2019年11月07日

●「なぜ1997年が問題になるのか」(EJ第5123号)

 少し固い話になりますが、消費増税がいかにマイナスかを理解
するうえでの前提知識になります。GDP(国内総生産)には、
それを支える3要素があります。次の3つです。
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   GDP=「民需」+「政府支出」+「貿易収支」
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 このなかの「民需」に注目していただきたいのです。「民需」
とは次の3つの要素の合計です。
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  「民需」=「個人消費」+「住宅投資」+「設備投資」
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 日本のGDPの構成要素は、個人消費が6割を占めています。
個人消費とは、個人(家計)が、物やサービスの購入に充てた金
額の総計です。しかし、住宅への投資は、別区分として扱われま
す。この個人消費が伸びないと、景気の回復は望めないのです。
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      個人消費がアップ ・・・ 景気回復
      個人消費がダウン ・・・ 景気悪化
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 最新の個人消費(消費支出)を日本経済新聞の「経済指標ダッ
シュボード」でチェックすると、最新の数字は、2019年8月
現在で「1%」です。これは、「2人以上世帯、実質前年比」で
す。あまりピリッといない数字です。
 個人消費(消費支出)は、平均所得によって左右されます。平
均所得が多くなればなるほど、個人消費は増加し、景気を押し上
げます。こんなことは小学生でもわかる理屈です。
 添付ファイルの上のグラフを見てください。これは、一世帯当
たりの平均所得金額の推移をあらわしています。90年代中盤ま
では所得は増加し続けていたのですが、1997年後は一貫して
右肩下がりで下落し続けています。1993年時点で平均所得は
664万円であったものが、2012年には、529万円まで下
がってしまっています。90年代のピーク時よりも135万円も
下落し、その分日本人は貧乏になっているのです。これについて
藤井聡教授は自著で、次のように述べています。
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 日本のGDPの停滞、衰退は、一軒一軒の世帯の視点から言え
ば、こうした世帯収入の下落を意味しているのである。ちなみに
万一日本経済が衰退せず、世帯の所得がピーク時から(さらに成
長せずとも)下落していなかった場合と実際の所得の推移とを比
較すれば、平均的な世帯は90年代からの約20年間で、約15
00万円もの所得をさらに得ていたという計算となる。
 逆に言うなら、日本がデフレになり、「衰退」しはじめたこと
で、日本の平均的な世帯は、約1500万円ものカネを失ってし
まったのである。それだけのカネがあれば、日本の各世帯は今よ
りも、どれだけ豊かな暮らしが出来たのだろうか。誠に残念な話
であるが、それこそ日本が「衰退途上国」と化してしまったこと
による、それぞれの世帯に対する「リアルな被害」の内実なので
ある。                ──藤井聡著/晶文社
         『「10%消費税」が日本経済を破壊する』
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 「消費税は消費に対する罰金である」といわれます。消費をす
るたびに罰金を科せられるのです。タバコ税は、タバコを吸う人
に対する罰金です。実際に、タバコ税を上げると、タバコの消費
が減少します。タバコは健康にとってよくない結果をもたらすの
で、タバコ税はいくら上げてもよいとさえいわれます。
 したがって、消費税を増税すれば当然消費が減少します。GD
P全体の約60%が個人消費ですから、消費税を上げればGDP
も減少します。今回の場合は、実質賃金が大幅にダウンしてきて
いるのに消費税を上げたのですから、当然消費に回るお金が少な
くなり、さらに個人消費を冷え込ませ、景気が悪化します。当た
り前のことが起きているのです。
 消費増税でもうひとつ指摘すべきことがあります。消費税を上
げれば、税収は増えるはずです。しかし、実際には税収は減少し
ています。添付ファイルの、下のグラフを見てください。このグ
ラフは、政府の税収の推移を示しています。増税直前には一時的
に税収は増加しているものの、増税直後の1998年には、直前
の52・1兆円から、49・4兆円まで、2・7兆円もの税収が
減少しています。その後、実際に消費税が入ってきて一時的に税
収は回復しますが、後は一貫して下がっています。どうしてこう
なるのでしょうか。
 税収を増やすために実施したはずの消費増税が、税収を下げて
いるのは、増税によってさらに景気が悪化し、日本経済全体が停
滞してデフレ化し、その結果、法人税や所得税などがすべて縮小
してしまった結果です。そのため、増税からわずか6年で、総税
収は10兆円以上も縮小してしまっています。
 これについて、藤井聡教授は、エコノミストである安達誠司氏
の次の発言を引用しています。
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 圧倒的多数の「専門家」は夏場に発生した「アジア通貨危機」
の影響の方がはるかに大きいと結論づけており、アジア通貨危機
がなければ、1997年の消費増税も景気に影響を与えなかった
だろうとと考えている。      ──藤井聡著の前掲書より
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 この説は一見正しいように見えます。しかし、アジア通貨危機
は、少なくとも日本にとっては一過性のものです。したがって、
時間の経過によって、やがては回復基調に戻るものです。それに
消費増税が重なったことが問題なのです。つまり、増税するタイ
ミングが最悪だったといえます。これについては、さらに問題を
掘り下げていくことにします。
            ──[消費税増税を考える/021]

≪画像および関連情報≫
 ●97年の消費税上げ、景気のマイナス要因ではない=財政審
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  [東京 18日 ロイター] 財政制度等審議会(財務相の
  諮問機関、会長:吉川洋東大教授)の財政制度分科会は20
  10年5月18日、97年4月の消費税率引き上げが景気に
  与えた影響について議論を行った。会合後に会見した大串博
  志政務官によると、当時の消費税率引き上げは景気に対して
  主たるマイナス要因ではなかったとする意見が大勢を占め、
  成長率の低下について不良債権処理問題やアジア通貨危機の
  影響を指摘する声が多かったという。菅直人副総理兼財務・
  経済財政担当相は「お金の使い道を間違わなければ増税して
  も景気は良くなる」と指摘しており、財政審の見解はこうし
  た菅財務相の考えを追認した格好だ。
                  https://bit.ly/2JLmORW
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1997年を境に起きた変化.jpg
1997年を境に起きた変化


posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 消費税増税を考える | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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