2019年10月24日

●「中堅企業ほど法人税負担は大きい」(EJ第5114号)

 昨日のEJの復習です。「法定総合税率」というものがありま
す。これは「法人3税」と呼ばれる、法人税、法人地方税、法人
事業税を合計したものであり、法律で定められている税率です。
これを世間では「実効税率」といっています。法律で定められて
いる税率を「実効」と呼ぶのはおかしいと、富岡幸雄氏は指摘し
ています。そこで、実際に企業が納めている税金の割合を「実効
税負担率」と呼ぶことにします。
 こういう数字があります。赤字ではない利益を出している企業
──有所得法人全体の実効税負担率は「17・46%」(201
7年3月期・外国税額を含む)であるというものです。
 2017年度の法定総合税率は、「29・97%」となってお
り、17・46%はその法定総合税率の58・25%にしか達し
ていません。この数字について、富岡幸雄氏は、次の事実を指摘
しています。
─────────────────────────────
 この数字を細かく分析すると驚くようなことがわかります。実
効税負担率を企業規模ごとにみると、巨大企業、大企業、中堅企
業、中小企業、小規模企業という階層間で、著しい格差が存在し
ているのです。
 法人所得に対して課される、法人税・法人住民税・法人事業税
の全部に関する、実際の負担率(実効税負担率)は、企業全体の
平均ですと、17・46%なのですが、資本金100億円超の巨
大企業の負担率を平均すると16・25%と、さらに負担率が下
がっているのです。
 ところが、さらに上手がいます。巨大企業が多く含まれている
と推定される、連結申告法人にいたっては、平均すると負担率は
8・58%。じつに法律で定められた税率(法定税率)の3分の
1にも達していない税負担なのです。これに対して、資本金1億
円超、5億円以下の中堅企業を見てみますと、実際の税負担率は
27・27%となっており、法定税率に近い数字です。資本金別
に企業を区分してみると、最も高い負担率になっています。
                      ──富岡幸雄著
         『消費税が国を滅ぼす』/文春新書1233
─────────────────────────────
 富岡氏はきわめて重要な指摘をしています。巨大企業が含まれ
る連結申告法人の実効税負担率の平均が「8・58%」であるの
に対して、資本金が1億円超〜5億円以下の中堅企業については
「27・27%」と法定総合税率に近いことです。あまりにも格
差があり過ぎます。これによって大企業ほど、税金の負担率は低
く、中堅企業には高い負担になっていることです。
 富岡幸雄氏は、これに関して、次のように企業規模別の実効税
負担率を示しています。著書では棒グラフで示されていますが、
メルマガ用に表に変更して表示します。
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  ◎企業規模別の実効税負担率
   2017年3月期/法定税率29・97%調査
       1千万円以下 ・・・ 20・42%
       5千万円以下 ・・・ 23・10%
        1億円以下 ・・・ 22・67%
     ★  5億円以下 ・・・ 27・27%
       10億円以下 ・・・ 25・66%
      100億円以下 ・・・ 22・38%
      100億円 超 ・・・ 16・25%
         連結法人 ・・・  8・58%
                ──富岡幸雄著の前掲書より
─────────────────────────────
 これを棒グラフにすると、一目瞭然ですが、日本の法人税の負
担は、中堅企業が最も高く、その規模が拡大するにつれて、負担
は軽減されています。最も高いのは、資本金階級が5億円以下の
27・27%(★)です。それにしても、★印以上の企業につい
ては、税金負担率は大幅に軽減されています。
 これに対して1億円以下の企業に対しては、法人税は軽くなっ
ていますが、これは、法人税の軽減税率(年間所得800万円ま
で)が適用されているからです。しかし、その軽減率はきわめて
緩やかです。これについて、富岡幸雄氏は、次のように結論づけ
ています。
─────────────────────────────
 企業規模別というマクロの視点からすると、法人税の負担構造
は、「極大企業の極少の負担」「中堅中小企業の高負担」です。
企業規模が大きいほど負担が軽く、規模の小さい方が重いという
いわば「逆累進構造」になっているのです。「高い、高い」と喧
伝されている日本の法人税を、ほぼ額面通りに払っているのは、
声の大きな巨大企業ではなく、黒字を出している中堅企業なので
す。              ──富岡幸雄著の前掲書より
─────────────────────────────
 実は、大企業だけではなく、高額所得者、つまり富裕層にも税
法の抜け穴があります。消費税増税を説く御用学者は「日本の高
額所得者の税金は他の先進国よりも高い」とし、増税するのは所
得税ではなく、消費税であるという論法を使っています。このよ
うに、彼らは所得税の増税を避ける論法を展開するのです。
 所得が1億円の場合の所得税と住民税を1980年と2015
年で比較すると、次のようになります。
─────────────────────────────
◎所得が1億円の場合
 1980年 ・・ 所得税75%+住民税13%/計88%
 2015年 ・・ 所得税45%+住民税10%/計55%
─────────────────────────────
 35年の間に少しずつ税率は下げられ、88%だった税率は、
現在は55%まで下がっています。日本政府は金持ちには減税を
しているのです。    ──[消費税増税を考える/012]

≪画像および関連情報≫
 ●消費税収19兆円のうち6兆が大企業に還付
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   2014年4月に消費税率は5%から8%に引き上げられ
  ました。15年10月にはさらに10%へ引き上げ予定でし
  たが、17年4月へと延期し、さらに昨年には19年10月
  まで2年半延期すると安倍晋三首相は表明しました。
   世界経済の不透明感が増していることなどが理由でしたが
  いまだにデフレから脱却できないアベノミクスの大失敗が、
  景気の腰折れで決定的になることを避けたかったからにほか
  ならないでしょう。なにしろ消費税率アップは、小売業をは
  じめ一般消費者への影響は甚大だからです。
   政府・財務省は、将来の社会保障の財源を確保するうえで
  所得税や法人税の増税は適切ではなく、負担の公平性からも
  消費税率を引き上げることこそが、ベストと強調してきまし
  た。そして、財界や大手マスコミも消費税増税はやむなしの
  ポーズを決め込んできました。
   輸出大企業中心の財界にとっては、消費増税は大きなメリ
  ットがあるから当然でしょう。つまり、非常に不公平なカラ
  クリによって、莫大な権益を享受しているのが輸出大企業だ
  からです。また、大手マスコミも消費増税でうかつに政府に
  楯突くことはできません。これまで政府から戦後に国有地を
  格安で払い下げてもらい、テレビ局放送免許を独占的に付与
  され、激安の電波料で儲けさせてもらっているからです。
                  https://bit.ly/2zU7Zb5  
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消費税と法人税減税との関係
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 消費税増税を考える | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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