2019年10月16日

●「大平正芳首相の消費税導入の奮闘」(EJ第5109号)

 かつて税金に関して、「クロヨン」とか「トーゴーサンピン」
という言葉が流行したことがあります。これは、税務署の職業に
よる所得の捕捉率をあらわしています。
─────────────────────────────
    ◎クロヨン
        9割 ・・・ サラリーマン
        6割 ・・・  個人事業主
        4割 ・・・ 農林水産業者
    ◎トーゴーサンピン
       10割 ・・・ サラリーマン
        5割 ・・・   自営業者
        3割 ・・・ 農林水産業者
        1割 ・・・    政治家
─────────────────────────────
 これらの言葉が流行したのは、1960年(昭和35年)代で
あり、日本はそのとき経済成長の先陣に立っていました。その経
済成長の担い手である当時のサラリーマンには勢いがあり、彼ら
が「税の不公平さ」を訴える言葉として、これらのクロヨンやト
ーゴーサンピンが使われたのです。
 なぜなら、サラリーマンの税金は給与から天引きされ、9割〜
10割捕捉されてしまうからです。こうした税の不公平性に対す
るサラリーマンの不満は、選挙結果に確実に影響を与えるように
なっており、当時の政権党である自民党も、こうした声に対して
何らかの対策を講ずる必要があったのです。そのとき、自民党内
で、この問題解決の案のひとつして、密かに検討されていたのが
消費税の導入です。確かに税金を取る側から見た場合、消費税に
は、次の3つのメリットがあります。
─────────────────────────────
        1.脱税しにくい税である
        2.徴税コストが安くなる
        3.景気には左右されない
─────────────────────────────
 消費税のこれら3つの利点のうち、第1の「脱税しにくい税で
ある」については、改めて詳しく述べる必要がありますが、消費
税が、本当に脱税しにくい税であるとすると、第2の利点である
「徴税コストが安くなる」は実現できます。さらに、第3の「景
気には左右されない」は、誰でも理解できるはずです。しかし、
それは、消費税を正しく導入した場合に限られます。
 ところが、日本は正しいかたちで、消費税を導入していないの
です。それは、消費税導入に不可欠である「インボイス」を導入
せず、簡易課税制度を使っているからです。これでは、消費者が
正しく支払った税金が国に正しく収められず、「益税」が発生し
てしまう不公平な税制になってしまいます。自民党政府が消費税
の導入を急いだことが原点です。
 インボイスについては、改めて述べることにし、今日は、最初
に消費税を導入すべく奮闘した大平正芳首相について述べること
にします。大平内閣は、1978年12月から、1980年6月
まで続いた内閣です。大平氏は、池田勇人首相の秘書官を経て政
界に進出し、宏池会会長として「三角大福中(三木、田中、大平
福田、中曽根)」の一角を占め、田中内閣の外相として、日中国
交回復に貢献しましたが、四十日抗争やハプニング解散で精神や
体力を消耗し、選挙中に首相在任のまま死去した宰相です。
 重要なことは、大平正芳氏が大蔵省(現財務省)の出身であり
田中内閣と三木内閣において、大蔵大臣(財務大臣)を務めてい
ることです。したがって、大平正芳氏は、消費税制のことは正し
く理解しており、1979年1月に、日本に必要な税制として、
一般消費税の導入準備を1980年から実施することを閣議決定
しています。1978年12月に首相に就任し、1980年1月
からその導入準備を行おうとしたのですから、消費税導入は、首
相になる前から考えていた構想だったといえます。
 大平氏の消費税導入の動機になったのは、自身の大蔵大臣時代
に、赤字国債発行を行なわざるをえなかったことにあります。大
平氏は、つねづね次のようにいっていたのです。
─────────────────────────────
        赤字国債発行は万死に値する
               ──大平正芳
─────────────────────────────
 今でこそ、いわゆる赤字国債の発行は当たり前のことになって
しまっていますが、税収が足りないときに、経常経費として使う
目的で発行される赤字国債は、現在でも財政法上禁止されており
その発行に当っては、毎年度財政法の特例法として国会に提出し
その議決を得ることが求められるのです。あくまで財政法上は、
やってはならないことになっているのです。
 大平正芳氏は、三木内閣の大蔵大臣時代の1975年に、オイ
ルショックの後遺症による税収減を補うため、大規模な赤字国債
を発行せざるを得なかったのですが、これは、大平蔵相にとって
きわめて屈辱的なものだったのです。この大平首相について、高
橋洋一氏は、次のように述べています。
─────────────────────────────
 大蔵省出身の大平首相は、このような財政規律の乱れを正すた
めに、全力を尽くすことになります。大平首相は大蔵省の出身で
すから、消費税が相互牽制によって適正な納税を促す制度である
ことをよく理解していました。総背番号制の見送りで不公平な課
税は是正できませんでしたが、消費税であれば、脱税も少なく、
総背番号なしで広く薄く課税することができます。大平内閣は脱
税がしにくい消費税導入に向かっていきました。
                      ──高橋洋一著
     『「消費増税」は嘘ばかり』/PHP新書/1174
─────────────────────────────
            ──[消費税増税を考える/007]

≪画像および関連情報≫
 ●ニッポンの消費税導入「失敗」の歴史を振り返る
  ───────────────────────────
   安倍首相は1月10日、TV番組で2017年4月に予定
  する消費税率10%の引き上げについて「今度は景気判断は
  行わず、リーマン・ショックのようなことが起こらない限り
  予定通り引き上げていく」と述べました。過去を顧りみれば
  消費税導入までの道のりは、断念と失敗の連続でした。ジャ
  ーナリストの嶌信彦さんは、自身のメルマガ「時代を読む」
  の中で、消費税の「失敗の歴史」を振り返りながら、日本国
  民を騙してきたとも言える多くの疑問や問題点を指摘してい
  ます。税金──とりわけ消費税は国民一人一人の毎日の生活
  にかかわってくる税金だけに国民の関心はどこでも高い。そ
  れだけに、税金に対する基本的な哲学、考え方を国民が共有
  しておくことが重要になってくる。
   税の基本哲学とは、まず「公平」「公正」「簡素」といわ
  れる。誰に対しても公平な税制であり、何よりも公正でなく
  てはいけない。そして税の仕組みはできるだけ簡素でわかり
  やすいものするというのが税制を国民のものにする民主主義
  の源であり、最近はこれに加えて財政赤字を食い止める手段
  としても大きく期待されてきた。
   日本に消費税導入論が本格的に叫ばれたのは、1979年
  1月の大平正芳内閣時代で、1月に一般消費税を閣議決定し
  ている。しかし、これは10月の総選挙中に導入を断念し、
  選挙の勝利に賭けたが、総選挙も大幅に議席を減らし敗北し
  てしまう。政治家にとって消費税を口にすることは鬼門とさ
  れるようになる。        https://bit.ly/33o8YfB
  ───────────────────────────

「三角大福中」.jpg
「三角大福中」
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 消費税増税を考える | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス: [必須入力]

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

RDF Site Summary