2019年09月17日

●「中国不動産の暴落が始まっている」(EJ第5090号)

 10月1日からトランプ米大統領は、2500億ドル(約27
兆円)分の中国製品に対する制裁関税を、現在の25%から30
%に引き上げると宣言していましたが、9月11日、10月15
日まで延期すると発表しています。中国の劉鶴副首相からの要請
を受け入れたのです。10月1日に中国が建国70周年を迎える
からです。このニュースは、9月12日の日本経済新聞夕刊に次
のタイトルで報道されています。
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   ◎対中関税拡大を延期
    トランプ氏「建国70年」配慮/来月15日に
   ──2019年9月12日付、日本経済新聞夕刊
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 しかし、単に中国が建国70周年の記念日だからといって、一
度宣言した関税引き上げを延期するような甘いトランプ大統領で
はないはずだと思って調べてみると、中国は11日に一部の米国
製品を報復関税の対象から外すと、米国側に伝達してきていたの
です。それならということで、トランプ大統領は関税引き上げ時
期の延期に応じたのです。「引き延ばしの“利息”は支払います
よ」という、中国の“ディール”です。
 この米中貿易戦争を実務レベルで仕切っているのは、ライトハ
イザーUSTR代表とロス商務長官の2人です。この2人は数々
の通商協議を仕切ってきているプロ中のプロです。日本にとって
きわめて手強い相手です。
 ライトハイザー氏は、レーガン政権で、米国通商代表次席代表
を務め、日米貿易摩擦で日本に鉄鋼の輸出自主規制を受け入れさ
せたスゴ腕の持ち主。交渉の場で、日本の提案書を紙飛行機にし
て投げ返した話は有名です。
 ウィルバー・ロス商務長官は、金融のプロで、投資家であり、
銀行家でもある人です。これまでに特殊な手法を駆使して、数多
くの企業を乗っ取ったり、再建したりしてきています。トランプ
氏も1990年に3番目のカジノリゾートで経営に失敗し、その
とき、破産アドバイザーチームの債権者代表を務めていたロス氏
に助けられています。
 今回の日米貿易協議、いろいろウラがありそうですが、今回の
内閣改造で外相に昇進した茂木経済再生相は、こういう手だれを
向こうに回して協議し、よくまとめたと思います。彼は、英語力
が高く、米国人並みに微妙な喜怒哀楽を表現できるといいます。
 さて、現在の中国は、日本のかつてのバブル崩壊期と同じ状況
にあるとみなすことができると思います。日本との貿易交渉で成
功体験のあるライトハイザーUSTR代表とロス商務長官が次に
中国に仕掛けるのは、金融面での絞め上げです。あまり表には出
ていませんが、現在中国はドル不足で苦しんでいます。それも、
きわめて深刻なドル払底ぶりです。米国は、そこを狙って仕掛け
てくると思われます。中国に詳しい評論家の宮崎正弘氏は、それ
を次のように表現しています。
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 国内財政危機は不動産ローン残高が4600兆円、地方債残高
が1500兆円内外もあることに代弁されるように、奇策、詐術
を使ってももはや経済の回復は覚束ないだろう。中国のドル払底
ぶりが露見したのは外銀からドルをかき集め、短期債権で繰り延
べている実態が判明したからだった。凄まじい自転車操業が連日
繰り返されている。      ──宮崎正弘著/ビジネス社刊
 『余命半年の中国・韓国経済/制御不能の金融危機が始まる』
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 ドル不足になると、中国は外銀からドルの調達を余儀なくされ
ます。ところがそういう弱みに付け込んで、銀行は通常より高い
金利を要求してくるのです。かつて日本も通常の金利プラス2%
の「リスクプレミアム」を掛けられたことがあります。「ジャパ
ンプレミアム」です。
 そのため、日本は、それまでに買い漁っていた米国の不動産を
叩き売ってドルを調達したのです。ロックフェラーセンター、ロ
スの目抜き通りのウィルシャー・ブルーバードの多くのビル、そ
してハリウッド映画などが次々と処分されたのです。これによっ
て、かつて世界主要銀行ランキング10行中、6行を占めていた
日本の銀行のうち、昔の名前で現在残っているのは「三菱」だけ
という状態になっています。まさに、これと同じことが現在、中
国に起きているのです。
 中国の場合、株式上場が規約の厳格化の問題があって難しいの
で、投資家の多くは、企業株には関心がないのです。中国の不動
産関連企業は、窮余の一策として、ドル建ての社債発行を盛んに
行っています。しかし、欧米の金融界では、中国企業の社債起債
には2%の金利を上乗せていますし、IMF(国際通貨基金)も
中国向け融資の金利を上げると公表しています。「チャイナ・プ
レミアム」です。ADB(アジア開発銀行)も最大の借り手であ
る中国に「チャイナ・プレミアム」を適用するめ方針です。そも
そも超金満国であるはずの中国が、なぜ最大の借り手なのでしょ
うか。どうしてこんなことになるのでしょうか。
 それは、中国の負債総額が一体どのくらいか、誰もわからなく
なっているからです。なぜなら、中国の金融関連データは不透明
ですし、水増しは必ずあるし、おそらく共産党幹部もどのくらい
借金があるか、わからなくなっているはずです。
 中国の不動産関連企業のドル建て社債の直近3ヶ月の利回りは
7・8%、これにはもちろん「チャイナ・プレミアム」が上乗せ
されています。7・8%とは、ロシアの10年物国債の利回りが
7・75%とほぼ同列です。中国の不動産大手の「当代置業」が
今年の1月に発行した社債の金利は実に15・5%です。中国の
エクセレント・カンパニーの一つといわれる「恒大集団」でさえ
8%〜9%。宮崎正弘氏によると、この傾向は、中国の不動産の
暴落が確実に始っていることを物語るといっています。
              ──[中国経済の真実/089]

≪画像および関連情報≫
 ●中国不動産市場に異変/買い手見つからぬ「流動性リスク」
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   不動産バブルが生じていると言われて久しい中国だが、中
  国共産主義青年団(共青団)の機関紙である中国青年報は、
  2019年1月27日、北京市や上海市、深セン市などの、
  「一線都市」において、中古不動産市場の価格が下落し続け
  ており、流動性リスクが顕在化し始めていると伝え、「中国
  の不動産市場は『買えば儲かる』という時代ではなくなりつ
  つある」と伝えている。
   北京市や上海市など、中国国内でも特に重要な都市が一線
  都市に指定されており、これまで不動産市場全体の価格高騰
  を牽引してきたのも一線都市の市場だった。その一線都市の
  不動産市場に異変が生じているとなれば、決して穏やかな話
  ではない。
   記事は、一線都市であっても「高級不動産が投げ売りされ
  ていて、中古不動産も値引き合戦が見られる」と紹介する一
  方、それでも、取引の成約数は低迷していると強調し、20
  18年下半期から現在にかけて、不動産市場の低迷はすでに
  中古市場へと波及していると指摘した。
   さらに、中国ではこれまで「不動産は元本割れがない」、
  「不動産は買った時より高い値で売れる」という「神話」が
  存在したが、この神話はすでに終わったと強調。「借金をし
  て不動産を買っても儲かる」という黄金の時代は過ぎ去った
  と伝え、売ろうとしても買い手が見つからないという「流動
  性の低下」が見られるとし、不動産ディベロッパーをはじめ
  とする業界関係者は誰もが焦りを感じていると伝えた。
                  https://bit.ly/2kIVri1
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米国の2人の策略家
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 中国経済の真実 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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