2019年10月11日

●「平成は消費税の導入の時代である」(EJ第5107号)

 2019年4月30日に「平成」が終わり、5月1日から「令
和」がはじまっています。テレビでは、さまざまな角度から平成
という時代を振り返っていましたが、平成の時代から消費税がス
タートしたことを強調した番組は少なかったと思います。しかし
経済・財政という観点からみると、消費税は、平成の世からはじ
まったのです。それも自民党の竹下内閣が、強行導入した法律で
す。成立までの流れをメモしておきます。
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      大平 正芳首相/1979年 1月
          ・「一般消費税」閣議決定
      中曽根康弘首相/1987年 2月
          ・「売上税」法案国会提出
      竹下  登首相/1988年12月
          ・遂に「消費税法」が成立
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 最初に消費税構想を口にしたのは大平正芳首相です。「一般消
費税」として閣議決定をしましたが、評判は最悪で、1979年
10月の総選挙の最中に導入断念を宣言したものの、選挙では大
敗を喫しています。しかし、自民党は、このときから、消費税の
導入を心に誓っていたようです。
 8年後、中曽根康弘首相は、「売上税」と名前を変えて、法案
を国会に提出しています。1987年2月のことです。しかし、
この法案は国民的な猛反対に遭い、同年5月に早々に廃案になっ
ています。
 しかしそれでも自民党はあきらめず、1988年12月に竹下
内閣で消費税法が成立しています。税率は3%。そして、198
8年12月に消費税法は施行されました。施行の直前、竹下首相
が、日本橋の三越本店で、消費税を支払ってネクタイを購入する
パフォーマンスを演じたのを今でも鮮明に覚えています。
 ところで、平成元年(1989年)という年は、どういう年で
あったのでしょうか。
 一言でいうと、バブルの絶頂期だったといえます。1989年
の大納会(証券取引所の年末の最終取引日)において、日経平均
株価は、3万8915円を記録しています。当時の世界企業時価
総額ランキングでは、上位50社中32社を日本企業が占め、日
本経済は「わが世の春」を謳歌していたのです。
 それが2019年のランキングでは、50社中43位にトヨタ
自動車が入っているのみのたったの1社になっています。これは
日本経済のかじ取りを誤ったとしかいいようがないです。
 変化が起きたのは1990年1月からです。1990年の大発
会(証券取引所の年始の最初の取引日)で、株価が全面安になっ
たのです。この異変に日本経済の担い手である霞が関の官僚、自
民党の政治家、そして経団連の大企業は、何が起きたか、まるで
理解できていなかったのです。
 それから、約30年、日本経済は低迷したままです。日本経済
は、深刻なデフレに陥り、令和の時代が始まっても、デフレから
完全に脱却できていない。はじめのうちは「失われた10年」と
いっていましたが、それはやがて「失われた20年」といわれる
ようになり、ついに何もいわなくなっています。「失われた30
年」はさすがに恥ずかしいからです。
 そんなデフレのなかにあって、消費税の税率は3回も引き上げ
られています。明らかな経済運営の大失敗です。1997年4月
に橋本龍太郎首相は、3%の消費税を5%に引き上げましたが、
増税は自らが決めたものではなく、村山政権からの引き継ぎだっ
たのです。当時は、自民・社会・さきがけ政権(自社さ政権)で
あり、野党との連立政権であったのです。
 その村山富市首相(社会党)のもとで、3%から5%の引き上
げが決められており、次の橋本政権にその実行が託されていたの
です。これは、自民党と民主党が組んで決めた「社会保障と税の
一体改革」の実現が、安倍政権に託されたのと同じ構図です。不
思議なことに、増税にはなぜか野党が一枚加わっています。これ
は野党のイメージをすこぶる悪くしています。
 ひどかったのは、1997年4月の橋本政権による消費税3%
〜5%への引き上げです。何が起きたかについては、中央大学名
誉教授、富岡幸雄氏の著書から引用します。
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 この引き上げが日本経済に与えたダメージは大きく、折からの
アジア通貨危機も重なり、きわめて深刻な事態を引き起こしまし
た。不良債権の処理を先送りにしていたツケが回り、北海道拓殖
銀行が破綻、山一証券が自主廃業を余儀なくされるなど、潰れる
ことはにないいわれた名門企業が破綻しました。バブル崩壊と消
費税のダブルパンチにより、日本経済はデフレによる不況という
「深い谷底」に突き落されたのです。「失われた10年」は、い
つしか「失われた20年」となり、結局は平成の30年間、日本
は停滞どころか、没落の道を歩みつづけました。
 1990年以前の30年間、先進6ヶ国(米国、西ドイツ、日
本、フランス、英国、イタリア)の中で、最も高かった国民1人
当りの国内総生産(GDP)の伸び率は、90年以降、6ヶ国中
の5位に転落。日本より下にはイタリアしかいなくなりました。
                      ──富岡幸雄著
        『消費税が国を滅ぼす』/文春新書/1233
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 デフレが持続しているのに増税をする──これは、絶対にやっ
てはならない禁じ手です。まして、消費税の増税は絶対にやって
はならないのです。それを日本政府は3回もやっているのです。
これではデフレからは脱却できません。なぜなら、消費税の増税
は、経済を疲弊させ、デフレを深化させる「経済の厄病神」だか
らです。なぜ、消費税が経済の厄病神なのかについて、来週から
のEJで明らかにしていきます。
            ──[消費税増税を考える/005]

≪画像および関連情報≫
 ●消費税10%へ綱渡り 貿易戦争の影
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   米中の貿易戦争という景気への逆風が吹く中で10月に消
  費税率が10%に上がる。バラマキ色が強い対策で景気と参
  院選という剣が峰を乗り越えて増税にこぎつけ、さらに「ポ
  スト10%」の議論も進めて超高齢社会を乗り切る算段を立
  てられるか。
   「8%から10%に2%引き上げる予定です」。昨年10
  月15日、安倍晋三首相は臨時閣議で消費増税対策の検討を
  指示した。その数日前に首相官邸内で詰めた首相発言の原案
  には「予定」の2文字はなかった。「『引き上げる予定』が
  いいんじゃないか」。首相との打ち合わせが終わった後にも
  かかわらず、官邸で影響力のある高官の一存で付け加えられ
  たのだ。財務省など霞が関の官僚には「官邸はまだ見送りの
  余地が残したいのか」と衝撃が広がった。財務省幹部は「歳
  出をケチらずに、増税の環境整備のためにやれることはなん
  でもやれという意味だろう」と受け止めた。景気の腰折れは
  政権運営に直結する。14年4月に消費税率を8%に引き上
  げた後は急激に消費が落ち込んだ。これを経験した首相はそ
  の後に2度の増税延期を決断した。政府内では増税対策が急
  ピッチに進んだ。財務省の太田充主計局長らは「効果がある
  対策はなんでもやる」とカジを切った。
               https://s.nikkei.com/2IFscpc
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 ●添付ファイルの図出典/https://s.nikkei.com/2IFscpc

予算のバラマキ、景気に影を落とす貿易戦争.jpg
予算のバラマキ、景気に影を落とす貿易戦争
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 消費税増税を考える | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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