税収は増えるはずです。しかし、実際はそうなっていない。19
97年4月の橋本内閣による消費税3%から5%の増税の場合、
その前後1年の1996年と1998年の国の総税収を比較する
と、次のようになっています。
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1996年 ・・・・ 52・1兆円
1998年 ・・・・ 49・4兆円
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増税後、2・7兆円も税収が減少しています。なぜ、こんなこ
とになったのでしょうか。
1980年代の後半から起こったバブル景気は、1991年か
ら1993年にかけて、高騰していた株価や地価が急落し、その
後、日本経済に負の影響が拡大していったのです。日本の経済成
長は停滞し、後に「失われた20年」といわれるようになる長い
トンネルに入ってしまったのです。
そんなときに、橋本政権は、1997年に、前村山政権時代に
決まっていた3%から5%への消費増税を断行します。それだけ
でも経済にとって大ダメージであるのに、1998年に法人税を
37・5%〜34・5%に下げています。
橋本政権がこの消費税の引き上げによる経済悪化が原因で退陣
すると、次の小渕内閣でも、1999年に34・5%に下げた法
人税をさらに30%まで下げています。つまり、消費税の増税直
後に7・5%も法人税を下げたことになります。国民との約束は
無視して増税するのに、財界との約束はきちんと果すのです。こ
れでは増税をしても税収が増えるはずがない。ちなみに2012
年のさらに4・5%の法人税の減税は、財務省に洗脳された民主
党の野田佳彦首相の下で行われています。
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◎1997年/消費税3%から5%に増税
1998年/法人税37・5%から34・5%に引き下げ
1999年/法人税34・5%から30・0%に引き下げ
2012年/法人税30・0%から25・5%に引き下げ
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この税収の減収がいかに大きかったかは、1997年を境とす
る赤字国債の増加によくあらわれています。添付ファイルを見て
ください。これは「赤字国債発行額の推移」を示しています。こ
れについての藤井聡教授の解説です。
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1997年までは、増減しながらも「政府の借金」の金額は低
い水準に抑えられていた。1997年までの10年間の平均は、
3・1兆円というオーダーだった。ところが、1997年を境に
「政府の借金」はうなぎ登りに上昇。瞬く間に20兆円〜30兆
円の間をうろつく程の高い水準になってしまった。
そして、その後の10年間の平均で、実に22・9兆円という
それまでよりも、約20兆円も高い水準になってしまったのであ
る。これは要するに、1997年を境に、日本経済が「デフレ不
況」に陥り、経済が「衰退」し、税収が大きく減ったことが原因
だ。 ──藤井聡著/晶文社
『「10%消費税」が日本経済を破壊する』
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要するに藤井教授によると、今やGDPの2倍を超える政府の
借金の原因が、1997年4月に実施された3%から5%への消
費税の増税にあったというのです。バブルが崩壊して、デフレに
向かいつつあった時期において、それまでの勢いこそ失ったもの
の、そこそこ成長できていた日本経済に、壊滅的なダメージを与
えて、脱出困難なデフレに追い込んだのは、1997年の消費増
税だったのです。
デフレは、経済政策において、よほどのミスを積み重ねない限
り、めったに陥ることはない経済現象です。その証拠に、先進国
はもちろんのこと、他の国においても、デフレに苦しんでいるの
は日本だけです。それよりもっと深刻なことは、デフレに陥った
真の原因が消費増税にあることが、為政者がまるでわかっていな
いことです。
藤井教授は、デフレがどれほど悲惨なことかについて、次の説
明をしています。それは、自殺者数の推移との関連です。
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消費増税直前の自殺者数が約2万2000人であったところ、
消費増税でそれが一気に3万3000人に拡大。自殺者数が実に
1万人以上も増大したのであり、その増大がまさに、消費増税に
よってデフレ化した1997年の直後に生じているのである。
この1997年の異様な自殺者数の激増は、この年に何か決定
的な出来事が我が国で起こつたことを雄弁に物語っている。それ
こそ、日本の「デフレ不況への突入」なのであり、そしてそれを
導いた「消費増税」だったのである。
◎1997年前後の自殺者数の推移
1997年以前10年平均自殺者数 ・・ 22418人
1997年以後10年平均自殺者数 ・・ 32560人
──藤井聡著の前掲書より
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数字で見る限り、1997年を境に自殺者が平均で1万人以上
増えています。つまり、藤井教授がいいたいことは「10年間で
10万人以上もの人々が、消費税の増税によって自殺に追い込ま
れている」という深刻な事実です。
このように、国の経済政策というものは、10万人単位の国民
の生命に直結するきわめて重大な影響をもたらすものであり、間
違えたでは済まないのです。藤井教授が前掲書を書こうと考えた
のは、このことが根本的な動機であると激白しています。政府は
今後も消費税を20%ぐらいまで上げようとしています。狂気の
沙汰です。 ──[消費税増税を考える/023]
≪画像および関連情報≫
●『「10%消費税」が日本経済を破壊する』書評
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2017年にメディアが報じた「戦後2番目に長い経済成
長(いざなぎ景気)超えの好景気」には違和感を覚えた人も
多いだろう。庶民には生活が良くなったとの実感がまったく
ないからだ。
17年末に、朝日新聞が報じた世論調査でも、景気回復を
「実感していない」が82%に上っている。その庶民感覚が
間違っていないことを著者の藤井聡教授がマクロデータを基
に明らかにする。
日本経済が、いまだデフレ経済下にあること、国内企業の
99%を占める中小企業の景気は年々悪化し続けていること
サラリーマンの給与が下がったままであること、その元凶が
消費税増税にあったこと。
1997年に消費税が3%から5%に上がった。消費増税
後にデフレ不況に突入し、それまで22000人程度だった
年間の自殺者が33000人に増え、10年以上も高止まり
し続けたことが、著者が本書を出版することを企図した根本
的な動機だという。デフレ化の原因が同年の「アジア通貨危
機」ではないことも検証されている。17年の総選挙の時に
「10%への消費増税」を公約に掲げる自由民主党が圧倒的
多数を獲得したことで、消費増税を「国民世論が支持した」
ことになってしまい、19年の秋に消費増税をすることが当
たり前の空気ができてしまった。 https://bit.ly/2K5YA53
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「赤字国債発行額」