税増税を考える/030]

≪画像および関連情報≫
 ●政府の債務は返さなくてもいい/MUFGレポート
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   政府の債務残高が1000兆円を超えてしまっており、も
  はやこの膨大な借金を返済することは不可能ではないかと言
  われたりすることが多い。その疑問には、自信(?)を持っ
  て答えることができる。返済が不可能であるどころか、借金
  の残高を削減することすらできない。つまり、債務残高が今
  後も増え続けるのは確実である。
   考えてみれば、それは驚くことでも何でもない。一般に借
  金残高を減らそうとすればフローの収支を黒字にする必要が
  あるから、政府の債務残高を削減するためには、毎年の財政
  収支を黒字化させなければならない。しかし、それを実現す
  るのはおよそ不可能である。   https://bit.ly/2OlyImX
  ───────────────────────────
 ●グラフの出典:──森永卓郎著の前掲書より

連結財務諸表から見た日本財政の推移.jpg
連結財務諸表から見た日本財政の推移
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 消費税増税を考える | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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