2019年10月23日

●「大企業の実効税負担率はなぜ低い」(EJ第5113号)

 大企業優遇の日本の法人税のまやかしを徹底追及する経済学者
や税の専門家は、自民党が支配する政治情勢下では、ほとんどい
ませんが、ひとりだけこの問題を徹底的に追及している学者がい
ます。1925年生まれの中央大学名誉教授の富岡幸雄氏です。
 富岡幸雄氏は、学徒出陣で戦地に赴きましたが、復員後、国税
庁に勤務します。そのかたわら中央大学法学部の夜間部に通い、
第1回公認会計士試験、第1回税理士試験にそれぞれ第1号で合
格するという快挙を成し遂げた税の専門家です。
 その富岡幸雄氏は、いくつもの書籍で、日本の法人税のまやか
しを暴いています。その最新の一冊に次の書籍があります。
─────────────────────────────
                       富岡幸雄著
        『消費税が国を滅ぼす』/文春新書1233
─────────────────────────────
 この本では、法人税のまやかしを精緻に暴いていますが、内容
がやや専門的であるので、そりのエッセンスだけをご紹介するこ
とにします。とても内容があり、一読の価値があります。
 法人税、法人住民税、法人事業税のいわゆる「法人3税」の法
律で定められた税率を富岡幸雄氏は「法定総合税率」と表記して
いますが、メディアなどは「実効税率」と呼んでいます。最近で
は、政府当局にもこの表記を使っていますが、これは不可解なこ
とであると富岡氏はいっています。
 なぜなら、「実効税率」という表記は、法律で定められた税率
ではなく、実質的な税率という意味になってしまうからです。こ
の言葉を政府当局が使うのは理解できないことですが、わかって
いてあえてやっていると思うのです。
 そこで富岡氏は、企業の計上している利益に対して、実際に負
担している納税額の割合を「実効税負担率」と呼んでいます。こ
れを式で書くと、次のようになります。
─────────────────────────────
      実効税負担率=法人税等÷税引前純利益
                     ──富岡幸雄著
        『消費税が国を滅ぼす』/文春新書1233
─────────────────────────────
 「税引前純利益」とは、文字通り、税金が引かれる前の技術で
す。「法人税等」は少し専門的になりますが、損益計算書の「法
人税、住民税及び事業税」の欄にある数値のことで、実際に支払
った納税額をあらわしています。
 次の表は、単体で納税している事業会社のうち、税引前純利益
が600億円以上で、2018年度3月期における実効税負担率
が10%以下の事業会社を低い順序に並べたものです。
─────────────────────────────
   税引前純利益(万円)     法人税等 実効税負担率
 A社 1109億5700  16億1500  1・46%
 B社  976億0800  19億9400  2・04%
 C社 2915億7300 160億3500  5・50%
 D社 1394億2500 116億1500  8・33%
 H社  698億0900  74億0800 10・61%
 A社:新日鐵住金、B社:出光興産、C社:アステラス製薬、
 D社:HOYA、H社:富士フィルムHD
                ──富岡幸雄著の前掲書より
─────────────────────────────
 この数字を見ると、大企業が納めている法人税がいかに低いか
がわかります。新日鐡住金(現・日本製鉄)といえば、財界のリ
ーダー的存在です。その大企業の税引前純利益が約1110億円
もあるのに、法人税の納税額はたったの16億円です。出光昭和
シェルの出光興産も、税引前純利益は976億円なのに、納税額
は約20億円に過ぎないのです。
 以上は、単体で納税している事業会社ですが、連結納税してい
る事業会社で見ても同じことがいえます。本田技研工業の同じ2
018年度3月期の税引前純利益が1兆1149億7300万円
もあるのに、法人税は、136億6600万円であり、その実効
税負担率は1・23%という低さです。
 実効税負担率で、同じ時期のベスト10(低い順)に並べると
次のようになります。
─────────────────────────────
     1.本田技研工業 ・・・  1・23%
     2.  関西電力 ・・・ 11・31%
     3.  日本航空 ・・・ 15・37%
     4.  三菱電機 ・・・ 17・06%
     5.  三井物産 ・・・ 18・94%
     6.  住友商事 ・・・ 19・01%
     7.トヨタ自動車 ・・・ 19・25%
     8. 伊藤忠商事 ・・・ 19・73%
     9. 日産自動車 ・・・ 19・78%
    10. 日立製作所 ・・・ 20・62%
                ──富岡幸雄著の前掲書より
─────────────────────────────
 これを見ると、名だたる大企業がズラリです。トヨタ自動車の
税引前純利益は2兆6204億2900万円もあるのに、法人税
は5044億0600万円、実効税負担率は19・25%でしか
ないのです。
 これらの大企業が参加している財界総理のいる経団連は、「日
本の法人税は高い。下げろ!」と公言し、それをこれまで実現さ
せてきています。その税収の穴埋めに、もし消費税が使われてい
たとしたら、これはとても許せるものではないです。これでは日
本は、富める者はさらに巨万の富を得て、貧しい者はさらに貧し
くなる格差社会化が進行してしまいます。安倍政権は、長期政権
で、ひたすらこうした大企業偏重の政策をここまで進めてきてい
ます。         ──[消費税増税を考える/011]

≪画像および関連情報≫
 ●消費増税の議論で欠けていたもうひとつの大問題
  ───────────────────────────
   消費税増税を考える上でもう一つ、考えねばならないのが
  国民が納める税金──血税を、政府が自分の財布であるかの
  ように平気で無駄遣いしていないかという問題である。
   最近、大きな問題となっているものとして、これまでも再
  三問題にされてきた「原発マネー」の問題がある。関西電力
  の八木誠会長を含む役員ら20人が、関電高浜原発が立地す
  る福井県高浜町の元助役(今年3月に90歳で死亡)から、
  2011年からの7年間に計3億2千万円を受け取っていた
  という事実が明らかとなった。原発立地自治体には交付金や
  補助金など巨額の税金が注がれるが、それが「原発マネー」
  として還流していたとみられている。政治家もからんでいる
  という報道もある。今後、徹底的に真相を明らかにしてほし
  い。そして、その額の大きさからも、内容からも、見過ごす
  ことのできない大問題が、米国からの高額兵器の購入という
  問題である。その内実は、どしても必要なものを「購入」し
  ているというより、どうみても不必要なもの、あるいは「欠
  陥品」で他の国は買わないようなものまで、米国からの要求
  で次々と“爆買い”しているということだ。安倍首相がトラ
  ンプ大統領とたびたび対談してはそのたびに米国の高額兵器
  を“爆買い”することを約束させられているようだが、「週
  刊フラッシュ」の9月17日号には、「『血税5兆円を米国
  に』貢ぎリスト」と題した記事で、その爆買いの中身が紹介
  されている。          https://amba.to/31DjcYo
  ───────────────────────────

富岡幸雄氏.jpg
富岡幸雄氏
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 消費税増税を考える | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス: [必須入力]

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

RDF Site Summary