ス・イロージョン」という税制ギャップが生ずるからです。タッ
クス・イロージョンとは、「課税ベースの浸蝕化」という意味で
す。法人税の計算式を再現します。
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「所得金額(=益金−損金)×税率」−税額控除=法人税額
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この式のなかの課税ベースは「所得金額」ですが、損金として
落とせる額が増えると、益金は減少し、課税ベースは小さくなり
低い税率がかかることになります。さらにそこから税額控除され
るケースもあるので、納める法人税額はさらに小さくなります。
したがって、税率の多寡では税金の大きさはわからないのです。
これについて、富岡幸雄氏は、次のように述べています。
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課税ベースが浸蝕されているため、本来、課税対象となるべき
所得が、課税の範囲から、抜け落ちているからです。要するに、
現実の「課税所得」が虫食いになり、削られ、本来の姿より小さ
くなってしまっているのです。
私のマクロ分析によると、平均して課税所得の2割強が縮小さ
れています。なかでも巨大グループが多いと目される連結法人の
縮小率は40%を超えています。 ──富岡幸雄著
『消費税が国を滅ぼす』/文春新書1233
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2019年6月のことです。タックス・イロージョンの一端が
明らかになるニュースが起きたのです。ソフトバンクグループ株
式会社による過去最高といわれる4200億円の申告漏れの発覚
です。何が起きたか朝日新聞デジタルの記事をチェックしてみる
ことにします。
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ソフトバンクグループ(SBG、東京都港区)が東京国税局の
税務調査を受け、約4200億円の申告漏れを指摘されたことが
わかった。2016年に約3兆円で買収した大手半導体会社の株
をめぐって巨額の損失を計上したが、同国税局は損失額の一部を
認めなかった模様だ。すでに修正申告したという。
数千億円規模の申告漏れは極めて異例。日本IBMが約10年
前に約4千億円の申告漏れを指摘(後に最高裁決定で課税取り消
し)された例があるが、今回は、それを上回り過去最高額とみら
れる。ただ、修正申告後も損失が上回っていたため、追徴課税は
なかったという。 ──2019年6月19日付、朝日新聞D
https://bit.ly/2WkOpys ─────────────────────────────
この朝日新聞デジタルの記事をもう少し詳しく述べると、ソフ
トバンクグループは、子会社の株を関連ファンドに現物出資した
さい、取得価格と時価評価の差額、約1兆4000億円の損失を
計上したのです。ところが国税庁は、その70%しか損失として
認めず、残りの約4200億円について申告漏れを指摘したので
す。これについて、当のソフトバンクグループは次のようにコメ
ントしています。
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損金算入の時期で見解の相違があり修正申告した。約4000
億円は、19年3月期の損金に算入される。したがって、所得隠
しのような脱税に関わるものではない。
──2019年6月19日付、朝日新聞D
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富岡幸雄氏によると、ソフトバンクグループは、アグレッシブ
な税務戦略を駆使する企業のひとつであるといっています。かか
るタックス・イロージョン現象は、複雑な税務会計システムのメ
カニズムのなかに埋没してしまい、公表される財務報告書からそ
れを発見することは、きわめて困難です。
ソフトバンクグループの傘下には、多くの子会社があり、それ
ぞれが単体で税金を納めていますが、持ち株会社自体は、税引前
純利益が1624億2200万円もありながら、法人税は500
万円しか払っていません。その実効税負担率は0・003%に過
ぎないのです。これは、持ち株会社の収益が、子会社や関連会社
からの受取配当金が中心であるためです。税制上は「受取配当金
の益金不算入制度」という特例が認められているからです。
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◎単体納税している持ち株会社
税引前純利益 法人税等 実効税負担率
A/ G 1624億2200 500 0・003%
B/HD 461億7000 900 0・019%
C/HD 565億1300 3300 0・058%
D/FG 328億4800 3600 0・110%
単位:万円
A:ソフトバンクグループ B:飯田グループHD
C:第一生命HD D:コンコルディアFG
──富岡幸雄著の前掲書より
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高額所得者、いわゆる金持ちの多くは、株式や債券を保有して
いる人が多いです。株を保有していれば、インカムゲインとして
配当収入があります。これを配当所得といいますが、この配当所
得は税制上優遇されています。上記の持株会社が莫大な税引前純
利益を上げながら、ほとんど税金を払っていないのは、配当所得
の優遇措置のせいです。
多くの金持ちが保有している株の配当所得を優遇するというこ
とは、高額所得者の税金を安くしていることと同じです。しかも
日本の配当所得に対する税金は、米国、英国、ドイツなどと比べ
て一番安いのです。そういう優遇措置のツケを消費増税によって
庶民に回しているのです。ハラが立ちませんか。
──[消費税増税を考える/014]
≪画像および関連情報≫
●所得1億円超の金持ちほど税優遇される現実/梶原一義氏
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2018年度税制改正で最大の焦点だった「所得税」の見
直しは、高収入のサラリーマンが増税となる一方、株式譲渡
益や配当所得など金融所得については、大きな改正がなかっ
た。富裕層は胸をなで下ろしていることだろう。
税金の額を計算する際の基となる「所得」や、計算された
「税額」などから一定の金額を差し引くことを「控除」と呼
ぶ。12月14日に決定された与党税制改正大綱によると、
所得税ではすべての納税者に適用される基礎控除が38万円
から48万円へと10万円引き上げられる。サラリーマンや
公務員など給与所得者の税負担を軽くする給与所得控除は一
律に10万円引き下げられ、上限額は現行の「年収1000
万円超で年220万円」が「年収850万円超で年195万
円」に引き下げられる。
そのため、年収850万円超の給与所得者で、22歳以下
の子どもや介護が必要な人がいる世帯を除く約230万人が
2020年から増税となり、給与所得控除の縮小の影響を受
けない自営業者やフリーランスの人は、大半が減税となる。
年収850万円超の層は消費の牽引車であるため、今回の増
税の影響による消費の一層の冷え込みが懸念される。拙著、
『税金格差』でも詳しく解説しているが、所得税は2016
年度(一般会計ベース)で17・5兆円と、税収が最も多い
「国の基幹税」として、財源調達の機能や、所得再分配機能
(所得の格差を是正する役割)が期待されている。
https://bit.ly/2qE0WRA
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巧みな税務戦略/ソフトバンクG


