を行っています。
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【台北=伊原健作】台湾の外交部(外務省)は16日、外交関係
のある南太平洋の島しょ国・ソロモン諸島との国交を断絶すると
発表した。同国が台湾と断交し、中国と国交を樹立することを決
めたためという。2016年に発足した蔡英文政権が外交関係を
失うのは6ヶ国目で、台湾を外交承認するのは、残り16ヶ国と
なった。 https://s.nikkei.com/2kqHkxE
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これによって、ソロモン諸島のソガバレ政権は、近く正式に中
国と国交を樹立することになります。ソロモン諸島は、1983
年から一貫して台湾と外交関係を持ち、「一つの中国」を掲げる
中国と国交がない国の一つでした。しかしすぐ近くのパプアニュ
ーギニア、バヌアツ、フィジー、トンガは既に中国と国交を結び
中国の手によって、インフラの整備がどんどん進んでいるのを見
て、台湾と断交することにしたものと思われます。
いきなりソロモン諸島といわれてもピンとこないと思うので、
頭のなかに地図を描いてみてください。オーストラリアから見て
ソロモン諸島は右上に横たわる島です。真上にパプアニューギニ
アがあり、ソロモン諸島の下には、バヌアツ、フィジー、トンガ
がある。線で結ぶと、オーストラリアを包囲する「群島の長城」
ができあがります。これによって、米軍が、オーストラリアの基
地を使えなくする狙いがあります。
この戦略は、太平洋戦争当時、旧日本軍が米国とオーストラリ
アの航路を遮断するために使ったものであり、中国はそれを意識
しているのでしょうか。旧日本軍は、パプアニューギニアのラバ
ウルを占領し、ここを南方作戦の拠点とし、「FS作戦」と称し
て、フィジーとサモアの攻略を検討し、これに頓挫すると、今度
はソロモン諸島のガダルカナル島に航空基地をつくって、オース
トラリアや南太平洋を攻略する拠点にしようとしたのです。この
ガダルカナル島をめぐる日本軍と米連合軍の死闘は、あまりにも
有名です。
さて、日本も中国と国交を正常化するとき、中国のいう「一つ
の中国」を受け入れ、台湾とは断交しています。しかし、そうで
あるからといって、「台湾を中国の一部であるとは認めてはいな
い」のです。それは、日中共同声明の次のフレーズををみれば、
明らかです。
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中華人民共和国政府は、台湾が中華人民共和国の領土の不可分
の一部であることを重ねて表明する。日本国政府は、この中華人
民共和国政府の立場を十分理解し、尊重し、ポツダム宣言第八項
に基づく立場を堅持する。
──日本国政府と中華人民共和国政府の共同声明より
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つまり、中国が「台湾は自国領土の一部である」と主張してい
ることを日本政府は理解し、その立場を尊重するといっているに
過ぎないのです。ちなみに、米国も同じ立場です。しかし、米国
の場合、「台湾関係法」という特殊な法律を制定し、国交はない
ものの、台湾の地位を守っています。これに加えて、2018年
3月16日には「台湾旅行法」が成立しています。これは、米国
及び台湾の高級官僚の相互の交流訪問を促進する法律です。
この法律の成立で狙っていることについて、渡邊哲也氏は次の
ように述べています。
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いまアメリカでは、在米華僑が中心となって議会に強いロビー
活動をしかけており、下院では、台湾総統に議会演説をしてほし
いというオファーが出てきているといいます。もし、台湾の総統
やそれに類する人がアメリカの議会で演説をするようなことにな
ると、台湾としては断交以来の歴史的快挙ということにもなるで
しょう。そして、それが実現すれば、「返礼」という形でトラン
プ大統領やペンス副大統領などが台湾を電撃訪問する可能性も高
まります。事実、アメリカ議会はホワイトハウスに対して、アメ
リカ高官の台湾訪問を求めており、それに関する法整備は終わっ
ているのです。 ──渡邊哲也/福島香織著
『中国大自滅/世界から排除される「ウソと略奪」の
中華帝国の末路』/徳間書店
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2018年12月31日には、米議会で台湾に関してもう一つ
重要な法律が成立しています。「アジア再保証イニシアチブ法」
がそれです。これは、台湾に対する継続的な武器の供与と米台に
おける事実上の安全保障条約に近いものです。それどころか、マ
ルコ・ルビオ議員を中心とするアメリカのブッシュ系の議員たち
にいたっては、「台湾を国家認証すべきである」とまで、いいだ
しているのです。
実際に今年の7月に、台湾の蔡英文総統が、外交関係のあるカ
リブ海諸国を訪れるのに合わせて、米国を訪問し、実に4泊して
います。これは非常に長い滞在になります。米国務省としては、
あくまで私的訪問であるとしているものの、着実に米台の関係が
緊密化しつつあることは確かです。
当然のことながら、中国はこれに猛反発していますが、「台湾
旅行法」を盾にして、来年の台湾総統選の前にトランプ大統領が
電撃的に台湾を訪問する可能性もあります。まさにニクソン訪中
の上書きです。これが実現したら、米国が台湾を国家として承認
することも可能になります。中国は、内心この事態を一番恐れて
いるといわれます。
そのためにも米国としては、北朝鮮を手なずけておく必要があ
ります。現在のトランプ大統領の北朝鮮に対する奇妙な態度もこ
のシナリオがあれば、理解できます。中国にとって、深刻な事態
になりつつあります。 ──[中国経済の真実/093]
≪画像および関連情報≫
●台湾へのF16売却は、米国「蔡英文再選支持」のサイン
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台湾にとって長年の悲願であった米国のF16売却が、ど
うやら実現しそうである。米トランプ政権は、米議会に対し
て、F16の売却を認めるとの方針を通知したと米主要メデ
ィアが伝えた。この通知は非公式の段階であるが、すでに各
方面で広く報じられており、議会にも反対の声はないとみら
れ、66機計80億ドルという近年にない台湾への巨額武器
売却が、この台湾総選挙まで残り5ヶ月を切った敏感な時期
で実現に向かうことの意味は大きい。
この売却を報じた米メディアは、加熱する米中貿易戦争と
緊迫する香港情勢において、中国の牽制を目的としたものだ
という見方を伝えている。それは必ずしも間違いではないか
もしれないが、筆者として強調したいのは、米トランプ政権
が来たる台湾総統選において、現職の民進党・蔡英文総統を
支持するというサインをこのF16売却承認を通して明確に
伝えた、という点である。
F16の売却については、台湾の蔡英文政権はトランプ政
権にかねてから打診をしており、前向きな感触を得ていた。
蔡英文総統は、この7月に外遊するなかでニューヨークでの
トランジット滞在を米側に認められるなど「破格の好待遇を
米国から受けた」だと評価された。売却のニュースが流れる
前に、蔡英文政権の高官は訪米の結果から「F16は大丈夫
だ」と筆者に語っていた。これが実現すれば、7月に同様に
米議会に通知された米戦車の売却以上の「快挙」となる。
https://bit.ly/2m43oys
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米国を訪問した蔡英文台湾総統