年9月11日〜12日に実施された日本経済新聞社とテレビ東京
の世論調査の結果は、次の通りです。
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◎消費税率10%引き上げについて
賛成 ・・ 52%
反対 ・・ 42%
https://s.nikkei.com/346w8ay ─────────────────────────────
これは驚きの結果です。なぜなら、消費税率10%への賛成が
5割を超え、反対を上回るのは初めてのことだからです。社会保
障費の膨張に何らかの対策が必要かを尋ねたところ、「必要だ」
は85%に上っています。これは、財務省による国民向けのプロ
パガンダが成功を収めつつあることを示しています。
財務省が国民向けのプロパガンダで目指しているのは、次の事
実(物語)を国民に認識させ、今後も消費税の増税に理解を示し
応じてもらうことにあります。この物語の執筆者は、安倍内閣の
元内閣官房参与、藤井聡・京都大学大学院教授です。
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今の日本はもう、成長出来ない国になってしまった。人口は減
少するし、高齢者は増え続けるから、社会保障費が年々拡大し、
国の借金は膨大に膨らんだ。このままではもう、国が破綻するこ
とは間違いない。そんな悪夢を避けるには、不況でも安定的な税
収が得られる消費税を増税するしかない。消費増税は経済に確か
に少々悪影響を与えるが、それよりも国の破綻の方が遥かに深刻
な問題だ。だから日本を守るためには消費増税は、絶対に必要な
のだ。10%はまだ、一里塚だ。本来なら15%や20%程度に
まで上げなければならないのだ。にもかかわらず、我が国にはま
だ、そんな当たり前の状況認識を持たず、10%への消費増税を
阻止しようとする奴がいる。そういう奴は、日本を破綻させる不
道徳極まりない輩なのだ。 ──藤井聡著/晶文社
『「10%消費税」が日本経済を破壊する』
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現在、日本人のほとんどはこの物語を信じ始めています。それ
が世論調査にあらわれるようになったのです。しかし、事実はこ
れと異なります。確かに日本経済は深刻な状況にありますが、こ
れとは事実が異なります。日本人は、事実と違う物語を信じさせ
られています。
多くの日本人は「日本は世界第3位の経済大国である」とまだ
思っています。しかし、それを数字で確認してみると、日本は既
に経済大国とはいえない状況に陥っています。
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◎世界各国のGDPシェア(ドル建て)の推移
1995年 2015年
日本 17・5% 5・9%
アメリカ 24・6% 24・3%
中国 2・4% 15・0%
ヨーロッパ 33・6% 25・0%
その他 21・8% 29・9%
──データ出典:「世界の統計2017」
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これを見ると、今から24年前の1995年の日本は、世界の
2割近くのカネを稼ぎ出す、カネ持ち国家であり、米国に次いで
世界第2位の経済大国であったことは確かです。稼ぐということ
は、買ってもらえる財やサービスを生産できる力があり、それだ
け経済力が強いことをあらわしています。1995年といえば、
マイクロソフト社から「ウインドウズ95」が発売され、日本に
PCブームが巻き起こった年でもあります。
しかし、それから20年後の2015年に、日本のGDPは、
17・5%から5・9%にまで落ち込んでいます。米国やヨーロ
ッパのシェアにそれほど変化はないのに、日本だけは、「4分の
1」の水準までシェアが縮まっています。これは、もはや落ち込
みというレベルではなく、「衰退」というべき状態です。この凋
落日本に代わって躍進したのは中国です。この20年間で7倍に
躍進し、かつての日本のポジションを奪っています。
続いて、添付ファイルを見てください。これは、世界各国の名
目GDP(ドル建て)をあらわしたグラフです。これを見ると、
日本も他の国と同様に、1995年までは順調に成長していまし
たが、それ以降は、他国が順調に成長するなかで日本だけはジリ
ジリと足踏みし、衰退していっています。日本の世界に占める相
対的経済力が、3分の1にまで激減しているのがよくわかると思
います。
これと同じことを指摘しているのは、経済アナリストの森永卓
郎氏です。日本が元気でなくなったのは、けっして「人口減」や
「高齢化」が原因ではないのです。どうして日本だけがこうなっ
てしまったのでしょうか。
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国連統計で、世界のGDP(国内総生産)に占める日本の比率
(GDPシェア)をみると、1970年には6・2%だったが、
その後上昇を続け、1995年には、17・5%に達した。世界
経済の2割近くが日本だったのだ。ところが、その後、日本のG
DPシェアは転落を続け、2010年には8・6%になり、20
16年には6・5%となっている。つまり、この21年間で、日
本のGDPシェアは、3分の1に落ち込んだのだ。逆に言えば、
この21年、日本経済が世界並みの、つまり並日通の経済成長を
していたら、我々の所得は3倍になっていたことになる。
──森永卓郎著/『なぜ日本だけが成長できないのか』
角川新書K−241
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──[消費税増税を考える/016]
≪画像および関連情報≫
●なぜ日本だけが経済成長できないのか/森永卓郎氏
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プラザ合意の後、輸出がガツンと落ちて、とんでもない円
高不況が日本経済を襲うわけです。そこで政府はこの円高不
況対策として思い切った財政出動をして、日銀は金融緩和を
して景気対策をしたのだということになっているのですけれ
ども、それで何が起こったかと言うと、バブルが起きたわけ
です。それが1980年代後半のバブル。良く調べて見ると
このバブルは、日銀がわざと煽った可能性が極めて高いので
す。どういうことかと言うと、昔は窓口指導と言って銀行に
貸出枠を与えていました。これは役人が予算を消化するのと
一緒で貸出枠までいっぱい貸さないと、次の年の貸出枠が減
らされてしまう。ところが、円高不況で銀行に貸し先なんて
無かったのです。仕方がないので不動産融資に走って投機が
どんどん進んで行った。
そしてバブルが崩壊する。このバブルの崩壊も、実は当時
の大蔵省の総量規制、不動産融資を規制しようというものが
きっかけだと言う人がいます。でも、きちんと歴史を見ると
そうではないのです。バブルが崩壊した後締めに行っている
のです。日銀の資金供給量を見ると日銀はバブルが崩壊して
どんどん日本経済が悪化していくなかでも、どんどん金融を
絞めて行く。つまり高い山とそこから先の深い谷を作ったの
は大蔵省と日銀だったのです。どう考えても、わざとやった
のです。 https://bit.ly/2qPvxMi
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世界各国の名目GDP(ドル建て)の推移