2019年09月25日

●「戦略拠点はスービック米海軍基地」(EJ第5095号)

 9月21日(土)の朝刊によると、太平洋の島国キリバスも台
湾と断交したそうです。米国との貿易での対立をにらんで、中国
の太平洋への進出の執念を感じます。中国は10月に建国70周
年を迎えるので、その実績づくりを急いでいます。
 米国には苦い経験があります。それは、米軍のアジア最大の海
軍基地であったスービックをフィリピンに返還したことです。返
還したことによって、中国が侵略を開始し、結果として、南シナ
海に人工島を作らせる原因になったからです。
 かつてフィリピンの米軍基地には、クラーク空軍基地と、スー
ビック海軍基地の2つがあったのです。現在は、その2つとも、
フィリピンに返還してしまっています。
 なぜ、返還したかというと、これには、間接的原因と直接的原
因の2つがあります。
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    1.間接的原因 ・・・ ピナツボ山の大噴火
    2.直接的原因 ・・・ 比上院が批准を拒否
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 スービック湾地域は、1884年からスペインが海軍基地とし
て利用していましたが、1898年の米西戦争(アメリカとスペ
インの戦争)に米国が勝ち、米国に管理権が移っています。そし
て、1991年末まで、スービック海軍基地は、米海軍の重要な
軍事拠点になっていたのです。
 1989年12月にフィリピンでは、国軍が最大規模の反乱を
起こします。米国はアキノ政権を支援し、米空軍機を反乱軍牽制
のため投入し、鎮圧に成功します。これを契機に1990年11
月に米国は、基地交渉で大筋合意したのですが、1991年6月
にピナツボ山が大噴火し、クラーク空軍基地とスービック海軍基
地の両方とも使えなくなってしまったのです。これが、間接的原
因となったのです。
 1991年8月に米比友好協力防衛条約が調印され、これによ
り、クラーク空軍基地の返還とスービック海軍基地の使用10年
延長が合意されます。しかし、同年9月16日、フィリピン上院
によって批准が拒否されるのです。これが、米軍がスービック海
軍基地から撤退する直接的原因になったのです。そして1991
年11月にクラーク空軍基地はフィリピンに返還され、1992
年9月には、スービック海軍基地もフィリピンに返還されること
になったのです。
 米軍がスービック海軍基地を手放した真の原因が今ひとつよく
わかりませんが、1991年といえば、ソ連が消滅した年であり
世界の緊張が大きく後退したことも影響しています。それに火山
崩壊による基地の修復にも莫大な費用がかかるということも米軍
が撤退した理由のひとつになっていると思います。つまり、米軍
は、原状回復しないままで撤退したのです。
 なぜ、スービック米海軍基地の話を詳しくしたかというと、こ
の海軍基地の復活が、台湾の安全保障のカギを握っているからで
す。2015年になって、オバマ前大統領とフィリピンのアロヨ
前大統領との間で、基地を復活させる合意ができていたのです。
ところが次のドゥテルテ大統領とオバマ大統領が喧嘩してしまい
それがペンディングになってしまいます。これには、バックに中
国の関与が疑われます。
 1995年に米軍がフィリピンから完全に撤退すると、中国は
フィリピンの領土である「ミスチーフ環礁」に勝手に上陸し、中
国漁民を守るためと称して、環礁に建物を強引に建て、その岩場
の周囲を開発し、続々と建物を建築し、今や風量発電やヘリポー
トまで作ってしまったことは周知のことです。まるで米軍がフィ
リピンから引き上げるのを待っていたかのように、勝手に人工島
を作ってしまったのです。
 これに対し、アキノ大統領は(当時)は、国連海洋法条約に基
づき、常設仲裁裁判所へ提訴し、次の結果を得ています。
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 ◎南シナ海 国際仲裁裁判 中国に厳しい内容に
  南シナ海を巡り、フィリピンが申し立てた国際的な仲裁裁判
 で、裁判所は12日、中国が南シナ海のほぼ全域に管轄権を主
 張しているのは「法的根拠がなく、国際法に違反する」という
 判断を示し、フィリピンの主張を全面的に認め、中国にとって
 極めて厳しい内容となりました。  ──2016年7月3日
                          NHK
─────────────────────────────
 しかし、中国は常設仲裁裁判所の判決を受け入れず、一向に従
う気はないです。それで米国を中心として始ったのが、「航行の
自由作戦」です。これには米軍による台湾防衛を見据えた深い戦
略的意図があります。ここにきてトランプ大統領とドゥテルテ大
統領の間で、スービック海軍基地の復活計画がまとまりつつあり
ます。この計画には、日本の自衛隊も海軍基地回復を支援する予
定になっています。スービック海軍基地は、台湾防衛の要といえ
るでしょう。これについて、渡邊哲也氏は、トランプ大統領の訪
台計画との関連で、次のようにいっています。
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 仮にトランプ訪台にスービック基地復活が間に合わない場合、
スービック湾に第7艦隊を配備し、場合によっては台湾海峡に空
母を出動させる。そのための準備もすでに行われていて、実際や
るやらないは別にして、航行の自由作戦で約20年ぶりにアメリ
カの艦艇が台湾海峡を横切る訓練が行われています。スービック
についてはどのような形にせよ、アメリカ海軍を再配備させれば
中国を黙らすことができるでしょう。
            ──石平?渡邊哲也著/ビジネス社刊
 『習近平がゾンビ中国経済にトドメを刺す時/日本は14億市
               場をいますぐ「損切り」せよ』
─────────────────────────────
              ──[中国経済の真実/094]

≪画像および関連情報≫
 ●トランプ大統領は訪台を/蔡政権を勢いづかせる起爆剤に
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   台湾の次期総統選挙の前哨戦で、2018年11月24日
  に投開票される統一地方選挙まで1ヶ月を切った。蔡英文総
  統率いる与党の支持率は2割台に低迷し、現有の議席を守り
  抜けるかが焦点となっている。
   与党の支持率は、政権交代しても経済状況がよくならない
  という不満などで低下。また蔡氏は、中国との統一でもなく
  独立でもない「現状維持」の方針を掲げているものの、その
  姿勢が「弱腰」として捉えられ、批判を受けている。
   地方選の中でも注目されているのが、首都の台北市長選。
  現職で無所属の河文哲(コー・ウェンチョー)氏が、二大政党
  の不満の受け皿として支持を伸ばし、与党候補者が追う展開
  となっている。
   蔡陣営が、台北市長などの有力選挙で敗北すれば、責任論
  に発展する可能性があり、2020年の総統選の再選にも影
  響が及ぶ。もし蔡氏が再選できなければ、日米などが連携し
  て形成しつつある「対中包囲網」の一角が崩れかねない
  求心力を失いつつある与党が支持率を回復させる起爆剤とな
  るのは、「トランプ米大統領の台湾訪問」だろう。
                  https://bit.ly/2m2CNBZ
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スービック海軍基地.jpg
スービック海軍基地


posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 中国経済の真実 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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