イデアは、1953年にフランス財務省の官僚であるモーリス・
ローレという人が考え出したものです。一方、米国には、合衆国
全体としては消費税という制度はないのです。
フランスなどヨーロッパの国々は国土は比較的小さく、陸続き
ですから、人の移動が頻繁に行われます。日本でいえば、東京か
ら大阪に出掛けるような感覚で、ヨーロッパの国の人々は気軽に
外国に出掛けて行きます。
こういうヨーロッパの国の場合、EUができる以前は、あまり
高い直接税(例えば所得税)をかけると、人々が外国に逃げてし
まい、どうしても徴税漏れが多くなります。もし、直接税が安い
国があると、そこに移住してしまうこともあるのです。そこで消
費に税金をかける消費税が考え出されたものと思われます。
これに対して米国は直接税中心の国です。その国土は広く、国
内からは簡単に逃げられません。たとえ税金を支払わないで、ど
の州に逃げても、どこまでも追い掛けて税を徴収できます。しか
し、米国の場合、州ごとに税率が異なる「売上税」という間接税
が存在します。
ヨーロッパの消費税について、元財務官僚で、嘉悦大学教授の
高橋洋一氏は、フランスの消費税について、次のような独特の見
解を述べています。
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フランスで消費税が考案された理由には、フランス人がプライ
バシーを重視することも影響しているかもしれません。所得税は
いわば個人の懐に入り込む税制です。国家がプライバシーに介入
しないように考案された可能性もあります。
増税派のなかには「ヨーロッパは高福祉にするために消費税率
を高くしている」という人がいますが、もともと消費税は福祉目
的とは何の関係がありません。消費税は目的税ではなく、一般財
源です。 ──高橋洋一著
『「消費増税」は嘘ばかり』/PHP新書/1174
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消費税の最大の欠陥は「逆進性」にあるといわれます。ところ
で、「逆進性」とは何でしょうか。
日本の税金は「累進税」です。所得が多い人ほど税負担が重く
なるようになっています。「たくさん稼いでいる人、すなわち所
得が多い人からは、たくさん税金を払ってもらう」というのが累
進税です。これはきわめて合理的です。
これに対して消費税は「逆進税」です。所得が多い人ほど税負
担が軽くなる税金です。これを「逆進性が強い」というのです。
年収5000万円の人がいます。仮に年間1000万円消費す
るとします。残りの金額は貯蓄や投資に回せます。10%の消費
税がかかると、消費税額は年間100万円。収入に対して負担し
ている消費税の割合は2%です。
一方、200万円の所得の人がいます。年間200万円では、
貯蓄する余裕はないので、収入するほぼ全額が消費に回ると考え
られます。そうすると、年間の消費額は200万円、消費税額は
年間20万円、収入に対する税負担は10%です。そうすると、
次のように収入が低いほど、税負担は重くなります。
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年収5000万円 ・・・ 消費税負担 → 2%
年収 200万円 ・・・ 消費税負担 →10%
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これが消費税の逆進性です。貯蓄する余裕がないので、収入の
ほとんどを消費、それも食料品の購入に充てることになります。
そういう消費を狙ってかける税金が消費税です。これについて、
元国税調査官の大村大次郎氏は、消費税の逆進性について次のよ
うに述べています。
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税金には本来、所得の再分配の機能がある。所得の高い人から
多くの税金をとり、所得の少ない人に分配する、という機能であ
る。経済社会の中で生じたさまざまな矛盾を、それで是正しよう
ということだ。でも消費税は、所得の再分配と、まったく逆の機
能となっている。もし消費税が税収の柱になっていけば、お金持
ちはどんどん金持ちになって、貧乏人はどんどん貧乏人になる。
これは、単なる理論的なことだけではない。実際「格差社会」
という言葉が使われはじめたのは、消費税が導入されてからであ
る。消費税と格差社会は時代的にまったくリンクしているのだ。
消費税が導入される前は日本は一億総中流社会と言われていた。
国民全部が、自分たちのことを中流階級だと思っでいたわけだ。
つまり貧しい人がいなかったということだ。格差が広がったの
は、消費税が導入されてからなのである。 ──大村大次郎著
『消費税を払う奴はバカ!/サラリーマンと事業者のための
「逃税」スキーム』/ビジネス社
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日本は世界第3位の経済大国です。しかし、所得格差のレベル
は、先進国でワースト8位です。いつのまにか格差社会になって
しまったのです。確かに、大村大次郎氏の指摘するように「日本
は格差社会である」といわれるようになったのは、消費税導入の
時期と一致します。
橋本健二著の『新・日本の階級社会』(講談社現代新書)によ
ると、「格差社会」という言葉が日本社会を表現する言葉として
使われたのは、1988年11月19日付の朝日新聞社説「『格
差社会』でいいのか」からであり、その直後の1988年12月
に消費税法が成立しています。
逆進性の強い消費税を導入し、それに加えて法人税の減税と高
額所得者への所得税の減税を続ければ大村氏のいう「お金持ちは
どんどん金持ちになって、貧乏人はどんどん貧乏人になる」こと
により、格差社会になるのは必然です。
──[消費税増税を考える/006]
≪画像および関連情報≫
●消費税の逆進性を考える/大竹文雄の経済脳を鍛える
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国会で消費税増税が議論されている。野田佳彦首相は、消
費増税に「政治生命をかける」としている。その割に、消費
税に関する議論は建設的ではないように感じてしまう。増税
は不可避のもとで、消費税なのか所得税なのか、という議論
があれば、もう少し変わるのではないだろうか。消費税を否
定する際の最大の根拠は、所得税は累進的だが、消費税は逆
進的だというものだ。このことをもう少し考えてみよう。
正確には、所得税は累進的にできるが、消費税は逆進的に
しか課税できない、というべきであろう。所得に課税する場
合であっても、比例的あるいは逆進的に課税されている場合
もある。例えば、社会保険料はその例である。基本的に定率
で課されている上、社会保険料には負担の上限もある。その
ため、所得に対する社会保険料の支払額は逆進的になる。し
かし、所得税は、通常、課税最低限がある上、限界税率が所
得とともに上昇するので、所得に対する所得税負担率の比率
である平均税率は上昇していく。
これに対して、消費税は逆進的だと言われる。所得に対す
る消費の比率である平均消費性向が、所得が低いほど高く、
所得が高くなるにしたがって小さくなっていくという特徴が
あるからだ。低所得者であっても生きていくためには消費を
せざるを得ず、その消費に税金がかけられる。高所得者は、
その所得の一部しか消費しなくても生きていけるのに、多額
の貯蓄には課税されなくてすむ。なるほど消費税は逆進的で
不公平に見える。 https://bit.ly/2Vxydte
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嘉悦大学教授/高橋洋一氏


