2019年09月09日

●「華為技術は本当に信用できるのか」(EJ第5085号)

 9月3日のことです。ファーウェイは、日本政府に対して、あ
る提案をしています。どういう提案かというと、「5G」関連の
通信機器などに搭載されているソフトウェア(ソースコード)の
内容を開示するので、検証して欲しいというものです。ソースコ
ードとは、プログラムの設計図のようなものです。
 ファーウェイは、すでに英国やオーストラリアなどで、製品の
ソースコードを公開しています。オーストラリアは、ファーウェ
イを5G市場から明確に締め出しましたが、英国をはじめとする
欧州では、その採用の是非について目下検討中です。一般的にい
われているほど、米国によるファーウェイの排除要求に対して同
盟国は一枚岩ではないのです。
 まして、日本は、アームを傘下に持つソフトバンクグループを
有する国であり、これまでファーウェイとは、相互依存の関係に
あります。ファーウェイにとって日本は、一番味方になって欲し
い国です。しかし、日本は、既に2018年12月の時点で政府
調達では、ファーウェイだけでなく、中国の通信機器を排除する
ことを決めています。そのため、今回のファーウェイの提案に対
し、9月5日、菅官房長官は、ファーウェイからソースコードの
提供があったことを認めたうえで、次のように述べています。
─────────────────────────────
 現時点で政府は、特定企業の製品のソースコードを検証してお
らず、同社の提案に何らかの対応を行う予定はない。
                      ──菅官房長官
          2019年9月6日付、日本経済新聞より
─────────────────────────────
 ここで、基本的なことを考える必要があります。ファーウェイ
の製品には、本当に問題があるのか、本当に技術を盗んでいるの
かどうかということです。
 「テカナリエ」と企業があります。日本の企業ですが、会社名
は、次の英語をそのまま読んだものです。
─────────────────────────────
 ◎“Technology analyze for everyone”=テカナリエ
  研究解析調査会社。半導体の設計・開発、解析、マーケッ
  トなど、専門分野の経験豊富なメンバーで構成。代表取締
  役CEOは清水洋治氏。    https://bit.ly/2lGVD1d
─────────────────────────────
 2018年12月17日、このテカナリエは、ファーウェイの
当時の最新スマホ「Mate20 Pro」を分解した結果を次のように公
表しています。「余計なもの」が入っていないか調べたのです。
─────────────────────────────
 全ての半導体チップが存在する領域を細かく、1個1個チェッ
クを行ったが、「余計なもの」は全く存在しなかった。「余計な
もの」という言い方が適切かどうかは分からないが、余計なもの
を具体的に教えて欲しいくらいである。通信部には米国のパワー
アンプが並ぶだけである。センサーはドイツ製、日本製ばかりで
ある。メモリは韓国製。ここに全てのチップを並べて見せたいく
らいである。技術面ではお互いがリスペクトし合い、競争し合い
より良いものを作ることにいそしんでいると思えてならない。こ
うした素晴らしい技術が停滞しないことを望むばかりである。
 「Mate20 Pro」を隅から隅まで観察したが、「余計なもの」は
一切存在しなかった、ということをあらためて強調しておく。む
しろ「Mate20 Pro」は、研ぎ澄まされ、洗練された2018年最
高のスマートフォンの一つであったと結論付けたい。
                      ──近藤大介著
      『ファーウェイと米中5G戦争』/講談社+α新書
─────────────────────────────
 テカナリエのCEOの清水洋治氏については、中国分析の第一
人者である遠藤誉氏も「日本の第1級の専門家」として自著で紹
介していますし、EJでも取り上げています。
 問題は法律です。なかでも、9月6日のEJ第5084号で指
摘した2つの法律(サイバーセキュリティ法/国家情報法)がき
わめて問題なのです。
 サイバーセキュリティ法は、別名「インターネット安全法」と
呼ばれています。何が安全なのかというと、中国から見て、中国
共産党にとって「安全」であるという意味です。
 この法律は、中国では、国内企業、外資企業にかかわらず、イ
ンターネット関連商品およびインターネットサービスを中国の基
準に適合させることが求められます。具体的にいうと、中国国内
でネットワークを運営したり、使う場合、それによって収集され
た個人情報やデータは、中国国内に保存されなければならないと
いうのです。しかも重要データは、原則国外に移転できないし、
「重要」の定義もはっきりしていない。データの海外持ち出しに
は、中国当局の安全審査が必要になります。しかし、年1回は、
中国当局の検査や報告などが義務付けられています。中国支社か
ら本社に送るデータもその対象になります。これでは、企業の機
密情報はすべて中国に吸い上げられることになります。
 もうひとつの国家情報法は、既に説明しているように、中国の
すべての団体や市民に対して、情報当局による調査への支援や協
力を義務付けるものです。ファーウェイは、この法律の存在にも
かかわらず、「絶対に情報は国に漏らさない」と強弁しています
が、国家から情報の提供を求められれば、中国国民として、提供
せざるを得なくなるはずです。
 中国側は、国家情報法への懸念について、国家への情報提供に
ついては、この法律の第8条で「人権を尊重、保障し、個人や組
織の合法的利益を守らなければならない」としていると反論して
いますが、何しろ共産党の指導が憲法の上位にある中国のことで
すから、すべては中国共産党によって恣意的に解釈されてしまう
ので、反論になっていない。中国に「人権尊重」といわれても、
とても信用できるものではないのです。
              ──[中国経済の真実/084]

≪画像および関連情報≫
 ●ファーウェイのスマホは“危険”なのか/山田敏弘氏
  ───────────────────────────
   米紙「ウォールストリート・ジャーナル」は先日、米国が
  中国の通信機器大手「華為技術(ファーウェイ)」の製品を
  使わないよう友好国に要請していると報じた。日本でもこの
  ニュースは大きく取り上げられた。
   実はこの問題、欧米の情報機関関係者やサイバーセキュリ
  ティ関係者の間で、以前から取り沙汰されてきた。筆者もこ
  のニュースについては注視しており、これまでもさまざまな
  媒体で何度も記事を書いてきた経緯がある。
   国内外の知人らと話していると、ファーウェイの商品が、
  「安価でハイスペックな機器である」と評価する人たちも多
  い。先日仕事で訪れた、中国と複雑な関係にある台湾でも、
  IT関係者は「賛否あるが、コストパフォーマンスの良さは
  否定できない」と言っていたのが印象的だった。日本でも、
  最近ファーウェイのタブレットを購入したという日本人のテ
  レビ関係者から、「品質は申し分ない」と聞いていた。事実
  日本の「価格コム」でスマートフォンランキングを見ると、
  ファーウェイのスマホが1位、タブレットでも3位につけて
  いる(11月27日時点)。
   とはいえ、このテレビ関係者はニュースを見ていて不安に
  なるという。仕事柄、いろいろな情報を扱うこの関係者は、
  中国政府系ハッカーなどによるサイバー攻撃でスパイ行為に
  さらされる危険性があるのではないか、と心配していた。こ
  こまでとは言わないでも、同じように気になっている人も少
  なくないだろう。        https://bit.ly/2WWesvo
  ───────────────────────────

テカナリエ/清水洋治CEO.jpg
テカナリエ/清水洋治CEO
posted by 平野 浩 at 00:00| Comment(0) | 中国経済の真実 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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