2019年11月18日

●「IMFグラフで分かる財務省の嘘」(EJ第5130号)

 先週のEJ第5128号、第5129号の2回にわたってお届
けしたIMFのグラフは、日本の財務省に衝撃を与えています。
こんなものを公表されると、自分たちの工作がバレてしまうから
です。これに対する対策かどうかわかりませんが、財務省は「純
債務残高の国際比較/GDP比」という資料を出しています。こ
の資料を添付ファイルにしていますが、ここには、次の説明文が
付いています。
─────────────────────────────
 純債務残高とは政府の総債務残高から政府が保有する金融資産
(国民の保険料からなる年金積立金等)を差し引いたものです。
我が国は、純債務残高で見ても、主要先進国で最悪の水準となっ
ています。                   ──財務省
─────────────────────────────
 財務省は、このグラフではIMFのグラフには入っている「非
金融資産」を除いて比較しています。入れてしまうと、「最悪の
水準」にならないからです。財務省は、何が何でも「日本は主要
先進国で最悪の水準」にしたいようです。
 一般的に悪いところを隠そうとするならわかりますが、わざわ
ざ悪いところを見せつけようとする日本の財務省は異常です。そ
れは、一部のキャリア官僚の華麗な老後のために、消費増税を実
施しやすい環境を作ろうと必死になっているからです。
 国会などで野党が「借金が多いといっても、相応の資産がある
じゃないか」と財務省に迫っても、「そのような資産があっても
すぐには売却できないので、現実的ではない」と反論します。こ
れは非金融資産のことをいっています。IMFのグラフでわかる
ように、日本の資産の金融資産と非金融資産の割合は、半々であ
り、これを対GDP比で示すと、次のようになります。
─────────────────────────────
    金融資産 ・・・ 112%(対GDP比)
   非金融資産 ・・・ 109%(対GDP比)
─────────────────────────────
 「対GDP比200%の借金」といいますが、これによると、
資産(金融資産+非金融資産)の方も、対GDP比200%を超
えています。何の問題もないではないですか。資産に言及せず、
債務だけを強調するのは異常です。これについて、高橋洋一嘉悦
大学教授は次のように述べています。
─────────────────────────────
 財務省やマスコミは、借金が対GDP比200%を超えている
ということを喧伝しますが、縷々述べてきたように、日本はそれ
に見合った資産をもっています。借金の利払いが膨大になるとし
ても、対GDP比112%の金融資産をもっていますから、当然
金利収入が入ってきます。国の借金の大部分は国債です。国債の
金利は金融商品のなかで最も低い。一方、国がもっている金融資
産の金利は国債レベルかそれ以上ですから、わざわざ国債の利払
いだけを心配する必要はありません。     ──高橋洋一著
        『消費増税は嘘ばかり』/PHP新書1174
─────────────────────────────
 また、対GDP対比200%の政府の借金に関連して財務省は
次のように表現したことがあります。
─────────────────────────────
 債務残高が200%を超えるのは「敗戦当時の日本と同じ」
 である。                  ──財務省
─────────────────────────────
 これは、ひどい比喩です。敗戦当時の日本と21世紀の日本を
同列に比較しているからです。いうまでもなく、敗戦当時の日本
にはほとんど政府資産はなく、債務残高が200%を超えていた
のです。これは深刻であり、国家破綻の危機です。
 財務省は、現在の日本をこのときの日本と同じだといっている
のです。日本で最もアタマの良い人だけが就職できるといわれる
財務省の役人がこんな馬鹿げた比較をしています。だから、タメ
にするプロパガンダと言われるのです。21世紀の日本は、対G
DP対比200%超の政府債務はあっても、資産の対GDP比も
200%を超えています。敗戦当時とまるで違います。200%
を超える借金が心配ならは、資産を売って債務を減らせばよいの
です。2017年に来日したジョセフ・スティグリッツコロンビ
ア大学教授は、経済財政諮問会議で、日本の債務残高について、
次のように重大な発言をしています。
─────────────────────────────
 日本の政府債務残高は、実際のところ、多くの人がいうほど悪
くないということだ。なぜなら、政府債務残高の40%は、自分
自身が抱えているからだ。政府と日本銀行が一体となって政府債
務を相殺すればよい。少なくとも、債務残高に縛られて行動する
のはやめるべきだ。自分自身が抱えているのだから、債務残高は
見かけよりもずっと低いものとして考えるべきだ。
                ──高橋洋一著の前掲書より
─────────────────────────────
 スティグリッツ教授は、重要な指摘をしています。それは「政
府債務の40%は自分自身が抱えていてる」という発言の部分で
すが、その意味がわかるでしょうか。
 それは、日銀が日本国債を約400兆円抱えていることを指摘
しています。だから、政府負債が1000兆円あっても、相殺す
れば、40%は瞬時に相殺されるといっているのです。
 これに対して、日本の名だたる増税派の御用学者たちは、何と
いったと思いますか。「スティグリッツ教授は間違っている」と
いったのです。こんなことだから、日本はいつまで経ってもノー
ベル経済学賞は取れないのです。しかし、この様子を見ていた財
務省の高級官僚たちは、「財政破綻を防ぐための増税」という戦
術から、「社会保障の財源としての増税」という戦術に切り換え
る必要があると察したようです。アタマは悪くないからです。
            ──[消費税増税を考える/028]

≪画像および関連情報≫
 ●消費税10%/社会保障支える重要な財源だ/読売新聞
  ───────────────────────────
   消費税率が5年半ぶりに引き上げられ、8%から10%に
  なった。社会保障制度を安定させ、財政健全化を進めるため
  には欠かせない増税である。得られる新たな財源を、国民の
  将来不安の軽減に生かさなければならない。
   少子高齢化の進展に合わせて、社会保障費は着実に増えて
  いく。これを支えるには、毎年安定した税収が見込める税が
  望ましい。だが、法人税は、企業業績の浮き沈みによって増
  減する。所得税も賃金や雇用に連動するため、景気が悪化す
  れば大きく減る。
   こうした税に比べて、消費税には税収が景気に左右されに
  くい特長がある。生活を維持するため、一定の消費が必要だ
  からだ。消費税は公平性も高い。所得税は、働く現役世代を
  中心に課税するのに対し、高齢者を含め商品やサービスを購
  入する人から幅広く徴収するためだ。
   安倍内閣は、現役世代への支援を手厚くする「全世代型社
  会保障」の実現を主要政策に掲げている。負担を現役世代に
  しわ寄せしないためにも、消費税の活用が重要である。今回
  の引き上げで税収は約4・6兆円増える。このうち約2・8
  兆円を社会保障の充実などにあて、残りは財政再建に使う。
  国の借金は1000兆円を超える。債務残高のGDP比は主
  要国で最悪水準だ。将来世代へのツケ回しを避けるためにも
  財政の立て直しは急務である。政府は消費税の重要性を丁寧
  に国民に説明するべきだ。    https://bit.ly/2Ohkcwt
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純債務残高の国際比較(対GDP比).jpg
純債務残高の国際比較(対GDP比)


posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 消費税増税を考える | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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